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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

MAROワールド Vol.45 “ドヴォルザーク Part Ⅲ” by 篠崎“まろ”史紀

2022年10月28日 | pocknのコンサート感想録2022
10月25日(火)MAROワールド Vol.45 “ドヴォルザーク Part Ⅲ”
王子ホール30周年ハッピーバースデイ・コンサート
王子ホール

【演奏】
Vn:篠崎“まろ”史紀、篠崎“まろ”史紀、水谷 晃/Vla:鈴木康浩/Vc:笹沼 樹/CB:菅沼希望

【ライブペインティング】
保坂真紀


【曲目】
(オープニング)
♪ 歌のこだま(「糸杉」の弦楽四重奏編)

1.弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 Op.96「アメリカ」

(無茶振り演奏コーナー)
♪ チェロ協奏曲~ヴァイオリンとチェロのデュオ(水谷、笹沼)
♪ 新世界交響曲~家路(水谷、笹沼)
♪ チェロ協奏曲第3楽章より(菅沼)

2.弦楽五重奏曲第2番ト長調 Op.77

【アンコール】
♪ 2つのワルツ Op.54~第2番変ニ長調


王子ホール開館30周年記念日の夜は王子ホールおなじみのMAROワールド。このシリーズの真骨頂とも云える、音楽とは異なる分野とのコラボ企画の久々の新たな大規模な試みが実現した。

ゲストに迎えられたのは、MAROワールドのチラシやパンフのデザインを手掛けてきた画家の保坂真紀さん。今夜のテーマ作曲家、ドヴォルザークの演奏と同時進行で、巨大なカンバス(素材は紙)に絵を制作していくという企画。保坂さんは、演奏メンバーの一員のように音楽にシンクロして、筆や刷毛、熊手などをカンバス一杯に縦横に走らせ、音楽に合わせてダンスしているようなシーンも見せつつ、ドヴォルザークの心と、王子ホールへのお祝いと、ホールになくてはならないMAROワールドへの思いを込めて作品を仕上げて行った。

面白かったのは、真っ白なカンバスに最初に描かれた「MARO WORLD」という文字や、ドヴォルザークが好きだったというSLや、故郷ボヘミアに建つ教会(?)などが、絵が進むうちに上に重ねられた絵で隠され、ダ・ヴィンチの絵の下に潜むもう一つの絵のように静かに存在を主張していたこと。

それと、ホワイエの壁のあちこちに架けられた保坂さんが制作した様々な素材のステッカーから、休憩時間に聴衆が気に入ったものを申し出て、制作中のカンバスに貼り付けてもらうという聴衆参加型の趣向が取り入れられたこと(奥さんの「自由の女神」も採用された!)。これによって、絵が益々能動的に訴えてくることとなった。

魔法の筆のように筆先から様々な色と形をカンバスに移していったパフォーマンスの終盤、弦楽五重奏曲の躍動感溢れるフィナーレが熱く演奏されるなか、保坂さんは床に敷かれた紙にも絵筆を走らせ、筆さばきも益々エネルギッシュになり、カンバスには命の象徴のような樹木が枝葉を伸ばし、カデンツと共に鮮やかなポーズを決めて圧巻のフィナーレとなった。絵は、夢とファンタジーと生命力に溢れていた。そこにMAROワールドの面々も一人ずつステッカーを貼り付けて完成。

「絵のイメージは見る人それぞれの自由だけれど、ドヴォルザークが標榜した平和や友愛への思いを込めました」、と保坂さん。カンバスにはウクライナの国旗の色も平和を訴えていた。MAROワールドのメンバーによるトークで、ドヴォルザークは女性に恋し、平和を愛し、人種差別を嫌ったことが語られた。そんなドヴォルザークから生まれた音楽が、出演者の思いも重なって絵画と融合して新たなパワーを得るという稀有なパフォーマンスが実現した。マロさんが20年来温めてきたという企画だったという。

今夜の演奏陣は舞台袖近くに場所を取ったので、僕たちの席からは表情はよく見えなかったが、溢れる詩情と温もりを醸し出したオープニングの「糸杉」から、メインの2つの大曲、無茶振りで披露した名曲の「触り」たち、そしてアンコールでのごきげんなワルツまで、意気投合したエネルギッシュでかつウィットに富んだいつもながらのアンサンブルを聴かせてくれた。アンコールではマロさんのヴァイオリンが「寅さんのテーマ」に変身、それに乗って水谷さんが締めの口上を寄席風に垂れ、記念すべき王子ホール30周年のバースデーコンサートは目出度くお開きとなった。

終演後は久々にサイン会が行われた。これは喜ばしいことだが、MAROワールドの楽しみの一つだった休憩時間の美味しいザッハートルテの提供はなく、今回も持ち帰り用のシガールで、グラスワインの提供も相変わらずなし。これを伝えるマロさんの口調はちょっぴり残念そうだった。無くなることのないコロナを理由に中止を続けていては再開は出来ない。先週まで滞在していたイタリアでは全てが通常に戻っていた。再開はコロナの状況次第ではなく、トップの決断次第ではないだろうか。他ホールに先駆けてクロークを再開した王子ホールの更なる英断を期待したい。


開演前


休憩時、聴衆が選んだステッカーが貼られていく。


完成作(拡大可)


終演後の記念撮影


制作に使われた画材たち

MAROワールド Vol.44“ドホナーニ Part Ⅱ” 2022.3.21
MAROワールド Vol.42 “ブラームス Part Ⅳ” 2021.9.24
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