9月1日(土)蓮の会ホールオペラ第六回公演
【演目】
プッチーニ/「ボエーム」全4幕
【配役】
ミミ:杉下友希子/ムゼッタ:中前美和子/ロドルフォ:小林 浩/マルチェッロ:旭 潔/ショナール:堀内士功/コルリーネ:窪川真也/ベオア&アルチンドーロ:内田勝也 他
ピアノ:大賀美子
毎年楽しみにしている「蓮の会ホールオペラ」。いつも良質の公演で古今の名作オペラの魅力を伝えてくれるが、今回の演目はプッチーニの不朽の名作「ボエーム」。うんざりするほど残暑厳しいこの時期だが、しんしんと底冷えのする真冬のパリの下町の一角で繰り広げられる、哀しくも心暖まるこのオペラの空気がとてもよく伝わってきた。
おなじみの顔ぶれの多くが揃った歌い手達はみんなよく健闘していたが、とりわけこのオペラの随所に散りばめられた美しいデュオや陽気な四重唱、異なるキャラクターがぶつかり合う二組のデュオによる四重唱等々、声によるアンサンブルの呼吸がどれもしっくりと決まり、響きも調和し(場合によっては対峙し合い)、魅力・躍動感溢れるシーンが次々と展開した。有名なアリアだけに注目が集まるのではなく、こうしてアンサンブルがつながっていくことで、1つのオペラ作品としての魅力を見渡すことができた。筋書きからちょっと脱線したエピソードのようなシーンも、素晴らしいアンサンブルが功を奏して活き活きと浮かび上がり、これが本筋への粋なスパイスとして活き、哀しい物語になかに、おかしみやワクワク感が織り込まれていた。
ソロの方にも注目すると、やはり主宰者の旭さんが歌い演じたマルチェッロが、存在感といい、キャラクター作りといい素晴らしかった。若作りしてステージに上がったということだが、実際ステージでは若者の熱気がムンムンと伝わってきた。ロドルフォの友人達の中で、このマルチェッロが最も重要な役割を果たしていることがとてもよくわかった。この相手役、ムゼッタを歌った中前さんは、去年のとても良かった蝶々夫人を更に上回る出来栄えだった。艶のある声の魅力、お色気ある歌いまわし、立ち居振る舞い、どれもがムゼッタに相応しく、オーラを放っていた。
ミミを歌った杉下さんは、純粋で健気なミミを聴かせた。以前、夏木マリが女性達と対談しながら、オペラの中の女のしたたかな生き様をおもしろおかしく紹介するNHKの「愛の劇場」という番組で、ミミのしたたかな策略(男の部屋に一人入ってきたのも、蝋燭を消したのも、「自分はミサにはあまり行かない」と放言したのも下心から、という解説が頭にこびりついていたのだが、今夜のミミは清純派のミミだった。とりわけ終幕のラストシーンが心に訴えかけてきた。ミミのお相手は、おなじみの小林さんの熱演、熱唱でドラマを大いに盛り上げていた。
大賀さんのピアノを聴けるのも、このホールオペラの楽しみのひとつ。大賀さんのピアノには大きなドラマがあると同時に、細やかな情景描写や心理描写も見事で、ピアノに聴き入ってしまうこともしばしば。終幕、ミミが弱っていくところの描写がリアルで、ここからロドルフォとの愛の語らい、フィナーレの悲劇のクライマックスまで、片時も緊張感を途切れさせることなく、聴衆をドラマの世界へと引きずり込んでいった。このピアノの最後の音が鳴り終わるまで拍手は待ってもらいたかったな・・・
昨夜は、初めて官邸前の反原発デモに参加した興奮が冷めやらず、なかなか寝付けなくて寝不足状態だったが、素晴らしい公演のおかげで最初から最後までずっと覚醒してオペラに没頭することができた。来年は「椿姫」、これも聴き逃せない。
【演目】
プッチーニ/「ボエーム」全4幕

【配役】
ミミ:杉下友希子/ムゼッタ:中前美和子/ロドルフォ:小林 浩/マルチェッロ:旭 潔/ショナール:堀内士功/コルリーネ:窪川真也/ベオア&アルチンドーロ:内田勝也 他
ピアノ:大賀美子
毎年楽しみにしている「蓮の会ホールオペラ」。いつも良質の公演で古今の名作オペラの魅力を伝えてくれるが、今回の演目はプッチーニの不朽の名作「ボエーム」。うんざりするほど残暑厳しいこの時期だが、しんしんと底冷えのする真冬のパリの下町の一角で繰り広げられる、哀しくも心暖まるこのオペラの空気がとてもよく伝わってきた。
おなじみの顔ぶれの多くが揃った歌い手達はみんなよく健闘していたが、とりわけこのオペラの随所に散りばめられた美しいデュオや陽気な四重唱、異なるキャラクターがぶつかり合う二組のデュオによる四重唱等々、声によるアンサンブルの呼吸がどれもしっくりと決まり、響きも調和し(場合によっては対峙し合い)、魅力・躍動感溢れるシーンが次々と展開した。有名なアリアだけに注目が集まるのではなく、こうしてアンサンブルがつながっていくことで、1つのオペラ作品としての魅力を見渡すことができた。筋書きからちょっと脱線したエピソードのようなシーンも、素晴らしいアンサンブルが功を奏して活き活きと浮かび上がり、これが本筋への粋なスパイスとして活き、哀しい物語になかに、おかしみやワクワク感が織り込まれていた。
ソロの方にも注目すると、やはり主宰者の旭さんが歌い演じたマルチェッロが、存在感といい、キャラクター作りといい素晴らしかった。若作りしてステージに上がったということだが、実際ステージでは若者の熱気がムンムンと伝わってきた。ロドルフォの友人達の中で、このマルチェッロが最も重要な役割を果たしていることがとてもよくわかった。この相手役、ムゼッタを歌った中前さんは、去年のとても良かった蝶々夫人を更に上回る出来栄えだった。艶のある声の魅力、お色気ある歌いまわし、立ち居振る舞い、どれもがムゼッタに相応しく、オーラを放っていた。
ミミを歌った杉下さんは、純粋で健気なミミを聴かせた。以前、夏木マリが女性達と対談しながら、オペラの中の女のしたたかな生き様をおもしろおかしく紹介するNHKの「愛の劇場」という番組で、ミミのしたたかな策略(男の部屋に一人入ってきたのも、蝋燭を消したのも、「自分はミサにはあまり行かない」と放言したのも下心から、という解説が頭にこびりついていたのだが、今夜のミミは清純派のミミだった。とりわけ終幕のラストシーンが心に訴えかけてきた。ミミのお相手は、おなじみの小林さんの熱演、熱唱でドラマを大いに盛り上げていた。
大賀さんのピアノを聴けるのも、このホールオペラの楽しみのひとつ。大賀さんのピアノには大きなドラマがあると同時に、細やかな情景描写や心理描写も見事で、ピアノに聴き入ってしまうこともしばしば。終幕、ミミが弱っていくところの描写がリアルで、ここからロドルフォとの愛の語らい、フィナーレの悲劇のクライマックスまで、片時も緊張感を途切れさせることなく、聴衆をドラマの世界へと引きずり込んでいった。このピアノの最後の音が鳴り終わるまで拍手は待ってもらいたかったな・・・
昨夜は、初めて官邸前の反原発デモに参加した興奮が冷めやらず、なかなか寝付けなくて寝不足状態だったが、素晴らしい公演のおかげで最初から最後までずっと覚醒してオペラに没頭することができた。来年は「椿姫」、これも聴き逃せない。