10月27日(木)ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団
《2022年10月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
【アンコール】
♪ ヘンデル/組曲第5番ホ長調~「調子の良い鍛冶屋」
Pf:オリ・ムストネン
2.ニルセン/交響曲第3番 Op.27「広がり」
S:盛田麻央/Bar:青山貢
今年の6月、95歳を目前にしたブロムシュテットが転んで負傷し、その後のコンサートがキャンセルになっているというニュースを読み、N響との共演が実現するか心配だったが、ブロムシュテットさんは無事に来日。椅子に座りながらも3種類の6公演を全て元気にこなした最後の演奏会を聴いた。
まずは気鋭のピアニスト、オリ・ムストネンを迎えてのグリーグのコンチェルト。溜めまくりの個性丸出しの冒頭からムストネンは異彩を放った。これほどのアーティスト、単なる気まぐれではないポリシーを持っているのだろうが、僕には到底共感できなかった。特定の音を強打してメロディーラインを歪めたり、勝手に前打音にしてフライングのように聴かせたり、全体のフォルムもバラバラ。自由奔放と云えば聞こえがいいが、乱暴で音もよく外す。これではトランス状態の霊媒師か、鬼才気取りの酔っ払いの演奏。ホロヴィッツの演奏がちょっと頭をよぎったがパロディーでしかない。ピアノも何だか妙な響きがした。
但し、こんな演奏に付き合ったブロムシュテット/N響は、この奇想天外なムストネンのピアノに単に合わせるだけでなく、能動的に関わっていた。合いの手の入れ方にも気合いが入り、第2楽章の熱い歌なども思い入れたっぷり。アンコールのヘンデルも同じ調子ではあったが、こちらは光るものも感じた。変な響きだったピアノが古楽器のような趣のある音に聴こえた。
後半はニルセン。こちらは文句なしの極めつけの名演となった。冒頭の連続パンチからパワーがみなぎり、切れ味も抜群。エネルギーをどんどん注ぎ込みながら果敢に進んで行った。音は瑞々しく鮮やかに研ぎ澄まされ、明解に焦点が定まり冴えまくる。途中で聴こえてくるワルツの嬉々とした愉悦とみなぎる生命力にも心が躍った。
声楽が入った第2楽章の大自然を思わせる雄大な広がりは、正にこのシンフォニーのタイトルに相応しい。盛田、青山両氏の艶やかで伸びやかな歌がその広がりに一層の花を添えた。第3楽章の管楽器のアンサンブルと弦楽合奏の対話にしても、N響の各プレイヤーの技と合奏力が随所で光る。そして第4楽章、郷愁を誘うメロディーが熱く親密に心の底から奏でられ、生命力に満ち溢れた感動の愛の讃歌となった。いつまでもこの幸福感に浸っていたくなる演奏が終わった。
変化に富んだシンフォニーだが、ブロムシュテットは全曲を通して確固たる信念を貫き、単なるポジティブ志向だけではなく、この後のニルセンの作品に見られる不穏な空気も含ませながら全曲の根底に熱い血を通わせた手腕には驚くばかり。そして、これに全力で向き合ったN響の熱い魂のこもった凄腕の演奏も心から称賛したい。
初めて見るブロムシュテット翁の座っての指揮姿。これはアクシデントによるもので、次の来日時はまた元気に立って指揮してくれるのでは、と思えるような演奏は若々しい生命力に溢れていた。うん、これならまだまだ元気に来日してくれるに違いない。
そんなマエストロ、ブロムシュテットに、聴衆はスタンディングオベーションで大喝采を送ったが、ブラボーは聞こえなかった。サントリーホールのアナウンスは感染対策の呼びかけを大幅に減らし、ブラボー禁止も言わなくなった。コロナ前、盛んにブラボーを飛ばしていた人達の出番ではないか!こんな演奏会ではやっぱり沢山のブラボーも聴きたい。
花束を贈られたマエストロを称える楽員さんたちのにこやかな表情がいいですね。
カーテンコールに応えて三度登場のマエストロ。「また会いましょう」と言ってる?
N響 2021年10月B定期(ブロムシュテット 指揮) 2021.10.28 サントリーホール
N響 2021年10月A定期(ブロムシュテット 指揮) 2021.10.17 東京芸術劇場
N響 2019年11月C定期(ブロムシュテット 指揮) 2019.11.22 NHKホール
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
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S:盛田麻央/Bar:青山貢
今年の6月、95歳を目前にしたブロムシュテットが転んで負傷し、その後のコンサートがキャンセルになっているというニュースを読み、N響との共演が実現するか心配だったが、ブロムシュテットさんは無事に来日。椅子に座りながらも3種類の6公演を全て元気にこなした最後の演奏会を聴いた。
まずは気鋭のピアニスト、オリ・ムストネンを迎えてのグリーグのコンチェルト。溜めまくりの個性丸出しの冒頭からムストネンは異彩を放った。これほどのアーティスト、単なる気まぐれではないポリシーを持っているのだろうが、僕には到底共感できなかった。特定の音を強打してメロディーラインを歪めたり、勝手に前打音にしてフライングのように聴かせたり、全体のフォルムもバラバラ。自由奔放と云えば聞こえがいいが、乱暴で音もよく外す。これではトランス状態の霊媒師か、鬼才気取りの酔っ払いの演奏。ホロヴィッツの演奏がちょっと頭をよぎったがパロディーでしかない。ピアノも何だか妙な響きがした。
但し、こんな演奏に付き合ったブロムシュテット/N響は、この奇想天外なムストネンのピアノに単に合わせるだけでなく、能動的に関わっていた。合いの手の入れ方にも気合いが入り、第2楽章の熱い歌なども思い入れたっぷり。アンコールのヘンデルも同じ調子ではあったが、こちらは光るものも感じた。変な響きだったピアノが古楽器のような趣のある音に聴こえた。
後半はニルセン。こちらは文句なしの極めつけの名演となった。冒頭の連続パンチからパワーがみなぎり、切れ味も抜群。エネルギーをどんどん注ぎ込みながら果敢に進んで行った。音は瑞々しく鮮やかに研ぎ澄まされ、明解に焦点が定まり冴えまくる。途中で聴こえてくるワルツの嬉々とした愉悦とみなぎる生命力にも心が躍った。
声楽が入った第2楽章の大自然を思わせる雄大な広がりは、正にこのシンフォニーのタイトルに相応しい。盛田、青山両氏の艶やかで伸びやかな歌がその広がりに一層の花を添えた。第3楽章の管楽器のアンサンブルと弦楽合奏の対話にしても、N響の各プレイヤーの技と合奏力が随所で光る。そして第4楽章、郷愁を誘うメロディーが熱く親密に心の底から奏でられ、生命力に満ち溢れた感動の愛の讃歌となった。いつまでもこの幸福感に浸っていたくなる演奏が終わった。
変化に富んだシンフォニーだが、ブロムシュテットは全曲を通して確固たる信念を貫き、単なるポジティブ志向だけではなく、この後のニルセンの作品に見られる不穏な空気も含ませながら全曲の根底に熱い血を通わせた手腕には驚くばかり。そして、これに全力で向き合ったN響の熱い魂のこもった凄腕の演奏も心から称賛したい。
初めて見るブロムシュテット翁の座っての指揮姿。これはアクシデントによるもので、次の来日時はまた元気に立って指揮してくれるのでは、と思えるような演奏は若々しい生命力に溢れていた。うん、これならまだまだ元気に来日してくれるに違いない。
そんなマエストロ、ブロムシュテットに、聴衆はスタンディングオベーションで大喝采を送ったが、ブラボーは聞こえなかった。サントリーホールのアナウンスは感染対策の呼びかけを大幅に減らし、ブラボー禁止も言わなくなった。コロナ前、盛んにブラボーを飛ばしていた人達の出番ではないか!こんな演奏会ではやっぱり沢山のブラボーも聴きたい。
花束を贈られたマエストロを称える楽員さんたちのにこやかな表情がいいですね。
カーテンコールに応えて三度登場のマエストロ。「また会いましょう」と言ってる?
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N響 2021年10月A定期(ブロムシュテット 指揮) 2021.10.17 東京芸術劇場
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