10月3日(火)亀居優斗(Cl)/小澤佳永(Pf)
東京オペラシティリサイタルシリーズ B→Cビートゥーシー[255]
東京オペラシティリサイタルホール
【曲目】
1.バッハ/大橋晃一編/前奏曲とフーガ「聖アン」変ホ長調 BWV552
2.伊藤康英/クラリネット・ソナタ(2021)
3.坂田直樹/カンデラ(2022)
4.ヴィトマン/3つの影の踊り(2013)
5.葛西竜之介/幻想曲《泡》── クラリネットとピアノのための(2023、委嘱初演)
6.レーガー/クラリネット・ソナタ第1番 変イ長調 Op.49-1
(アンコール)
♪ 三界秀実/ソナタ クラリネットとピアノのための
去年の3月に東京オペラシティでやった音コン受賞者発表演奏会で、クラリネット部門を制した亀居優斗さんの演奏を聴いて、これは稀に見る逸材という印象を受け、もっとじっくり聴いてみたいという思いで出かけたこのリサイタルは、このアーティストの並々ならぬ実力を改めて感じる機会となった。
亀居のクラリネットの演奏を聴いてまず感じたのは「心地よさ」。そこには滑らかな歌い回しや、音色の美しさという魅力はもちろんあるのだが、そうしたよく使う褒め言葉を越えたところにこの心地よさはある。僕はここまで研ぎ澄まされたクラリネットの音というのを聴いたことがない気がする。どんな音域でもどんなフレーズでも、どんなディナミークでも、全ての音が最も心地よいポイントを捉えて発せられ、安定の極致のように揺るぎなく、くっきりと、わずかな息も無駄にすることなくこの楽器の演奏に捧げられることで生まれる心地よさとでも云えばいいのだろうか。
隙や無駄がなく、自然体でスッと立ち上がる美しい佇まい。この印象は、バッハのような厳格な音楽でも、伊藤やレーガーのようなロマンチックな作品でも、特殊奏法を駆使した現代曲でも変わることなく、自信たっぷりに音楽の核心を明確に捉え、最初からアンコールまで、ほぼノーミスの非の打ちどころのない演奏を聴かせた。
この演奏が作品の真価を伝え、新たな発見ももたらした。なかでも、「B→C」のコンセプトに沿った「B」(バッハ)と「C」(コンテンポラリー)で選ばれた作品が印象に残った。バッハの作品は、多声部のポリフォニー音楽の一つの決まった声部をクラリネットが担うのではなく、声部を自由に飛び越えて様々なパートのフレーズを演じ、ピアノとの対話でより柔軟で立体的で生き生きとしたバッハの新たな魅力と可能性を感じることが出来た。
「C」に沿った作品では、最もコンテンポラリー色を強く感じたヴィトマンの「3つの影の踊り」が素晴らしかった。3曲から成る作品を1曲ごとに演奏する場所を替えてそこにスポットライトが当たり、様々な特殊奏法や電気的なエコーなども駆使して、高いテンションで3つの異なる世界を描いて聴き手を引き込んでいった。3曲目では打音や息の音をふんだんに盛り込み、最後は演奏者の突然の絶叫にドキリ!先月訪れたベルリンなら大歓声が沸き起こったに違いない。亀居さんのこの先の成長、世界も視野に入れた活躍の行方が楽しみだ。
第90回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会(Cl:亀居優斗)2022.3.4 東京オペラシティ
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亀居のクラリネットの演奏を聴いてまず感じたのは「心地よさ」。そこには滑らかな歌い回しや、音色の美しさという魅力はもちろんあるのだが、そうしたよく使う褒め言葉を越えたところにこの心地よさはある。僕はここまで研ぎ澄まされたクラリネットの音というのを聴いたことがない気がする。どんな音域でもどんなフレーズでも、どんなディナミークでも、全ての音が最も心地よいポイントを捉えて発せられ、安定の極致のように揺るぎなく、くっきりと、わずかな息も無駄にすることなくこの楽器の演奏に捧げられることで生まれる心地よさとでも云えばいいのだろうか。
隙や無駄がなく、自然体でスッと立ち上がる美しい佇まい。この印象は、バッハのような厳格な音楽でも、伊藤やレーガーのようなロマンチックな作品でも、特殊奏法を駆使した現代曲でも変わることなく、自信たっぷりに音楽の核心を明確に捉え、最初からアンコールまで、ほぼノーミスの非の打ちどころのない演奏を聴かせた。
この演奏が作品の真価を伝え、新たな発見ももたらした。なかでも、「B→C」のコンセプトに沿った「B」(バッハ)と「C」(コンテンポラリー)で選ばれた作品が印象に残った。バッハの作品は、多声部のポリフォニー音楽の一つの決まった声部をクラリネットが担うのではなく、声部を自由に飛び越えて様々なパートのフレーズを演じ、ピアノとの対話でより柔軟で立体的で生き生きとしたバッハの新たな魅力と可能性を感じることが出来た。
「C」に沿った作品では、最もコンテンポラリー色を強く感じたヴィトマンの「3つの影の踊り」が素晴らしかった。3曲から成る作品を1曲ごとに演奏する場所を替えてそこにスポットライトが当たり、様々な特殊奏法や電気的なエコーなども駆使して、高いテンションで3つの異なる世界を描いて聴き手を引き込んでいった。3曲目では打音や息の音をふんだんに盛り込み、最後は演奏者の突然の絶叫にドキリ!先月訪れたベルリンなら大歓声が沸き起こったに違いない。亀居さんのこの先の成長、世界も視野に入れた活躍の行方が楽しみだ。
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