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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン

2017年10月20日 | pocknのコンサート感想録2017
10月17日(火)アリーナ・イブラギモヴァ(Vn)/セドリック・ティベルギアン(Pf)
~オール・シューベルト・プログラム~
王子ホール

【曲目】
1.ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 D385
2. ヴァイオリン・ソナタ第4番イ長調 D574「グランド・デュオ」
3. ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調 D384
4. 幻想曲 ハ長調 D934
【アンコール】
シューベルト/ヴァイオリン・ソナタ第4番~第3楽章

コンサートのチケットは、持って行くのを忘れないように前の晩、寝る前に準備する。昨夜、チケットをよくよく見たが、「?」という気分。自分で買ったのに「イブラギモヴァ?誰?何やるんだっけ?」って感じ。コンサート通いが多いので、行きすぎないよう厳選しているはずなのにどうして覚えてないんだろう、と思いつつも、調べないまま王子ホールへ出かけた。シューベルトのヴァイオリン作品を集めたリサイタル、しかも大好きだけどなかなか実演に接する機会のない幻想曲をやるとわかり、これが王子ホールの主催公演なら行きたくなるコンサートだと納得。実際にリサイタルを聴いて、やっぱこれは行って正解!だった。

幻想曲の前に、「ソナチネ」と呼ばれることが多いヴァイオリン・ソナタが3つ置かれた。どれもシューベルト初期の作品。イプラギモヴァとピアノのティベルギアンは、これらシューベルト若書きの作品のあるがままの姿を、虚飾を排し、瑞々しいタッチで生き生きと描いて行った。言うなれば直球勝負。そこからは、若いシューベルトの意気盛んな気概、モーツァルトやハイドン、ベートーヴェンなど影響を受けた作曲家に対する尊敬、素直で謙虚な姿勢や誠実さが伝わってきた。シューベルトがこれらのソナタを書いたときの状況や気持ちが「原音」でリアルに伝わってくるところに、このデュオの真骨頂を聴いた思いがした。

プログラム最後を飾った幻想曲。シューベルト最晩年に書かれたこの作品からは、遺作のピアノソナタや弦楽五重奏曲と同じ、この世のものとは思えないような天国的なスピリッツを感じるが、イブラギモヴァとティベルギアンのアプローチは、初期のソナタと変わりはない。

曲名どおり幻想的な序奏で始まるが、これをことさらファンタジックに演出することはせず、作品のテクスチュアが透けて見えるほどのピュアな演奏に徹し、続く民族舞踊的なところは民族色よりも音楽の持つ生気や躍動感をストレートに表現し、歌曲「僕の挨拶を」のメロディーの変奏では、縦横無尽の多彩な表現でダイナミックに攻めてきた。力みのない自由なしなやかさが、音楽の持つ力を見事に引き出していた。曲が転じて、冒頭の幻想風なフレーズが戻り、最初と同様にピュアに響いたとき、その美しさにハッとさせられた。二人のまっすぐなアプローチが、作品をヴェールに包んでしまうのではなく、そのものの持つ奥深さ、真の美しさをあますところなくリアルに伝えてくれ、イブラギモヴァとティベルギアンは「本物」を聴かせてくれる素晴らしいアーティストだと感じた。


CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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