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N響 2023年1月A定期(トゥガン・ソヒエフ 指揮)

2023年01月17日 | pocknのコンサート感想録2023
1月15日(日)トゥガン・ソヒエフ 指揮 NHK交響楽団
《2023年1月Aプロ》 NHKホール


【曲目】
1.ブラームス/ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.83
【アンコール】
 ♪ ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
 Pf: ハオチェン・チャン
2.ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調 Op.60


四半世紀に渡ってN響のコンサートマスターを務めているマロさんが、定年を目前にして最後のステージとなる1月A定期2日目。今日はすでに日フィルのチケットを入手していたが、こちらは諦めてNHKホールへ駆けつけた。指揮は、N響との相性も良く、これまで何度も素晴らしい演奏を聴かせているトゥガン・ソヒエフ。1年前は日本の愚かな鎖国政策で来日できなくなってしまったので久々の登場。

前半はハオチェン・チャンをソリストに迎えてブラームスのコンチェルト。深々としたホルンに続いて奏でられたチャンのピアノが、たっぷりとホールの隅々まで届けられた。チャンとソヒエフ/N響は同じ方向を向き、大らかで壮大でエネルギッシュな演奏を展開した。チャンのピアノは懐が深くて頼もしい。低音を朗々と響かせ、太くて逞しい線をしなやかに描いていくと同時に、あらゆるものを優しく包み込む温かな包容力も感じる。それが、風光明媚な避暑地で生まれたこのおおらかな作品に相応しい。

ソヒエフ/N響もきめ細かくしっとりとした抒情を醸し出し、熱い吐息も感じさせる。両者が共鳴し合い一つの大きな世界を作り上げて行った。アンコールでドビュッシーが始まって「ブラームスが聴きたかった・・・」と思ったが、ことのほか清澄で繊細な「亜麻色」に脱帽。

後半はベートーヴェン。こちらもブラームス同様、懐の深い豊かな表情を湛えつつ、キリッとして古典的な格調を備え、無駄のない美しい佇まいを感じさせる演奏。気合いも十分で、隅々まで生気がみなぎり、要所ではエネルギーを一気に放出して生きた音楽を謳歌する。ハッとする煌めきにも事欠かないしデリケートな歌も随所に織り込まれ、この作品の持ち味が十二分に発揮されていた。第2楽章のクラリネットの松本さんのどこまでも遠くへ連れて行かれるような息の長いソロをはじめ、木管のソロやアンサンブルの見事さにも耳を奪われた。オーボエ界の重鎮、吉井瑞穂さんの姿も!

終楽章が颯爽と荒波を軽々と乗り越えて行くように進みゴールが見えてくると、マロさんの勇姿が自然に目に飛び込んできた。マロさんのこうしたノリ、イニシアチブがオケに火を点け、嬉々とした前向きで能動的な連帯感を生み出してきたんだなぁ、と思うと終盤には名残惜しさも加わってじわっと来てしまった。

万雷の拍手のなか、新たにゲストコンマスとなる若きホープ、郷古さんから花束を渡されたマロさんは、楽員とソヒエフさんの笑顔と拍手にも包まれた。今日はこのシーンでブラボーを叫ぼうと決めていたけど、そう決めていなくても叫ばずにはいられなかっただろう。僕の「ブラボー!」聞こえたかな。今日は沢山のブラボーが飛んだ。こうじゃなきゃね!楽員たちが退場したあとも拍手は続き、再び現れたマロさんは、拍手と歓声を送る聴衆に手を振った。

マロさんは、お堅く、上手いけれどハートがない、なんて声もあったN響(僕はそうは思っていなかったが)を、魅惑的な演奏とリーダーシップ、温かな人柄でより多くの人達が親しみを感じ、更に世界が高く評価するオーケストラになるために尽力し、多くの若手演奏家の育成や、優れたアーティストの発掘にも貢献してきた。第1コンサートマスターは退くが、4月からは「特別コンサートマスター」というポストに着任し、出番は減るかも知れないがこれからもN響にとって欠かせない存在であり続けることだろう。もちろんN響以外での活躍も益々楽しみだ。なにはともあれ、長い間のお勤め、お疲れさまでした。






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