10月7日(土)櫻井元希/ヴォーカル・アンサンブル アラミレ
ミサ《めでたし 神聖なる母》
ルネサンス・ポリフォニーとグレゴリオ聖歌によるミサ形式の演奏会 番町教会
【曲目】
◎ ヤコブ・オブレヒト/ミサ「めでたし 神聖なる母」
(曲中に挿入されたグレゴリオ聖歌)
♪入祭唱「めでたし 聖なる産みの母」
♪昇階唱「あなたは祝福された、敬うべき方です」
♪アレルヤ唱「エッサイの若枝が」
♪奉納唱「あなたは幸いな方」
♪拝領唱「幸いな御胎」
5年ぶりに聴く「ヴォーカル・アンサンブル アラミレ」の演奏会。会場となった番町教会は、小学校の下級生だった手塚さんが立ち上げた手塚建築研究所の設計で、明るく開放的な空間にモダンな意匠が施され、更に世界の名音楽ホールを手がけてきた永田音響設計が音響を担当し、設置されている立派なオルガンや声楽による教会音楽に適した響きが期待できる。
アラミレが今回取り上げた作品は、ルネサンス・フランドル楽派の作曲家、ヤコブ・オブレヒトによる大作のミサ「めでたし神聖なる母」。いつものように教会のミサの儀式に則って、福音書朗読やグレゴリオ聖歌を挿入しながら2時間に渡って演奏され、変わることのないデリケートでピュアな歌声を礼拝堂に響かせた。音響は、一人一人の声が聞き分けられるほど声がクリアに届くと同時に、それを大きく包み込む柔らかなハーモニーが堂内に満たされた。
ソロによる朗唱とユニゾンによるグレゴリオ聖歌、そしてオブレヒトの多声合唱で織り成されるミサは、穏やかで静謐な空気に支配され、敬虔な祈りが伝わって来た。複雑に入り組んだ多声部楽曲を、櫻井氏の指揮によるアラミレは各パートの入りも自然に、一糸乱れることなく美しいハーモニーを紡いで行く。ネウマ譜のような当時の記譜法で書かれた大判の譜面を全員で見ながら歌うという一見困難そうなやり方で、どうしてこんな複雑で長大な作品を演奏出来るのだろう、なんて素人の思いはよそに、アラミレの面々は穏やかで満ち足りた表情さえ浮かべてこの大作を歌い進めて行った。
後の時代の音楽のような大きなディナミークやアゴーギクがなく、ともすれば単調に聴こえてしまう音楽だが、大きな流れのなかでのテンポの対比や、音を伸ばす間に生じる穏やかな音量の抑揚が、音楽全体に呼吸のような生きた変化を与えてミサの様々なシーンを描いて行く。時おり聴こえる不思議な響きはこの作品ならではのものだろうか。
例えば「クレド」の"Et incarnatus est" で一瞬にして空気が澄み渡り、続く”crucifixus”で突然重苦しい空気に入れ替わるのを感じたり、「サンクトゥス」でバスが"gloria"のフレーズを繰り返す毎に神の栄光が近づく様子が実感できたりするなど。「アニュス・デイ」の"dona nobis pacem"での下降音型が連なる場面は、平安が舞い降りてくるような感動を呼び起こした。この作品で大きな存在感を示すバスのパートをしなやかなにくっきりと示し、上声部は天を漂うようなハーモニーで対比を作り上げた。音楽が進んで行くなかで、自然光が直接漏れ入るチャペル内の微妙な明暗の移り変わりが一種の演出効果を施し、悠久の時間の流れのなかでいにしえの音楽に身を委ねた。
とはいえ、聴き慣れているとは云えないこの時代の音楽の魅力を十分に吟味するにはある程度の予備知識がもう少しあればという思いも残る。前回聴いたアラミレの演奏会では、指揮の櫻井さんが曲中に使われている定旋律について、実演も交えて事前にレクチャーしてくれて作品の理解の助けになった。今回は、パンフレットの挨拶文で曲について「謎の定旋律”Salve diva parens”を軸に展開される」と触れているが、これについての解説はなく、この辺りを少しサポートしてもらえると有難かった。
メンバーは1つの大きな譜面を皆で見ながら唱和する
ヴォーカル・アンサンブル アラミレ 第11回演奏会 2018.9.15 大森福興教会
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(曲中に挿入されたグレゴリオ聖歌)
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♪奉納唱「あなたは幸いな方」
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アラミレが今回取り上げた作品は、ルネサンス・フランドル楽派の作曲家、ヤコブ・オブレヒトによる大作のミサ「めでたし神聖なる母」。いつものように教会のミサの儀式に則って、福音書朗読やグレゴリオ聖歌を挿入しながら2時間に渡って演奏され、変わることのないデリケートでピュアな歌声を礼拝堂に響かせた。音響は、一人一人の声が聞き分けられるほど声がクリアに届くと同時に、それを大きく包み込む柔らかなハーモニーが堂内に満たされた。
ソロによる朗唱とユニゾンによるグレゴリオ聖歌、そしてオブレヒトの多声合唱で織り成されるミサは、穏やかで静謐な空気に支配され、敬虔な祈りが伝わって来た。複雑に入り組んだ多声部楽曲を、櫻井氏の指揮によるアラミレは各パートの入りも自然に、一糸乱れることなく美しいハーモニーを紡いで行く。ネウマ譜のような当時の記譜法で書かれた大判の譜面を全員で見ながら歌うという一見困難そうなやり方で、どうしてこんな複雑で長大な作品を演奏出来るのだろう、なんて素人の思いはよそに、アラミレの面々は穏やかで満ち足りた表情さえ浮かべてこの大作を歌い進めて行った。
後の時代の音楽のような大きなディナミークやアゴーギクがなく、ともすれば単調に聴こえてしまう音楽だが、大きな流れのなかでのテンポの対比や、音を伸ばす間に生じる穏やかな音量の抑揚が、音楽全体に呼吸のような生きた変化を与えてミサの様々なシーンを描いて行く。時おり聴こえる不思議な響きはこの作品ならではのものだろうか。
例えば「クレド」の"Et incarnatus est" で一瞬にして空気が澄み渡り、続く”crucifixus”で突然重苦しい空気に入れ替わるのを感じたり、「サンクトゥス」でバスが"gloria"のフレーズを繰り返す毎に神の栄光が近づく様子が実感できたりするなど。「アニュス・デイ」の"dona nobis pacem"での下降音型が連なる場面は、平安が舞い降りてくるような感動を呼び起こした。この作品で大きな存在感を示すバスのパートをしなやかなにくっきりと示し、上声部は天を漂うようなハーモニーで対比を作り上げた。音楽が進んで行くなかで、自然光が直接漏れ入るチャペル内の微妙な明暗の移り変わりが一種の演出効果を施し、悠久の時間の流れのなかでいにしえの音楽に身を委ねた。
とはいえ、聴き慣れているとは云えないこの時代の音楽の魅力を十分に吟味するにはある程度の予備知識がもう少しあればという思いも残る。前回聴いたアラミレの演奏会では、指揮の櫻井さんが曲中に使われている定旋律について、実演も交えて事前にレクチャーしてくれて作品の理解の助けになった。今回は、パンフレットの挨拶文で曲について「謎の定旋律”Salve diva parens”を軸に展開される」と触れているが、これについての解説はなく、この辺りを少しサポートしてもらえると有難かった。
メンバーは1つの大きな譜面を皆で見ながら唱和する
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