12月9日(金)
ラモー/歌劇「レ・ボレアード」
~北とぴあ国際音楽祭2023~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
アルフィーズ:カミーユ・プール/アバリス:大野彰展/アダマス&アポロン:与那城敬/カリシス:谷口洋介/ボリレ:山本悠尋/セミル&ポリムニ:湯川亜也子/ボレアス:小池優介/ニンフ:鈴木真衣/アムール:鈴木美紀子
【ダンス】ピエール=フランソワ・ドレ、松本更紗、ニコレタ・ジャンカーキ、ミハウ・ケンプカ
【管弦楽&合唱】
寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【演出】ロマナ・アニエル【振付】ピエール=フランソワ・ドレ【照明デザイン】岡田勇輔【舞台監督/プロダクションマネージャー】大平久美【演出部】清水蘭子
北とぴあ国際音楽祭の毎年の目玉、寺神戸亮とレ・ボレアードによるオペラ公演の今年の演目は、この演奏団体の名の由来となったラモーの大作オペラ「レ・ボレアード」。このオペラの最大の特徴は、全幕を通じてふんだんに盛り込まれるバレエの存在。多種多様なバレエ音楽と、それに乗って演じられる数々のバレエが、生き生きとしたワクワクのパフォーマンスで、壮大で優美な絵巻物の世界を織り成した。
寺神戸亮指揮のレ・ボレアードは、いつものことではあるが卓越した演奏能力を擁し、美しい響きで繊細な表情や快活な気分を雄弁に瑞々しく紡ぎ出し、聴き惚れるばかり。沢山の舞曲のなかでも異彩を放ったのは第1幕のコントルダンス。人間の根源的なエネルギーが沸き上がってくるような音楽を、パワフルでありながら軽妙に表現して心に刻まれた。随所に登場する合唱も、澄んだ美しいハーモニーで花を添えた。
ドレを中心とした4人のダンサーによるバレエは、四肢を伸びやかに使いこなして生き生きとして優美。ドレの振付けには場面ごとの意味があるのだろうが、それを読み取るのは難しく、その辺りがわかると更にバレエを楽しむことができるのだろう。
歌い手で最も印象に残ったのは、アダマスとアポロンを歌った与那城敬。磨かれた艶のある美声で朗々と歌い、頼もしく貫禄のある役を強く印象付けた。アルフィーズを歌ったプールは、くっきりとした声で表現の幅も広いが、女王としての気高さはもう一歩。その点、セミルとポリムニ役を担った湯川亜也子の歌は品格があり、清澄で深い声も魅力的だった。
カリシスとボリレをそれぞれ担当した谷口洋介と山本悠尋は、両者とも声に艶と伸びがありインパクトのある歌唱を聴かせた。このオペラで中心的な役割を担い、出番も多いアバリスを歌った大野彰展は、最初は人間味を感じる歌唱に好感を持ったが、アルフィーズへの変わらぬ愛や不屈の精神力の表現は物足りず、健闘はしていたが聴かせどころの多い主キャストとしての力強さや繊細な表現力が欲しかった。
セミ・ステージ形式の上演であるため舞台装置や演出はシンプルだが、バレエが彩りを与えてステージは映えた。幾重ものブルーの長いサテン布を広げて揺らし、海を描写する場面も美しかった。一部合唱団もダンスに加わったりして場を盛り上げたのも良かったが、集団での意味不明な動きの繰り返しなど、合唱団の動きが余計だと感じることもあった。セミ・ステージと割り切って演出はシンプルに徹するのがいい。
正味3時間の公演はとても充実していたし、レ・ボレアードが遂に「レ・ボレアード」を全幕上演した意義も大きいが、手放しで感動できない後味の悪さが残った。それはこのオペラのストーリーに全く共感できないから。ひたすら家柄や血筋にこだわり、それをもたないアバリスは叩きまくられながら、最後にアバリスがアポロンの息子で、正統な血筋を引く者とわかった途端に掌返しの称賛と共に結婚を祝福するシーンは、音楽は素晴らしかったのに嫌悪感さえ覚えた。
時代が違うと云えばそれまでだが、もう少しアバリスに寄り添った台本に出来なかったものか。身分の違いで恋愛が妨げられるオペラは多いが、筋の展開があまりにもあからさまだ。北とぴあ国際音楽祭で以前上演された同じラモーの「プラテ」を観たときの釈然としない思いが蘇ってきた。「プラテ」は醜い容姿の主人公が徹底的にイジメられる話。その時の感想にも書いたが、モーツァルトだったらもっと人間愛に溢れるオペラに仕上げたと思う。ラモーは重要な大作曲家だろうが、庶民の心を汲み取る器はなかったのかも知れない。
ラモー「プラテ」~北とぴあ国際音楽祭2014より~
リュリ「アルミ―ド」~北とぴあ国際音楽祭2022より~
ラモー「アナクレオン」ほか ~北とぴあ国際音楽祭2021より~
ヘンデル「リナルド」~北とぴあ国際音楽祭2019より~
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寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【演出】ロマナ・アニエル【振付】ピエール=フランソワ・ドレ【照明デザイン】岡田勇輔【舞台監督/プロダクションマネージャー】大平久美【演出部】清水蘭子
北とぴあ国際音楽祭の毎年の目玉、寺神戸亮とレ・ボレアードによるオペラ公演の今年の演目は、この演奏団体の名の由来となったラモーの大作オペラ「レ・ボレアード」。このオペラの最大の特徴は、全幕を通じてふんだんに盛り込まれるバレエの存在。多種多様なバレエ音楽と、それに乗って演じられる数々のバレエが、生き生きとしたワクワクのパフォーマンスで、壮大で優美な絵巻物の世界を織り成した。
寺神戸亮指揮のレ・ボレアードは、いつものことではあるが卓越した演奏能力を擁し、美しい響きで繊細な表情や快活な気分を雄弁に瑞々しく紡ぎ出し、聴き惚れるばかり。沢山の舞曲のなかでも異彩を放ったのは第1幕のコントルダンス。人間の根源的なエネルギーが沸き上がってくるような音楽を、パワフルでありながら軽妙に表現して心に刻まれた。随所に登場する合唱も、澄んだ美しいハーモニーで花を添えた。
ドレを中心とした4人のダンサーによるバレエは、四肢を伸びやかに使いこなして生き生きとして優美。ドレの振付けには場面ごとの意味があるのだろうが、それを読み取るのは難しく、その辺りがわかると更にバレエを楽しむことができるのだろう。
歌い手で最も印象に残ったのは、アダマスとアポロンを歌った与那城敬。磨かれた艶のある美声で朗々と歌い、頼もしく貫禄のある役を強く印象付けた。アルフィーズを歌ったプールは、くっきりとした声で表現の幅も広いが、女王としての気高さはもう一歩。その点、セミルとポリムニ役を担った湯川亜也子の歌は品格があり、清澄で深い声も魅力的だった。
カリシスとボリレをそれぞれ担当した谷口洋介と山本悠尋は、両者とも声に艶と伸びがありインパクトのある歌唱を聴かせた。このオペラで中心的な役割を担い、出番も多いアバリスを歌った大野彰展は、最初は人間味を感じる歌唱に好感を持ったが、アルフィーズへの変わらぬ愛や不屈の精神力の表現は物足りず、健闘はしていたが聴かせどころの多い主キャストとしての力強さや繊細な表現力が欲しかった。
セミ・ステージ形式の上演であるため舞台装置や演出はシンプルだが、バレエが彩りを与えてステージは映えた。幾重ものブルーの長いサテン布を広げて揺らし、海を描写する場面も美しかった。一部合唱団もダンスに加わったりして場を盛り上げたのも良かったが、集団での意味不明な動きの繰り返しなど、合唱団の動きが余計だと感じることもあった。セミ・ステージと割り切って演出はシンプルに徹するのがいい。
正味3時間の公演はとても充実していたし、レ・ボレアードが遂に「レ・ボレアード」を全幕上演した意義も大きいが、手放しで感動できない後味の悪さが残った。それはこのオペラのストーリーに全く共感できないから。ひたすら家柄や血筋にこだわり、それをもたないアバリスは叩きまくられながら、最後にアバリスがアポロンの息子で、正統な血筋を引く者とわかった途端に掌返しの称賛と共に結婚を祝福するシーンは、音楽は素晴らしかったのに嫌悪感さえ覚えた。
時代が違うと云えばそれまでだが、もう少しアバリスに寄り添った台本に出来なかったものか。身分の違いで恋愛が妨げられるオペラは多いが、筋の展開があまりにもあからさまだ。北とぴあ国際音楽祭で以前上演された同じラモーの「プラテ」を観たときの釈然としない思いが蘇ってきた。「プラテ」は醜い容姿の主人公が徹底的にイジメられる話。その時の感想にも書いたが、モーツァルトだったらもっと人間愛に溢れるオペラに仕上げたと思う。ラモーは重要な大作曲家だろうが、庶民の心を汲み取る器はなかったのかも知れない。
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