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9月A定期(マリナー指揮)

2010年09月25日 | N響公演の感想(~2016)
9月25日(土)ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
《2010年9月Aプロ》 NHKホール

【曲目】
1.シューマン/序曲、スケルツォ、フィナーレ Op.52
2.シューマン/ピアノ協奏曲イ短調Op.54
Pf:アンティ・シーララ
3.シューマン/交響曲第3番変ホ長調 Op.97「ライン」

先週聴いたマリナー/N響のコンサートがあまりに良かったので、これはシューマンも聴き逃せない!と1回券を買ってNHKホールへと馳せ参じた。

シューマン・プロの1曲目「序曲、スケルツォ、フィナーレ」は、シューマンらしい散文風の曲で、マリナーの上品で自然なタッチが好印象を与えてくれる。みずみずしく活き活きとした息遣いが、演奏会のオープニングにふさわしく、ワクワク感を高めてくれた。

次は大好きなピアノコンチェルト。ピアノのシーララは若い世代で頭角を現しているそうで、確かに腕は達者だが、僕がこの曲に求めたい病的な、夢遊病者的な演奏とは対極にあるような、明るくはっきりしたピアノで、第3楽章の嬉々とした躍動感などはよかったが、あとはどうもピンと来ない。マリナー/N響は、ソフトタッチで繊細な色合いは感じたが、クセのない爽やかな演奏はインパクトとしては弱い。最近、演奏に益々内面性を深めた、シューマンをこよなく愛するピアニスト、伊藤恵さんあたりがソリストだったらなぁ、なんて考えていたのだが、当のご本人がFM生中継のゲストでホールにいたことを帰ってから知った。だったらステージに出て欲しかった!

後半の「ライン」。ストレートで活きの良い冒頭を聴いて伝わってきたこの「ライン」のキャラクターは、陽光をいっぱい湛えた明るさ。この曲が明るい音楽というのは共通認識だとは思うが、ここで描かれたライン川は、シューマンが身投げをしたデュッセルドルフを流れる幾分殺風景なライン川ではなく、ライン川遊覧のハイライト、豊かな日差しをたっぷり浴びるワインのぶどう畑が広がり、古城が次々と現れる、マインツ~コプレンツ辺りのとりわけ明るいライン川だ。陽光の中で微笑みを交す幸せいっぱいの恋人達の情景って感じかな…

ケルンの大聖堂をイメージしたと言われる第4楽章も、荘重さよりも低音のリズムがなんだかスイングしているようにさえ感じ、幸せ感が漂う。第5楽章の満たされた感じは、ミサ曲で言えば究極の「ドナ・ノービス・パーチェム」! この前のブラームスのような感動を求めるのは、音楽が全然違うわけだし無理な話で、このままリラックスした楽しい気分で終わるのもいいか、と思って聴いていたら、終盤にさしかかってグッと密度が凝縮し、輝きを増して、テンポが速まる以上に、気分がまるで追い風を受けているように盛り立てられていった。汗をかくことも、息を切らすこともなく頂上まで運んでもらった爽快感。これがマリナーの真骨頂だろうか!

終演後は、クラシックファン必見のサイト「さまよえるクラヲタ人」のオーナーでマリナーをこよなく愛するyokochanさんと久々に1杯(3杯)やって、コアな話に花を咲かせた。同世代同士の音楽昔話は特に盛り上がって楽しかったが、お疲れのところ、随分とお引止めしてしまった。Yokochanさん、ありがとうございました!

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4 コメント

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シューマンのピアノコンチェルト (一静庵)
2010-09-26 06:12:53
私も伊藤恵さんだったら良かったのにと思いました
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サー・ネヴィル (yokochan)
2010-09-26 11:33:26
おはようございます。
昨晩はどうもお世話になりました。
気持ちのよい、サー・ネヴィルならではのシューマンが聴けて、とても満足の一夜でした。
ああしたコンサートのあとは、やはり一杯がつきもの。
各国のビールを傾けながら、楽しいひととき、ありがとうございました。
不覚にも、電車でうとうとしてしまい、下書きできず、更新が遅れをとってしまいました(笑)
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Re: シューマンのピアノコンチェルト (pockn)
2010-09-27 00:46:19
一静庵さんもいらしてたのですね。
伊藤恵さん、放送ではシーララのピアノを絶賛していたそうじゃないですか。何だか気の毒に思えてきました。シーララ、悪くはなかったですが…
NHKも、恵さんをステージではなく、放送用のブースに入れてしまうなんて、芸がないですね。
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Re: サー・ネヴィル (pockn)
2010-09-27 00:55:21
yokochanさん、マリナーとN響はとても相性が良さそうで、これからも度々名演を聴かせてもらいたいですね。次はいつでしょうね。
コンサートのあと、「軽く」ということでお付合いいただいたのに、長居をさせてしまってすみませんでした。。あまりに楽しかったもので…

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