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テスカトリポカの選評を読んでみよう

2022-11-17 20:32:00 | 書評 読書忘備録
引き続き 山本周五郎賞の選評
同じようで直木賞よりも好意的、というか直木賞の数名の
大作家気取りのジェラシーな評のあざとさがよくわかる・・・・

佐藤究 テスカトリポカ 
2022年度第34回山本周五郎賞 選評の概要

伊坂幸太郎 
「自分なりに考えた結果、この小説はいわゆる「起承転結」の「起承」の部分がほとんどを占め、
その「起承」の面白さが魅力なのだと気づきました」
「濃密な文体で、メインストーリー以上に途中経過と細部をひたすら面白く描く」というこの小説は、
「文学とエンターテインメントは両立するのか」「ストーリーが面白い文学は存在するのか」といった
問いに対する一つの回答にも思いました。」

江國香織 
「圧倒的でした。」
「熱量、発想の豊かさ、リサーチの堅牢さ、文体の緊密さ、詩的さ加減、スケールの大きさ、
登場人物一人一人に血が通っていること(だからたくさんの血が流れるのだが……)、物語がきわめて
複合的であること、その手腕――。見事としか言えない。」
「なかでもいちばん驚いたのは、すべてを言葉で描写しようとするこの作家の意志と体力で、これはもう
すさまじいものがあった。」
「すみずみまで神経をいきわたらせて描写し、安易なことを絶対にしないところに私は胸を打たれた。」

荻原浩
「すげえな。読んでいる途中、何度も呟いてしまった。」
「文章から、行間から、こめた思いが煙みたいに立ち上がってくるようだ。」
「ただ日本が舞台になってからは、物語の迫力にブレーキがかかってしまった気がした。作者の責任
というより、バルミロのいっそカラッとした圧倒的な暗黒ぶりや、アステカ古代文明の残酷さが、
日本のじっとりした稲作的風土には合わないのかもしれない。」
「それもあって個人的には一推しにとまでは考えられなかった。でも佐藤さんの受賞に異存はありません。」

今野敏
「衝撃だった。そのスケール感、発想、臨場感、密度、そして深み、いずれも群を抜いている。」
「情報量も半端ではなく、まるで海外のノンフィクションを読んでいるようだ。この作品をものにするため
の取材のたいへんさは、想像を絶する。」
「候補作に選ばれたと知ったときから、この作品を賞に推そうと考えていた。(引用者中略)蓋を開けると、
何のことはない、他の選考委員の意見も同様で、ほぼ満票で受賞作に決まった。」
「選考委員という立場を忘れ、一小説家として、この作品には脱帽だった。とても敵わないと思わされた。」

三浦しをん
「(引用者注:「八月の銀の雪」と共に)推した。」
「あまりにおもしろく、すさまじくて、私は途中から「選考」という目的を忘れて読みふけった。」
「そもそも「あらすじ」を拒絶する蠢きに満ちているのが魅力なので、説明は放棄して話をさきに進めるが、
ナワトル語(の存在すら私は知らずにいた)まで調べあげた著者のリサーチ能力にシャッポを脱いだ。」
「なによりも震えたのは、文章の硬質な美だ。多摩川をこんなにも静謐でうつくしい場所として描きだした
創作物がかつてあっただろうか。
そして、アステカについての語りが生みだす神話的な輝きと躍動感といったら……!」


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