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ヨハネッテ・ゾマー&コンチェルト・ケルン

2014年05月30日 | pocknのコンサート感想録2014
5月30日(金)ヨハネッテ・ゾマー(S) &コンチェルト・ケルン
~ヘンデルの名オペラ・アリアとバッハの結婚カンタータ~
紀尾井ホール

【曲目】
♪ ヘンデル/カンタータ「愛の妄想」HWV99より 導入部 二長調
♪ ヘンデル/ベレニーチェのアリア「誰があなたを理解するでしょう」歌劇「エジプト王妃ベレニーチェ」HWV38より
♪ ヘンデル/メデアのアリア「私は死ぬ、けれども復讐します」歌劇「テセオ」HWV9より
♪ ヘンデル/クレオパトラのアリア「わが運命に泣く」歌劇「ジュリオ・チェーザレ」HWV17より
♪ バッハ/オーボエ・ダモーレ協奏曲 イ長調 BWV1055R NAXOS
♪ ヘンデル/「花の冠を与える」、「アレルヤ」モテット「風よ静まれ」HWV242より
♪ ヘンデル/合奏協奏曲 ト長調 Op.6-1 NAXOS
♪ バッハ/結婚カンタータ「消え去れ、悲しみの影」BWV202

【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ第199番「わが心は血の海に漂う」BWV199~終曲アリア
♪ ヘンデル/歌劇「リナルド」~私を泣かせてください

ピリオドアンサンブルとして名高いコンチェルト・ケルンによる、ヘンデルとバッハの普段あまりライブで聴く機会に恵まれない珠玉の名品を揃えた素敵なコンサートを聴いた。

この室内オーケストラから伝わってきた一番の魅力は、常にフレッシュな息遣いで奏でられる清澄で瑞々しい調べ。風薫る高原のお花畑の真ん中に身をおいて、鳥の囀りに耳を傾けたり、舞い飛ぶ蝶々を追いかけたり、おいしい湧き水で喉を潤したり・・・ 心も体もリフレッシュして生きる喜びを一身に味わっている気分にさせてくれる。

息遣い、アーティキュレーション、勢い、歌・・・ 音楽を表現するための要素をどんなフレーズでも最適に組み合わせて、ストレートに聴き手に訴えかけてくる。メンバーみんなが自分たちのアプローチに確信を持ち、自らの言葉として語りかけてきて生命力を伝える。

このアンサンブルをリードするのがコンマスの平崎真弓。滑らかで勢いのあるボーイングから生まれる歌は生き生きしていてチャーミング。ヘンデルの合奏協奏曲での、ソロで施す装飾音もとても粋で即興的。平崎さんの息遣いがアンサンブル全体に以心伝心のように鮮やかに伝わって、嬉々としたリズムに乗ってダンスを踊っているよう。

この名アンサンブルと共演したソプラノのヨハネッテ・ゾマーは、アンサンブルのフレッシュな息遣いと見事に呼応して清らかな美声を思いのままに操り、上に述べた「風薫る高原のお花畑」に舞い飛ぶ蝶のように戯れ、アンサンブルと共に幸福な風景を作っていた。

プログラム最後の、バッハの「結婚カンタータ」でのゾマーの歌を聴いていたら、世俗カンタータのこの音楽が、バッハの数ある教会カンタータと袂を分かつことなく「愛」を歌い上げていることが感じられた。バッハは、世俗的な愛も、神様に祝福された愛と捉えているに違いない。

それを表すかのように、アンコールでは教会カンタータから、神様の愛に救われた喜ばしいアリアが歌われた。そして締めはヘンデルの名アリア「私を泣かせてください」。ゾマーのしっとりした歌声もさることながら、コンチェルト・ケルンの熱い溜息を思わせる弦楽合奏に優しく寄り添うように爪弾かれたテオルボの調べが涙を誘った。

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