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“ジャズ”・ボーカル(1)

2014-11-11 09:05:21 | ライブ・レポート


僕のジャズ感を書いているシリーズ第3回です。
これまでのものは、『古典(1)』『古典(2)』をご覧ください。

今回は、“ジャズ”・ボーカルという事について書きたいです。
かなりタブーな内容にも触れるかもしれません。しかし、まぁもう若手って訳でもないし、久しぶりに少しこういう事を言ってもいいのではないか…と思うようにもなりました。


=“ジャズ”・ボーカル(1)=
“ジャズ”という音楽の、ライブでの“一般的な人気”…という部分では、24~25年くらい前と比べたら、かなり落ちた感が否めないと思うんですね。

が、まだまだジャズ・ボーカルは人気のジャンルかもしれません。
ですから、多くのお店で毎日の様にジャズ・ボーカリストが出演していますね。“インスト中心”というお店はかなり少ないと思います。
あ、ちなみにこの「インスト」という呼び方、僕は好きではありませんが。まぁ、皆様が使っているので、分かりやすいと思い、今回は使いました。

ジャズというのは元来“インスト中心”の音楽で、それはCDショップ等の専有面積を見れば、その名残があると思うのですが、楽器8に対してボーカル2くらい。ジャズ専門の硬派の中古CDショップ等では、98対2くらいの所もあります。
あと、ガチなジャズ喫茶でボーカルもの、例えばクリス・コナー等をリクエストしても、「無いよ」って言われて、絶対にかけてくれませんでした。もしボーカルがかかったとしても、チェット・ベイカーのアルバムをかけたら、そのアルバムでチェットが何曲か歌っていた…とか、そんな感じ。
(あ、吉祥寺のメグのマスターはボーカル好きみたいでしたが。)

しかし、現在のライブシーンでは、多くのライブハウスが女性ボーカル・メインにしないとやっていけなくなっていると思われます。実際、僕自身の活動においても、女性ジャズ・ボーカリストのお蔭で成り立っている部分がかなり大きいです。
僕は結構、スタンダード好きのボーカル好きなので、歌伴は好きですし、そういう意味では、“インスト”にこだわって仕事を減らしていった先輩たちよりは、現在のジャズ・シーンに適応できているのかもしれません。

しかし、そんな僕でも、たまに首をかしげることがあります。
あまりに集客至上主義になってしまった事です。
もちろん、ライブハウスもミュージシャンも、ただの趣味や道楽で音楽をやっている訳ではありませんから、“集客”という事が一番大事なのは否定しません。僕だって2,3人しかいない所でやるよりも満員のお客様の前で演奏したいです。
しかし、それでもなんかおかしい…と思ってしまうのは、なんか、出演するボーカリストの最低基準…みたいなものが全くなく、とにかく客さえ呼べればそれでいい…みたいになってしまっているライブハウスがある…という事です。
もちろん、そうではないお店の方が全然多いのですが。
でも、客さえ呼べるならば、内容はどんなでも出演させてしまうお店…が残念ながらあるのです。
昔だったら、貸切でしかライブをさせない…みたいな感じだったのですが、昨今はお店ブッキングの出演者として出演させてしまっている感じです。

で、それが行くところまで行っている感じです。

例えば、マジシャンで言うと、タネがバレバレな手品しかできない…、とか、お笑い芸人で言うと、誰一人として笑わない…とか、他ジャンルで言うと、そういうレベルの方々が、“プロのジャズ・シンガー”みたいな顔をして出演している訳です。
いや、もっと言うと、普通に“歌が下手”な人が多数います。

どうしてそんな方がお店に出演出来るのでしょうか?
というか集客できるのでしょうか?

出演させるお店側の立場になって考えます。
例えば、一人の女性が40年くらい生きていれば、かなりの人数の知り合いがいると思います。
その“知り合いの方”たちは、ほとんどジャズなんか聴いた事が無い人です。実は、それがいいんです。
で、とある40代の女性が、今度ライブハウスに出演する…とします。
周りのお友達、お知り合いの方々は、ならば行ってみよう…と思う訳です。
そこで、先ほど言った様なレベルの歌を聴かされるわけですね。
大抵の人が、2回目は来て下さいません。ただ、1回目のライブで知り合いが全部来たわけではありません。ですから、2回目、3回目もそこそこ集客できるわけです。
言うまでもない事ですが、そのレベルの人が集客できるのは、もって5回くらいです。一通りの知り合いが来たら終わりです。
ただその頃には、別の女性を見つけ出して、またお客様を集めさせればいい訳です。

もちろん、『絶対に“そういうシンガー”を出演させてはいけない』というつもりはありません。
ただ、例えば“アマチュア・ナイド”的にプロとは区別してほしいなぁ…と思います。
あるいは、アマチュアに抵抗があるのならば、“ニュー・ボイス”とか“新人デー”とか、色々区別する方法はあると思うんです。味噌も○ソも一緒にしたらダメだと思うんです。

そうこうしているうちに、長年プロできちんとやっている“きちんとしたシンガー”さんまで、同じように見られている…というか、扱われている感じになってきていますね。
見ていて、悲しくなる時があります。

音楽家にはスポーツの様に、『プロの資格』というものはありません。
野球ならばプロ・チームに所属する、ゴルフやボクシングの様な個人種目であれば、その協会が定めるプロ・テストに合格して、初めて『プロ』と言えるのです。
プロの基準はあくまでその競技におけるレベルであって、集客力ではありません。

そして、スポーツである限り、まず“試合に勝つこと”が第一目標です。
これは音楽における“いい演奏をする”…という事なんでしょうね。
で、その上で、集客するにはどうすればいいか…という事なんでしょう。
ただ、人気スポーツであれば、強い選手は、自然とファンが増えて、集客につながります。

ジャズという音楽は、スポーツ界でいうと、そういう意味では、“人気スポーツ”ではないのかな?と感じます。
もちろん、集客そのものを否定している訳ではありません。というか、こんなこと書いておいて僕が言うのもなんですが、一番大事です。
勝ち負けの無いジャンルである限り、お客様の支持が何よりの基準なんです。

しかし、出演者の“演奏レベル”での最低基準を設けておかないと、今はそれで良くても、ジャズ界の将来につながらない様な気がするのですよ。

こんなこと言って、かなり多くの人を敵に回したような気がするなぁ~。
今日はこの辺でやめておきます。

(続く)









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