4月28日(木)レナード・スラットキン指揮 NHK交響楽団
《2016年4月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. バーンスタイン/キャンディード序曲
2. バーンスタイン/「オン・ザ・タウン」―「3つのダンス・エピソード」
3.バーンスタイン/「ウェストサイド物語」―「シンフォニック・ダンス」
4.マーラー/交響曲第4番ト長調
S:安井陽子
4年振りにスラットキンが登場した。前半にバーンスタインの作品を3つ並べる珍しいプログラミング。アメリカが誇る名匠が指揮するバーンスタイン作品、ということで、型破りでぶっ飛んだ演奏をイメージしていたのに反し、颯爽としたなかに繊細で、ソフトな感触が光る演奏だった。世俗性よりもロイヤリティーに長けていて、キャンディードなんて古典の名曲の風貌さえ感じさせた。
磨きのかかった美しい音色、音の運びはデフォルメされることなく滑らか、そのなかで効かせるパンチは、名投手の会心のストレートの一投といったところ。N響のソリスト達の妙技も光っていて、全体の完成度を際立たせた。「3つのダンス・エピソード」で、ごきげんでジャジーなソロを聴かせたEsクラの女性の歌なんてとりわけ絶品だった!
上品な演奏に終始するだけではない。「シンフォニック・ダンス」ではウィットに富んだ鮮やかな立ち回りを聴かせ、「マンボ」の炸裂した勢いとスピード感などは胸がすく鮮やかさ。あくまでスマートなフォームは崩さず、そのなかでビシッと決めるのが一層かっこよさを引き立てる。団員の「マンボッ!」のかけ声も絶叫で、見ていても楽しい。スラットキンはここで聴衆にもかけ声を求めてきたが、セレブが多いN響のサントリー定期で「マンボーッ!」の大唱和が起きるなんて無理… もう一度チャンスがあれば僕一人でも叫んだんだけどなー。
後半はマーラーの第4シンフォニー。ここでもスラットキン/N響の演奏は繊細で滑らか。室内楽的な透明感と静謐さを持つこの作品をスマートに響かせ、優しくデリケートに歌わせ、洗練され、調和の取れた美しい世界を構築した。
スラットキンは、エモーショナルな抑揚や濃淡を徒らにつけることはせず、節度を保ちつつ深い情感を柔らかくにじませる。最後は夕暮れの風景のような静けさの中に明日への希望を託して曲が閉じられた。ソプラノの安井さんは、こうした今夜の演奏によくフィットする上品で柔らかな歌唱を聴かせた。
巨大なシンフォニーが並ぶなかで、小規模で珠玉の輝きを持ち、「大いなる喜びへの賛歌」という呼び名もあるこの曲は、マーラーの交響曲のなかでもとりわけ好きな作品なのだが、今夜配られた「フィルハーモニー」に記された村井翔氏の解説によれば、この交響曲は、終楽章で使われている歌詞のなかの、天使たちがイエス(子羊)を殺して食卓に乗せることが暗示された冒涜的な部分をゴールに据えて、全ての楽章が書かれた「パロディー交響曲」だという。これを読んでしまうと、この音楽に抱いていたイメージを変えて聴くべきなのかも知れないが、今夜の「第4」は、そんな毒々しさとは無縁の美しい演奏だった。
レナード・スラットキン指揮 NHK交響楽団《2012年1月Bプロ》2012.1.19 サントリーホール
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《2016年4月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. バーンスタイン/キャンディード序曲
2. バーンスタイン/「オン・ザ・タウン」―「3つのダンス・エピソード」
3.バーンスタイン/「ウェストサイド物語」―「シンフォニック・ダンス」
4.マーラー/交響曲第4番ト長調
S:安井陽子
4年振りにスラットキンが登場した。前半にバーンスタインの作品を3つ並べる珍しいプログラミング。アメリカが誇る名匠が指揮するバーンスタイン作品、ということで、型破りでぶっ飛んだ演奏をイメージしていたのに反し、颯爽としたなかに繊細で、ソフトな感触が光る演奏だった。世俗性よりもロイヤリティーに長けていて、キャンディードなんて古典の名曲の風貌さえ感じさせた。
磨きのかかった美しい音色、音の運びはデフォルメされることなく滑らか、そのなかで効かせるパンチは、名投手の会心のストレートの一投といったところ。N響のソリスト達の妙技も光っていて、全体の完成度を際立たせた。「3つのダンス・エピソード」で、ごきげんでジャジーなソロを聴かせたEsクラの女性の歌なんてとりわけ絶品だった!
上品な演奏に終始するだけではない。「シンフォニック・ダンス」ではウィットに富んだ鮮やかな立ち回りを聴かせ、「マンボ」の炸裂した勢いとスピード感などは胸がすく鮮やかさ。あくまでスマートなフォームは崩さず、そのなかでビシッと決めるのが一層かっこよさを引き立てる。団員の「マンボッ!」のかけ声も絶叫で、見ていても楽しい。スラットキンはここで聴衆にもかけ声を求めてきたが、セレブが多いN響のサントリー定期で「マンボーッ!」の大唱和が起きるなんて無理… もう一度チャンスがあれば僕一人でも叫んだんだけどなー。
後半はマーラーの第4シンフォニー。ここでもスラットキン/N響の演奏は繊細で滑らか。室内楽的な透明感と静謐さを持つこの作品をスマートに響かせ、優しくデリケートに歌わせ、洗練され、調和の取れた美しい世界を構築した。
スラットキンは、エモーショナルな抑揚や濃淡を徒らにつけることはせず、節度を保ちつつ深い情感を柔らかくにじませる。最後は夕暮れの風景のような静けさの中に明日への希望を託して曲が閉じられた。ソプラノの安井さんは、こうした今夜の演奏によくフィットする上品で柔らかな歌唱を聴かせた。
巨大なシンフォニーが並ぶなかで、小規模で珠玉の輝きを持ち、「大いなる喜びへの賛歌」という呼び名もあるこの曲は、マーラーの交響曲のなかでもとりわけ好きな作品なのだが、今夜配られた「フィルハーモニー」に記された村井翔氏の解説によれば、この交響曲は、終楽章で使われている歌詞のなかの、天使たちがイエス(子羊)を殺して食卓に乗せることが暗示された冒涜的な部分をゴールに据えて、全ての楽章が書かれた「パロディー交響曲」だという。これを読んでしまうと、この音楽に抱いていたイメージを変えて聴くべきなのかも知れないが、今夜の「第4」は、そんな毒々しさとは無縁の美しい演奏だった。
レナード・スラットキン指揮 NHK交響楽団《2012年1月Bプロ》2012.1.19 サントリーホール
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