10月15日(土)男声合唱団CHOR WAFNA 第32回定期演奏会 
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江戸川区総合文化センター小ホール
【曲目】
1.多田武彦/男声合唱組曲「航海詩集」
2.三沢治美(編曲)/男声合唱のためのヒットメドレー「SORA」
朧月夜~夜空ノムコウ~TOKIO~君といつまでも~東京キッド/浪漫飛行~春よ、来い~涙そうそう
3. トルミス/トルミス男声合唱曲 ~歌の架け橋、大波の魔術
4. 荻久保和明/男声合唱組曲「IN TERRA PAX -地に平和を」
【アンコール】
1. 荻久保和明/眠るタマゴ
2. シューベルト/聖なるかな
3. 海・その愛
【指揮】川合良一、鬼塚裕一郎(2,アンコール3)/Pf:武部純子
今年もコール・ヴァフナが、楽しく、温かく、美しく、熱い歌を聴かせてくれた。定番の多田武彦のステージは、いつも以上にハーモニーもしっくりと決まり、いつも同様の柔らかく温かな響きを聴かせてくれた。パートごとの語りかけも滑らかで味わい豊か。
ヴァフナの演奏会で、もしかして一番楽しみなのが第2ステージ。ヴァフナは、第2ステージで取り上げるようなタイプの歌を、単なる受け狙いという次元を遥かに越え、ヴァフナのひとつの「文化」として暖め・育み、心に響く歌を届けてくれる。ノスタルジーだけではなく、これらの歌がメンバーによってまた新たな命を与えられ、聴き手の心に親密に語りかけ、その和のなかに聴き手も誘い入れてくれるよう。優しい包容力と、「こっちへ来いよ」と誘ってくる親密さ。それは、「君といつまでも」の語りで、本当は「君」と呼びかけるところを「君たち」と、聴衆みんなに呼びかけることでも如実に物語っている(それとも編曲者のアイディア?)。歌っているメンバー一人一人の心が伝わり、まさにヴァフナの色が出る稀有のステージだった。
後半はまたガラリと雰囲気を変え、ヴァフナはまた別の顔を見せてくれた。トルミスの合唱曲は、言葉もハーモニーも絡みもタイヘンそうな曲にもかかわらず、そこにアルヴォ・ペルトを生んだエストニアの、私たちが普段慣れ親しんでいる西洋とはどこか異なる異国の匂いを漂わせさえしていた。海難事故の悲劇を歌った2曲目では、口笛が一種前衛的で鮮烈な空気も運んできた。
「IN TERRA PAX」は、戦争の悲惨さ、残虐さを歌った作品。いつも会場で配られる歌詞が今回なかったのは、「文字ではなく歌のなかの言葉を聞いてほしい」という演奏者の思いの表れであることは想像できる。確かに、言葉は明瞭に聴こえてくるし、感情を込めて歌われる一つ一つの言葉が、文字を介さないことで聴き手の心によりストレートに飛び込んでくる。ただ、普段は歌詞をしっかり読んでから歌を聴く身として、いきなり歌だけで言葉を受けとめることの難しさも感じた。単語の意味は伝わっても、文として理解するのはやはり大変だ。戦争のむごさを最初の4曲で伝えたあと、終曲では突然、平和を謳歌するおめでたい雰囲気になって、そればかりが印象に残ってしまったのは、やはり言葉のメッセージを十分に味わうことができなかったせいもあるかも知れない。
予定されていたプログラムが終わった後、例によってアンコールが3曲。難曲が入っているにもかかわらず、ヴァフナは決して演奏レベルを落とすことがない。単に「歌が好き」だけでは絶対に達することができないレベルの演奏会だ。一人一人の努力や集団としての精進だけでなく、川合先生とメンバーが、32年かけて育んだ「ヴァフナ魂」のようなものを感じさせる。「海・その愛」で、あの第2ステージの親密さを再現してステージを閉じた。コール・ヴァフナの「リサイタル」に立ち会えた、そんな気持ちになる演奏会だった。
男声合唱団コール・ヴァフナ 第31回定期演奏会(2015.10.11 川口リリア 音楽ホール)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
拡散希望記事!STOP!エスカレーターの片側空け
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江戸川区総合文化センター小ホール
【曲目】
1.多田武彦/男声合唱組曲「航海詩集」
2.三沢治美(編曲)/男声合唱のためのヒットメドレー「SORA」
朧月夜~夜空ノムコウ~TOKIO~君といつまでも~東京キッド/浪漫飛行~春よ、来い~涙そうそう
3. トルミス/トルミス男声合唱曲 ~歌の架け橋、大波の魔術
4. 荻久保和明/男声合唱組曲「IN TERRA PAX -地に平和を」
【アンコール】
1. 荻久保和明/眠るタマゴ
2. シューベルト/聖なるかな
3. 海・その愛
【指揮】川合良一、鬼塚裕一郎(2,アンコール3)/Pf:武部純子
今年もコール・ヴァフナが、楽しく、温かく、美しく、熱い歌を聴かせてくれた。定番の多田武彦のステージは、いつも以上にハーモニーもしっくりと決まり、いつも同様の柔らかく温かな響きを聴かせてくれた。パートごとの語りかけも滑らかで味わい豊か。
ヴァフナの演奏会で、もしかして一番楽しみなのが第2ステージ。ヴァフナは、第2ステージで取り上げるようなタイプの歌を、単なる受け狙いという次元を遥かに越え、ヴァフナのひとつの「文化」として暖め・育み、心に響く歌を届けてくれる。ノスタルジーだけではなく、これらの歌がメンバーによってまた新たな命を与えられ、聴き手の心に親密に語りかけ、その和のなかに聴き手も誘い入れてくれるよう。優しい包容力と、「こっちへ来いよ」と誘ってくる親密さ。それは、「君といつまでも」の語りで、本当は「君」と呼びかけるところを「君たち」と、聴衆みんなに呼びかけることでも如実に物語っている(それとも編曲者のアイディア?)。歌っているメンバー一人一人の心が伝わり、まさにヴァフナの色が出る稀有のステージだった。
後半はまたガラリと雰囲気を変え、ヴァフナはまた別の顔を見せてくれた。トルミスの合唱曲は、言葉もハーモニーも絡みもタイヘンそうな曲にもかかわらず、そこにアルヴォ・ペルトを生んだエストニアの、私たちが普段慣れ親しんでいる西洋とはどこか異なる異国の匂いを漂わせさえしていた。海難事故の悲劇を歌った2曲目では、口笛が一種前衛的で鮮烈な空気も運んできた。
「IN TERRA PAX」は、戦争の悲惨さ、残虐さを歌った作品。いつも会場で配られる歌詞が今回なかったのは、「文字ではなく歌のなかの言葉を聞いてほしい」という演奏者の思いの表れであることは想像できる。確かに、言葉は明瞭に聴こえてくるし、感情を込めて歌われる一つ一つの言葉が、文字を介さないことで聴き手の心によりストレートに飛び込んでくる。ただ、普段は歌詞をしっかり読んでから歌を聴く身として、いきなり歌だけで言葉を受けとめることの難しさも感じた。単語の意味は伝わっても、文として理解するのはやはり大変だ。戦争のむごさを最初の4曲で伝えたあと、終曲では突然、平和を謳歌するおめでたい雰囲気になって、そればかりが印象に残ってしまったのは、やはり言葉のメッセージを十分に味わうことができなかったせいもあるかも知れない。
予定されていたプログラムが終わった後、例によってアンコールが3曲。難曲が入っているにもかかわらず、ヴァフナは決して演奏レベルを落とすことがない。単に「歌が好き」だけでは絶対に達することができないレベルの演奏会だ。一人一人の努力や集団としての精進だけでなく、川合先生とメンバーが、32年かけて育んだ「ヴァフナ魂」のようなものを感じさせる。「海・その愛」で、あの第2ステージの親密さを再現してステージを閉じた。コール・ヴァフナの「リサイタル」に立ち会えた、そんな気持ちになる演奏会だった。
男声合唱団コール・ヴァフナ 第31回定期演奏会(2015.10.11 川口リリア 音楽ホール)
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