4月22日(金)トレヴァー・ピノック指揮 紀尾井シンフォニエッタ東京
フォーレ、ベートーヴェン、ハイドン ― 時空を超えるピノックの世界 ~第104回定期演奏会~
紀尾井ホール
【曲目】
1.フォーレ/組曲「マスクとベルガマスク」Op.112
2.ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
Pf:イモジェン・クーパー
3.ハイドン/交響曲第103番変ホ長調 Hob.Ⅰ-103「太鼓連打」
【アンコール】
シューベルト/「ロザムンデ」~ 第3幕への間奏曲
3年半振りに聴くピノック指揮の紀尾井シンフォニエッタによる定期は、これまでに聴いた数々のこのオーケストラの公演のなかでも飛びきり充実した素晴らしい演奏会となった。
フォーレの小品を集めた組曲、ピノックは「フォーレ」というイメージではないが、これがなかなかの好演。序曲の活きのいい颯爽とした演奏は、テンションの高さだけではなく、音色が美しく、アンサンブルとして「いい音」が響く。一流のプレイヤーが集まり、定期的にオーケストラ活動を行っている紀尾井シンフォニエッタには、いつもこうしたよく練られた「いい音」を期待するのだが、それがなかなか感じられないのは指揮者のせいか?なんて思っていたが、今夜はこのオケが出せるはずの音に出会えた気がした。ハツラツとしたところだけではなく、微細なニュアンスをコントロールしつつ、撫でるようにソフトに包み込む表現もいい。終曲のパストラーレでの気品に満ちた表情と美しい音色にもホレボレ。これで「今夜は期待できる!」と確信。
続いて、名手イモジェン・クーパーをソリストに迎えてのベートーヴェン。ここではクーパーのピアノに心底惚れ込んだ。ピアノから放たれた音たちの立ち居振舞いが、デリケートで優美なダンスのよう。指先まで神経が行き届いた細やかな表情と、しなやかで軽やかに宙に舞い上がる大きな動き。全ての音に命が宿り、全てが有機的に連なり、無駄なものが全くない。一連の動き一つ一つが優しく微笑みながら、ほんのりとした芳香を振り撒いてゆく。何という気品。そして溢れる豊かな詩情。
ピノック指揮の紀尾井シンフォニエッタは、瑞々しく芯のある音で、伸びやかに、晴れやかに、生気に満ちた格調高い演奏でクーパーのピアノに呼応する。第2楽章での、オケの厳しく張り詰めた語りかけと、それに応じるピアノの沈鬱さの奥底からにじみ出る温かな人間味。ベートーヴェンのこの曲本来の持ち味である優美さや繊細さが、理想的な形で表現された忘れがたい名演となった。イモジェン・クーパーは、単なる腕利きのピアニストとはひと味もふた味も違う、人の心に深く語りかけてくる素晴らしいピアニストだ。アンコールがなかったのは残念。リサイタルがあれば必ず行こう!
ここまで聴いて益々期待が膨らんだハイドンのシンフォニーは、カッチリとした美しいフォルムを保ち、生き生きと、嬉々とした演奏を繰り広げた。主役である旋律は朗々と自信満々に歌う。ヴァイオリンパートの輝かしく強靭な「攻め」の姿勢には随所で心にグッときた。そして他の声部は、軽妙洒脱に主役をサポートし、相の手を入れ、或いは果敢に主旋律に挑んでくる。緩急、強弱、緊張と弛緩の明瞭な変化も鮮やか。第2楽章の変奏ではコンミスの玉井菜採さんの艶やかでチャーミングなソロも素晴らしい。まさにハイドンの世界の真骨頂を余すところなく示してくれた。ピノックのハイドン、本当に素晴らしい。ザロモン・セットだけでも全曲やってもらいたい。
アンコールのシューベルトは天上界から降り注ぐようなパラダイス的な穏やかな世界を表現した幸福感溢れる演奏。元気はつらつだけではないピノックの年齢を重ねた味わい深さも感じた。中間部での木管のソロ達の、ニュアンスに富んだ自然な語り口も素敵だった。
トレヴァー・ピノック指揮 紀尾井シンフォニエッタ東京 2012.9.22 紀尾井ホール
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フォーレ、ベートーヴェン、ハイドン ― 時空を超えるピノックの世界 ~第104回定期演奏会~
紀尾井ホール
【曲目】
1.フォーレ/組曲「マスクとベルガマスク」Op.112
2.ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
Pf:イモジェン・クーパー
3.ハイドン/交響曲第103番変ホ長調 Hob.Ⅰ-103「太鼓連打」
【アンコール】
シューベルト/「ロザムンデ」~ 第3幕への間奏曲
3年半振りに聴くピノック指揮の紀尾井シンフォニエッタによる定期は、これまでに聴いた数々のこのオーケストラの公演のなかでも飛びきり充実した素晴らしい演奏会となった。
フォーレの小品を集めた組曲、ピノックは「フォーレ」というイメージではないが、これがなかなかの好演。序曲の活きのいい颯爽とした演奏は、テンションの高さだけではなく、音色が美しく、アンサンブルとして「いい音」が響く。一流のプレイヤーが集まり、定期的にオーケストラ活動を行っている紀尾井シンフォニエッタには、いつもこうしたよく練られた「いい音」を期待するのだが、それがなかなか感じられないのは指揮者のせいか?なんて思っていたが、今夜はこのオケが出せるはずの音に出会えた気がした。ハツラツとしたところだけではなく、微細なニュアンスをコントロールしつつ、撫でるようにソフトに包み込む表現もいい。終曲のパストラーレでの気品に満ちた表情と美しい音色にもホレボレ。これで「今夜は期待できる!」と確信。
続いて、名手イモジェン・クーパーをソリストに迎えてのベートーヴェン。ここではクーパーのピアノに心底惚れ込んだ。ピアノから放たれた音たちの立ち居振舞いが、デリケートで優美なダンスのよう。指先まで神経が行き届いた細やかな表情と、しなやかで軽やかに宙に舞い上がる大きな動き。全ての音に命が宿り、全てが有機的に連なり、無駄なものが全くない。一連の動き一つ一つが優しく微笑みながら、ほんのりとした芳香を振り撒いてゆく。何という気品。そして溢れる豊かな詩情。
ピノック指揮の紀尾井シンフォニエッタは、瑞々しく芯のある音で、伸びやかに、晴れやかに、生気に満ちた格調高い演奏でクーパーのピアノに呼応する。第2楽章での、オケの厳しく張り詰めた語りかけと、それに応じるピアノの沈鬱さの奥底からにじみ出る温かな人間味。ベートーヴェンのこの曲本来の持ち味である優美さや繊細さが、理想的な形で表現された忘れがたい名演となった。イモジェン・クーパーは、単なる腕利きのピアニストとはひと味もふた味も違う、人の心に深く語りかけてくる素晴らしいピアニストだ。アンコールがなかったのは残念。リサイタルがあれば必ず行こう!
ここまで聴いて益々期待が膨らんだハイドンのシンフォニーは、カッチリとした美しいフォルムを保ち、生き生きと、嬉々とした演奏を繰り広げた。主役である旋律は朗々と自信満々に歌う。ヴァイオリンパートの輝かしく強靭な「攻め」の姿勢には随所で心にグッときた。そして他の声部は、軽妙洒脱に主役をサポートし、相の手を入れ、或いは果敢に主旋律に挑んでくる。緩急、強弱、緊張と弛緩の明瞭な変化も鮮やか。第2楽章の変奏ではコンミスの玉井菜採さんの艶やかでチャーミングなソロも素晴らしい。まさにハイドンの世界の真骨頂を余すところなく示してくれた。ピノックのハイドン、本当に素晴らしい。ザロモン・セットだけでも全曲やってもらいたい。
アンコールのシューベルトは天上界から降り注ぐようなパラダイス的な穏やかな世界を表現した幸福感溢れる演奏。元気はつらつだけではないピノックの年齢を重ねた味わい深さも感じた。中間部での木管のソロ達の、ニュアンスに富んだ自然な語り口も素敵だった。
トレヴァー・ピノック指揮 紀尾井シンフォニエッタ東京 2012.9.22 紀尾井ホール
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