ムーンナイト・ダイバー 天童荒 243頁
を読みました(ーωー)132 ★★★
なかなか評価が難しい作品になってしまっているな。という感想が
第一に浮かんできました。
津波や原発の災害への喪失に対するアプローチとしてダイビングでの
遺品収集が主人公や登場人物が想い入れているほどには僕には必然性が
響いてこないところにどうも原因があるようです。
物語性という観点で見てしまえば遺品を求めて月夜の海にダイビングする
というシーンはそれだけで美しく、かつドラマチックで惹かれる設定です。
ですが、その素晴らしい舞台に対して登場し役を演じ、想いを告げなければ
ならない人物たちは、もっともっと濃く、強烈である必要があるのでは
ないでしょうか?
地震に関連して何作ものルポルタージュや写真、或いは漫画やドラマ
といった創作物を読ませていただきましたが、玉石混交のそれらの作品の
中で、胸を打つ作品に共通しているものは、日常の安寧さを揺り動かすような
ナニモノカであるような気がします。
いたづらにセンセーショナルなものやお涙頂戴劇でなくても、
魂の深海を冷たい潮流でなであげるような、
静かではあっても強い波動を持つもの。。。
なにかこの物語を通じて、別の物語を自分では読んでしまっていて、
その存在していない物語に深く感動している。。。
それは海の底で超自然な救済が現れSF的な結末を持つ物語であったり
遺された人々が愛憎に翻弄されつつも激しく出会ったり別れたりする
人間ドラマであったりするのかもしれません。
むしろ震災というものに対する表現の形式とすると具体的なストーリーを
綴らねばならない小説というものは結構不利で、文章であれば詩や歌詞、
絵画や彫刻、といった抽象性を許容しながら深く人間の感情をノックする
芸術形態のほうが適しているのではないか?
そんな考察さえ想起するような読書体験でした。
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