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ミロ・クァルテット ベートーヴェン・サイクルⅡ

2015年06月11日 | pocknのコンサート感想録2015
6月11日(木)ミロ・クァルテット ベートーヴェン・サイクル Ⅱ  
~サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2013~
サントリーホール(小)ブルーローズ
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調Op.59-1「ラズモフスキー第1番」
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調Op.59-2「ラズモフスキー第2番」
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調Op.59-3「ラズモフスキー第3番」

毎年6月にサントリーホールの小ホール(ブルーローズ)で行われる室内楽シリーズ「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」では、ひとつの弦楽四重奏団がベートーヴェンのカルテットを全曲演奏する。今回はアメリカを代表するミロ・クァルテットでベートーヴェン中期の傑作群である3曲の「ラズモフスキー」を聴いた。

ミロ・クァルテットは、カルテットとしての呼吸やハーモニー、表情が見事に揃っていて、それがひとつの焦点に集結する。短いフレーズひとつひとつがとても自然で細やかな表情と息遣いで歌われ、語られ、どこへ向かうかが明確に伝わってくる。そうした小さな単位のフレーズが、1つの楽曲として束になって「焦点」へ注がれるので、演奏に大きな推進力が生まれ、テンションが高まるのが肌身に伝わってくる。ベートーヴェンの音楽に欠かせない強烈なコントラストも鮮やかだ。

4 人はこうしたパフォーマンスをいとも楽しげにやってしまい、「ラズモフスキー第 3 番」の第 4 楽章など、各パートの果敢な「見せ場」も汗をまき散らして食らいついてくるのではなく、無駄なく絶妙のタイミングを狙って確実に核心に迫ってくる。

4声体としての響きは大変調和がとれていて美しく、「ラズモフスキー第 1 番」の第 3 楽章などからは、崇高な世界が見えた。調和があると同時に 4 人のプレイヤーは皆卓越した腕前でそれぞれのパートの存在を訴えてくるので、誰もが響きの中に埋没することなく、明瞭に浮かび上がってくる。

「ラズモフスキー第 2 番」の第 3 楽章、ベートーヴェン後期の作品を思わせるような、対位法が複雑に絡み合い、調性もあいまいでどこへ連れて行かれるかわからなくなってしまいそうな場面でも、やっていることの意味やどこに向かっているかをはっきりと示してくれる。

このようにミロ・クァルテットは、ベートーヴェンのカルテットの構造とコンセプトを解き明かし、生き生きとエキサイティングにその魅力を体現してくれるという意味で理想的な弦楽四重奏団と言える。カルテットとしてのまとまりや、説得力という点でも申し分なく、聴いているときは夢中になれるのだが、結成20年という、カルテットとしてはベテランの域に入ってきているミロ・クァルテットならではの固有の響きやニオイといった個性までは、今夜の演奏会からは感じなかった。そんな個性が醸し出されてくれば印象は更に強まるし、あとまで残る記憶がもっと深く刻まれることにもなろう。

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