11月26日(土)準・メルクル指揮 NHK交響楽団
《2011年11月Aプロ》 NHKホール
【曲目】
1. マーラー/リュッケルトによる5つの歌![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
3.マーラー/交響曲第4番ト長調
S:ダニエレ・ハルプヴァクス
マラ4は、マーラーのシンフォニーで僕が一番好きな曲。それをN響に初登場したときから数々の名演を聴かせてくれている、やはりお気に入りの指揮者、準・メルクルが振る、ということで是非聴きたくて、一回券を買って出かけたN響A定期。前半もマーラーの歌曲でマーラー尽しの魅力的なプログラムだ。
リュッケルトの歌曲でのハルプヴァクスの歌は、潤いのある豊かな表情で、滑らかに音を紡いでいった。歌が言葉に敏感に反応して命が吹き込まれる。艶やかでまろやかな声が耳に心地よく響いた。編成は大きいけれど終始室内楽的なテクスチュアで書かれているこの曲のオケパートがまた良かった。とりわけ、ホルン、クラ、オーボエ、フルートなどそれぞれの管楽器のソロが瑞々しく息づき、自然に語りかけてくるのがいい。メルクルの細やかな神経がオケの隅々まで行き渡り、管楽器たちは、弦とも睦まじく調和して、歌とのアンサンブルを楽しんでいるようだった。
さて期待のマラ4。冒頭のヴァイオリンのメロディーが思ったよりずっとあっさりと、囁くように始まった。まるで1本の楽器で弾いているように繊細。メルクルは、次々と顔色を変えて行くマーラーの音楽の特徴を捉え、オケから様々なトーンの音色やテクスチュアを、デリケートで柔軟に、即興的とも言える感覚で引き出す。けれど、この楽章からはもっと胸がキュンとくる切ない哀愁とか郷愁を感じるはずなんだけれど、それがあまり伝わって来ない…
第2楽章はゲストコンマスのエシュケナージの味わい深いソロヴァイオリンをはじめ、ソロ楽器が持ち味を発揮し、前半の歌曲のときのような室内楽的な名アンサンブルを聴かせてくれてよかったが、第3楽章では、端正な美しさや透明感はあるものの、やっぱり「胸キュン」が来ない。正直すぎる濁りのなさが物足りないというか… 第4楽章でのハルプヴァイスの歌は相変わらず良かった。抑揚があり、香りがある。音楽は最後も穏やかだが、この最後のところは、穏やかな中にもどんどん天に昇って行くような静かな高揚感が欲しいところだが、そうした気分的な盛り上がりがオケからももう一つ伝わってこなかった。
この演奏、総じて端正で繊細で透明。それに引き換え、哀愁や色香で物足りなさを感じ、また、テンションの充溢ももっと望めたのではないだろうか。
3階席までよく入った聴衆からは温かい拍手と、あちこちからブラボーもかかっていたが、メルクル/N響の名演はこんなもんじゃない。メルクルはN響を振る回数が最近少なくなっている。今回だって、コウトの代理で1回だけ。来シーズンも5月のB定期に登場するだけだ。どんな事情があるかは知らないが、メルクルとN響は、思うに、お互いに切磋琢磨して成長して行く関係にあるのではと思う。そうだとすると、もっとコンスタントに出番があってこそメルクル/N響の本領は発揮できるのではないだろうか。巨匠級の長老指揮者が来て超名演を聴かせてくれるのはもちろんいいが、N響を大切に思ってくれ、力もある指揮者をもっと重用してほしい。そういう建設的な積み重ねが、N響の将来にとっても大きなプラスになると思う。
《2011年11月Aプロ》 NHKホール
【曲目】
1. マーラー/リュッケルトによる5つの歌
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
3.マーラー/交響曲第4番ト長調
S:ダニエレ・ハルプヴァクス
マラ4は、マーラーのシンフォニーで僕が一番好きな曲。それをN響に初登場したときから数々の名演を聴かせてくれている、やはりお気に入りの指揮者、準・メルクルが振る、ということで是非聴きたくて、一回券を買って出かけたN響A定期。前半もマーラーの歌曲でマーラー尽しの魅力的なプログラムだ。
リュッケルトの歌曲でのハルプヴァクスの歌は、潤いのある豊かな表情で、滑らかに音を紡いでいった。歌が言葉に敏感に反応して命が吹き込まれる。艶やかでまろやかな声が耳に心地よく響いた。編成は大きいけれど終始室内楽的なテクスチュアで書かれているこの曲のオケパートがまた良かった。とりわけ、ホルン、クラ、オーボエ、フルートなどそれぞれの管楽器のソロが瑞々しく息づき、自然に語りかけてくるのがいい。メルクルの細やかな神経がオケの隅々まで行き渡り、管楽器たちは、弦とも睦まじく調和して、歌とのアンサンブルを楽しんでいるようだった。
さて期待のマラ4。冒頭のヴァイオリンのメロディーが思ったよりずっとあっさりと、囁くように始まった。まるで1本の楽器で弾いているように繊細。メルクルは、次々と顔色を変えて行くマーラーの音楽の特徴を捉え、オケから様々なトーンの音色やテクスチュアを、デリケートで柔軟に、即興的とも言える感覚で引き出す。けれど、この楽章からはもっと胸がキュンとくる切ない哀愁とか郷愁を感じるはずなんだけれど、それがあまり伝わって来ない…
第2楽章はゲストコンマスのエシュケナージの味わい深いソロヴァイオリンをはじめ、ソロ楽器が持ち味を発揮し、前半の歌曲のときのような室内楽的な名アンサンブルを聴かせてくれてよかったが、第3楽章では、端正な美しさや透明感はあるものの、やっぱり「胸キュン」が来ない。正直すぎる濁りのなさが物足りないというか… 第4楽章でのハルプヴァイスの歌は相変わらず良かった。抑揚があり、香りがある。音楽は最後も穏やかだが、この最後のところは、穏やかな中にもどんどん天に昇って行くような静かな高揚感が欲しいところだが、そうした気分的な盛り上がりがオケからももう一つ伝わってこなかった。
この演奏、総じて端正で繊細で透明。それに引き換え、哀愁や色香で物足りなさを感じ、また、テンションの充溢ももっと望めたのではないだろうか。
3階席までよく入った聴衆からは温かい拍手と、あちこちからブラボーもかかっていたが、メルクル/N響の名演はこんなもんじゃない。メルクルはN響を振る回数が最近少なくなっている。今回だって、コウトの代理で1回だけ。来シーズンも5月のB定期に登場するだけだ。どんな事情があるかは知らないが、メルクルとN響は、思うに、お互いに切磋琢磨して成長して行く関係にあるのではと思う。そうだとすると、もっとコンスタントに出番があってこそメルクル/N響の本領は発揮できるのではないだろうか。巨匠級の長老指揮者が来て超名演を聴かせてくれるのはもちろんいいが、N響を大切に思ってくれ、力もある指揮者をもっと重用してほしい。そういう建設的な積み重ねが、N響の将来にとっても大きなプラスになると思う。