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アンドリス・ネルソンス指揮 ボストン交響楽団(ベルリン音楽祭)

2015年09月06日 | pocknのコンサート感想録2015
9月5日(土)アンドリス・ネルソンス指揮 ボストン交響楽団
ベルリン・フィルハーモニーホール


【曲目】
● マーラー/交響曲第6番イ短調


ベルリンの秋の音楽シーズンの幕開けとなるベルリン音楽祭(Musikfest Berlin)。毎年9月に約20日間に渡って、フィルハーモニーなどベルリンの主要な音楽ホールや教会などで、世界からやってきた約30団体のオーケストラやアンサンブルなどによる演奏会が繰り広げられる。

その中から、ボストン交響楽団とイスラエル・フィルの演奏会を聴いた。フィルハーモニーでのコンサートは6年ぶり。6年前の5月、ここの指揮台にはアバドが立っていた…

今夜ここで聴いたのはアンドレス・ネルソンス指揮のボストン交響楽団。アメリカの歴史と伝統あるこのオーケストラを聴いたのははるか昔のことだが、柔らかな木の味わいがある格調高い音色だったことは今でも覚えている。この名門オケに音楽監督として新しく就任したネルソンスの指揮を聴くのは初めて。どんな指揮者かと言った予備知識も殆どないまま臨んだコンサートの演目は、これもアバドの超名演が忘れられないマーラーの6番。

開始からテンションが高く本気度がビンビンと伝わってきたネルソンス/ボストン・シンフォニーの音を聴いて、遥か昔にこのオケを聴いたときの印象がたちまち甦ってきた。最高の音質のオーディオ機器でLPレコードを聴いたときに感じる味わい深さと幸福感を、生の音で体験している感覚。木目細かで香り高く、瑞々しい。それが高いテンションに支えられ、切れ味も抜群なところがネルソンスの持ち味だろうか。

オーバーアクション気味のネルソンス指揮のボストン・シンフォニーから生み出される演奏は、全体から細部に至るまで、全ての要素が生き生きと息づき、どれもが能動的に「動いて」いる感覚。第1楽章ではフレーズの一つ一つがリアルにクリアに訴えかけてきて、何かとてつもなく深刻な事態が待ち受けているというメッセージが、アグレッシブなほどに伝わってきた。第1楽章が終わった時、会場内に緊迫した空気が満ちているのを肌で感じ取れた。

第2楽章は、はにかんだような表情やおどけた表情、焦燥感など、複層的な要素が明瞭に提示され、様々なシーンを理屈なしで楽しませてくれた。ソロパートを受け持つ管楽器奏者達の巧さも絶品。

第3楽章、遥か彼方を静かに見据えた、息の長いヴァイオリンのユニゾンがこの上なく美しい。コンマスのソロの深い呼吸から醸し出される表情豊かな歌は、惚れ惚れするほどで、トゥッティがこれに先導されるように自然に繋がり、一本の美しい線を描いた。静かに鳴らされるカウベルの響きが、牧歌的と言うよりは天上から射し込む淡い光の筋のようで、彼岸へ導かれるような気持ちになった。

そして第4楽章は、エネルギーみなぎり、突き上げてくる厳しさに支配される。エネルギッシュな指揮ぶりを見せるネルソンスの指揮から生み出される演奏は、単に元気いっぱいの情熱的な演奏ではなく、マーラーの音楽に不可欠な光と陰、諧謔と深刻さが入り交じった深く複雑な世界を十分に描き切って見せた。惜しむらくは、あのハンマーの一撃に象徴される、悲劇的な破壊へと突き進んで行く道では、もっと烈しく情け容赦なく心を揺さぶってくれてもいいと感じたこと。それでも最後の最後でのスフォルツァンドの一撃は、胸を大きく揺さぶられる強烈なものだった。

20秒以上の沈黙のあと、聴衆は大喝采とブラボーの歓声に包まれ、やがてスタンディングオベーションへ至った。


メータ指揮 イスラエル・フィル(2015.9.6 ベルリン・フィルハーモニー)

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