6月6日(土)バッハ・コレギウム・ジャパン 第113回定期演奏会
バッハ:教会カンタータ・シリーズ Vol.69
1517~2017 ―宗教改革500周年を記念して―
東京オペラシティコンサートホール
【曲目】
♪ヴァルター/コラール「キリストは、死の縛めにつきたもう」
♪バッハ/「キリストは、死の縛めにつきたもう」BWV 625
♪ヴァルター/コラール「天にまします我らの父よ」
♪バッハ/「天にまします我らの父よ」BWV 683
♪ヴァルター/コラール「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」
♪バッハ/「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV 686
Org:鈴木優人
1. バッハ/カンタータ第101番「私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ」BWV101
2. バッハ/カンタータ第7番「キリスト我らが主ヨルダン川に来たりたもう」BWV7
3. バッハ/カンタータ第38番「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV38
【演 奏】
S:藤崎美苗/カウンターT:青木洋也/T:ダン・コークウェル/B:加耒徹
鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
開演前の鈴木雅明氏の話によれば、今日の演奏会は、2年後に迫った宗教改革500年記念の年となる2017年に向けたカンタータシリーズの幕開けとなるコンサートとのこと。そのためか、今日のカンタータはすべてルター派教会の礼拝で歌われた讃美歌をもとに構成されたコラール・カンタータが選ばれた。
最初に、この日に演奏されるそれぞれのカンタータの元になったヴァルターのコラールと、これらのコラール旋律が用いられたバッハのオルガン作品(コラール前奏曲)が演奏された。バッハの時代から更に200年遡る、宗教改革の時代に生を得たヴァルターによって作られた讃美歌の素朴だけれど真っ直ぐに訴えてくる力を感じ、そこからバッハが編んだ厳粛で壮麗なオルガン音楽のパワーに圧倒された。
カンタータ第101番は「イエスのエルサレムへの嘆きと破壊」を思い起こす日のために書かれたと言うが、聴いていると闇の中を手探りで分け入って行くような不安を感じ、バッハのカンタータを聴いて、揺るぎない信仰心や大きく深い愛を感じて幸福感に浸るいつもの気分を味わうことはできなかった。
第7番は2つのヴァイオリンがコンチェルト風に活躍する器楽的な要素を備えた音楽。冒頭合唱で二人のヴァイオリニストによる技巧的なデュオと、合唱によるコラールとで交わされる音楽はコンチェルトグロッソ風。第4曲のテノールのアリアでもヴァイオリンによるデュオがオブリガートで活躍する。カンタータにはこのように器楽が活躍する曲がたくさんあり、バッハの管弦楽曲というとブランデンブルク協奏曲と管弦楽組曲、それにいくつかのコンチェルトが繰り返し演奏会で取り上げられるが、このようにカンタータの中に「隠れた」名管弦楽曲がたくさんある。それをBCJという優れた音楽集団によって聴けるのは嬉しい。
第38番は、対位法による大規模で厳格な冒頭合唱と、通常とは異なる異質な響きで始まる終結コラールがとりわけ印象に残った。演奏会の最初に置かれたヴァルターのコラールでも感じたが、いつもながらBCJの合唱は少数精鋭により非常に密度の濃い、またメッセージ性の強い歌を伝えてきた。
ソリスト達も透明感のある声で清澄な歌を届けてくれたが、テノールのダン・コークウェルの声は3階奥のバルコニー席までちゃんと届いてこなかったのは残念だった。他の3人の声はしっかり届いて来たし、きちんと歌詞を歌って表現すべきことは伝えていたが、ホレボレする歌唱や、強く心を掴んでくる歌とまでいかない。バッハの教会カンタータの演奏にはスーパースターは不要なのかも知れないが、「これは!」と手放しで絶賛したくなる瞬間が欲しかった。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第111回定期演奏会 2015.2.22 東京オペラシティコンサートホール
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バッハ:教会カンタータ・シリーズ Vol.69
1517~2017 ―宗教改革500周年を記念して―
東京オペラシティコンサートホール
【曲目】
♪ヴァルター/コラール「キリストは、死の縛めにつきたもう」
♪バッハ/「キリストは、死の縛めにつきたもう」BWV 625
♪ヴァルター/コラール「天にまします我らの父よ」
♪バッハ/「天にまします我らの父よ」BWV 683
♪ヴァルター/コラール「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」
♪バッハ/「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV 686
Org:鈴木優人
1. バッハ/カンタータ第101番「私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ」BWV101
2. バッハ/カンタータ第7番「キリスト我らが主ヨルダン川に来たりたもう」BWV7
3. バッハ/カンタータ第38番「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV38
【演 奏】
S:藤崎美苗/カウンターT:青木洋也/T:ダン・コークウェル/B:加耒徹
鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
開演前の鈴木雅明氏の話によれば、今日の演奏会は、2年後に迫った宗教改革500年記念の年となる2017年に向けたカンタータシリーズの幕開けとなるコンサートとのこと。そのためか、今日のカンタータはすべてルター派教会の礼拝で歌われた讃美歌をもとに構成されたコラール・カンタータが選ばれた。
最初に、この日に演奏されるそれぞれのカンタータの元になったヴァルターのコラールと、これらのコラール旋律が用いられたバッハのオルガン作品(コラール前奏曲)が演奏された。バッハの時代から更に200年遡る、宗教改革の時代に生を得たヴァルターによって作られた讃美歌の素朴だけれど真っ直ぐに訴えてくる力を感じ、そこからバッハが編んだ厳粛で壮麗なオルガン音楽のパワーに圧倒された。
カンタータ第101番は「イエスのエルサレムへの嘆きと破壊」を思い起こす日のために書かれたと言うが、聴いていると闇の中を手探りで分け入って行くような不安を感じ、バッハのカンタータを聴いて、揺るぎない信仰心や大きく深い愛を感じて幸福感に浸るいつもの気分を味わうことはできなかった。
第7番は2つのヴァイオリンがコンチェルト風に活躍する器楽的な要素を備えた音楽。冒頭合唱で二人のヴァイオリニストによる技巧的なデュオと、合唱によるコラールとで交わされる音楽はコンチェルトグロッソ風。第4曲のテノールのアリアでもヴァイオリンによるデュオがオブリガートで活躍する。カンタータにはこのように器楽が活躍する曲がたくさんあり、バッハの管弦楽曲というとブランデンブルク協奏曲と管弦楽組曲、それにいくつかのコンチェルトが繰り返し演奏会で取り上げられるが、このようにカンタータの中に「隠れた」名管弦楽曲がたくさんある。それをBCJという優れた音楽集団によって聴けるのは嬉しい。
第38番は、対位法による大規模で厳格な冒頭合唱と、通常とは異なる異質な響きで始まる終結コラールがとりわけ印象に残った。演奏会の最初に置かれたヴァルターのコラールでも感じたが、いつもながらBCJの合唱は少数精鋭により非常に密度の濃い、またメッセージ性の強い歌を伝えてきた。
ソリスト達も透明感のある声で清澄な歌を届けてくれたが、テノールのダン・コークウェルの声は3階奥のバルコニー席までちゃんと届いてこなかったのは残念だった。他の3人の声はしっかり届いて来たし、きちんと歌詞を歌って表現すべきことは伝えていたが、ホレボレする歌唱や、強く心を掴んでくる歌とまでいかない。バッハの教会カンタータの演奏にはスーパースターは不要なのかも知れないが、「これは!」と手放しで絶賛したくなる瞬間が欲しかった。
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