1月16日(火)平成29年度東京音楽大学大学院修士演奏
鍵盤楽器研究領域(伴奏)一日目より
東京音楽大学100周年記念ホール
【発表者】藤島さつき(Pf)
【共演者】北村さおり(S)/竹中勇人(Vn)
【曲目】
♪ デュパルク/前世
♪ デュパルク/戦いの起こった国へ
♪ デュパルク/フィディレ
♪ プーランク/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ FP.119
♪ ドビュッシー/忘れられし小唄 L.60
東京音大修士課程でピアノ伴奏を専攻する修了見込生による修了演奏試験では、2日間で計11名の修士学生が、約1時間の持ち時間でリサイタル形式の演奏を行う。このうち1日目の演奏から、藤島さつきさんによる発表を聴いた。
器楽曲の前後に歌曲を配したプログラムは、全てフランスの近代作品。それぞれが個性的な語法で色彩と陰影に富んだ音楽で、この魅力を伝えるためには、とりわけ感受性と表現力のデリケートさが問われる。藤島さんのピアノは、それぞれの曲のシーンに合わせ、共演者の表情や息遣いを感じつつ、ある時は共演者の影のように寄り添い、またある時は共に歌い、時に共演者と対峙してバトルを交わし、それぞれの作品の魅力を生き生きと伝えた。
最初に取り上げたデュパルクの3つの歌曲は、それぞれが起伏に富んだドラマを孕んでいて、藤島さんのピアノは、光、色彩、心の高揚の微妙な変化を的確に捉え、ゆったりと進む部分は落ち着いた佇まいの色調を微妙に変化させ、心が昂揚する場面では、目の覚めるような鮮やかな光を放射し、熱い思いを濃厚に表現する北村さんの歌を、柔らかく美しいタッチで包み込んで行った。藤島さんのプログラム解説によれば、デュパルクは僅かな器楽曲と17曲の歌曲しか残さなかったとのことで、知名度の割に作品が極端に少ないことを知り、他のデュパルク作品も全部聴いてみたくなった。
プーランクのソナタは、ヴァイオリンとピアノが対等に書かれていて、ピアノは更に存在感を上げた。目まぐるしいテンションの転換やスリリングなやり取りが鮮やかに白熱し、ヴァイオリンのサポートを得てピアノがメロディーの主導権を握ると、濃厚で匂やかな歌を聴かせ、両者のアンサンブルの妙に引き込まれて行った。プーランクは様々な楽器のソナタを書いているが、このヴァイオリン・ソナタがその中で最も内容が濃い作品では、と気づかせてくれた。
ドビュッシーの「忘れられし小唄」は静謐の世界。ドビュッシー初期の歌曲ということだが、もうここにはドビュッシーの、ロマンチックなだけでない独特の色彩と香りがある。ピアノパートを聴いていたら、これよりずっと後に書かれた前奏曲集の中に忍ばせてもわからないような魅力を具えていることを感じた。藤島さんのピアノは繊細で明晰。北村さんの表情を時おり目で確認しつつ、歌に光を当て、或いは影を作り、色彩を施し、モチーフを香り高く浮かび上がらせて行く姿に、アンサンブルピアニストとしての高い技量、卓越したセンスと音楽性を感じた。今後は更に大きな世界で羽ばたいて行くことだろう。期待!
東京音楽大学大学院 伴奏科2年生によるアンサンブルコンサート(2017.9.16 東京音楽大学J館スタジオ)
CDリリースのお知らせ
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♪ プーランク/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ FP.119
♪ ドビュッシー/忘れられし小唄 L.60
東京音大修士課程でピアノ伴奏を専攻する修了見込生による修了演奏試験では、2日間で計11名の修士学生が、約1時間の持ち時間でリサイタル形式の演奏を行う。このうち1日目の演奏から、藤島さつきさんによる発表を聴いた。
器楽曲の前後に歌曲を配したプログラムは、全てフランスの近代作品。それぞれが個性的な語法で色彩と陰影に富んだ音楽で、この魅力を伝えるためには、とりわけ感受性と表現力のデリケートさが問われる。藤島さんのピアノは、それぞれの曲のシーンに合わせ、共演者の表情や息遣いを感じつつ、ある時は共演者の影のように寄り添い、またある時は共に歌い、時に共演者と対峙してバトルを交わし、それぞれの作品の魅力を生き生きと伝えた。
最初に取り上げたデュパルクの3つの歌曲は、それぞれが起伏に富んだドラマを孕んでいて、藤島さんのピアノは、光、色彩、心の高揚の微妙な変化を的確に捉え、ゆったりと進む部分は落ち着いた佇まいの色調を微妙に変化させ、心が昂揚する場面では、目の覚めるような鮮やかな光を放射し、熱い思いを濃厚に表現する北村さんの歌を、柔らかく美しいタッチで包み込んで行った。藤島さんのプログラム解説によれば、デュパルクは僅かな器楽曲と17曲の歌曲しか残さなかったとのことで、知名度の割に作品が極端に少ないことを知り、他のデュパルク作品も全部聴いてみたくなった。
プーランクのソナタは、ヴァイオリンとピアノが対等に書かれていて、ピアノは更に存在感を上げた。目まぐるしいテンションの転換やスリリングなやり取りが鮮やかに白熱し、ヴァイオリンのサポートを得てピアノがメロディーの主導権を握ると、濃厚で匂やかな歌を聴かせ、両者のアンサンブルの妙に引き込まれて行った。プーランクは様々な楽器のソナタを書いているが、このヴァイオリン・ソナタがその中で最も内容が濃い作品では、と気づかせてくれた。
ドビュッシーの「忘れられし小唄」は静謐の世界。ドビュッシー初期の歌曲ということだが、もうここにはドビュッシーの、ロマンチックなだけでない独特の色彩と香りがある。ピアノパートを聴いていたら、これよりずっと後に書かれた前奏曲集の中に忍ばせてもわからないような魅力を具えていることを感じた。藤島さんのピアノは繊細で明晰。北村さんの表情を時おり目で確認しつつ、歌に光を当て、或いは影を作り、色彩を施し、モチーフを香り高く浮かび上がらせて行く姿に、アンサンブルピアニストとしての高い技量、卓越したセンスと音楽性を感じた。今後は更に大きな世界で羽ばたいて行くことだろう。期待!
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