12月19日(火)
小林沙羅 ソプラノリサイタル
東京オペラシティ リサイタルシリーズ B→C ビートゥーシー[197]
東京オペラシティリサイタルホール
【曲目】
♪ 藤倉 大/きいて(委嘱初演)
♪ バッハ/カンタータ第36番「喜びのうちに舞い上がれ」BWV36から「押し殺された、か細い声でも」
♪ モーツァルト/すみれ K476
♪ プフィッツナー/7つの歌Op.2~「だから春の空はこれほど青いのか」
♪ プフィッツナー/5つの歌Op.11~「母なるウェヌス」
♪ 山田耕筰/風に寄せてうたへる春のうた
♪ シェーンベルク/8つの歌曲Op.6~「誘惑」
♪ ライター/私は歌
♪ ♪ ♪
♪ 中村裕美/りんごへの固執
♪ シュテルツェル(バッハ伝)/御身がともにあるならば BWV508
♪ ベートーヴェン/うずらの鳴き声 WoO.129
♪ ヨーゼフ・マルクス/マリアの歌
♪ ヨーゼフ・マルクス/森の幸せ
♪ ヨーゼフ・マルクス/ノクターン
♪ 池辺晋一郎/歌
♪ 藤倉 大/ラヴ エキサープト
♪ 藤倉 大/夜明けのパッサカリア(委嘱初演)
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ第120番「神よ、我らは静かにあなたを讃え」~「救いと祝福が」
♪ 小林沙羅/えがおの花
【演奏】
S:小林沙羅/Vn:川久保賜紀/Pf:鈴木優人
人気も実力も兼ね備えたソプラノ歌手、小林沙羅が、オペラシティの「B→C」シリーズに登場した。チケットは完売。一緒に来た奥さんが会場に入るなり「男性率おお!」。見回すと、確かに8割がた男で、おじさんが多い。小林沙羅はおじさんキラーかな。
ステージに独り登場した沙羅さんは、真っ赤な口紅をつけてメイクばっちり。ヘアスタイルやコスチュームも個性的で、舞台女優みたい。ステージに登場するや、口元に指を立てて注目を集め、「きいてきいて」と聴衆にささやきかけ、その声は次第に大きく、アグレッシブに膨らんで行った。勿論これは最初の曲、藤倉大の「きいて」の初演のわけだが、この曲に限らず、小林沙羅が「私の声を聞いて!私の歌を聞いて!」と常に聴き手に語りかけ、魅了したリサイタルとなった。
今夜の沙羅さんは、これまでコンサートやオペラで何度か接したときの印象とはビックリするほど異なる面を見せた。これまでは、磨かれた美声で、端正で伸びやかに、瑞々しい歌を上品に聴かせる歌手という印象だった。それが今夜は、濃厚でアグレッシブに語りかけ、歌いかけてきた。
「B→C」のコンサートシリーズは「バッハからコンテンポラリーへ」というコンセプトでプログラミングされるので、アーティストは、バッハから現代作品まで、それぞれの様式感を重んじたアプローチで臨んでくることが多い。ところが沙羅さんは、バッハの宗教曲であろうと、現代詩に付曲した最新の委嘱作であろうと、作品の様式よりも「小林沙羅」を前面に出す。主人公は常に小林沙羅で、歌いまわしと持ち前の美声を自由自在にコントロールして、オペラのプリマ・ドンナのように、お芝居のヒロインのように「私の歌を聴いて!」と迫ってハートを捕まえる。
その声の魅力をどう言い表せばいいだろうか。食べごろの真っ赤に熟した瑞々しい大きなイチゴ!甘~くて、ほんのり酸っぱくて、芳香をふりまいてセクシー。最前列のおじさんたちがかぶりつきになるのもよくわかるなぁ。それでいて、締めるところはしっかり締め、言葉だって日本語でもドイツ語でもきっちりと聴こえてくる。これぞ名女優!という感じ。
そのなかでも最も印象に残ったのは、小林さんが活動しているVOICE SPACEというグループで発表したという谷川俊太郎の詩に中村裕美が作曲した「りんごへの固執」。これは歌とヴァイオリンのパフォーマンスで、川久保さんの本気とも冗談とも取れないヴァイオリンと、あらゆる表現を試みつつ軽妙なやり取りを繰り広げ、熱くて不思議な世界に引き込んだ。
小林沙羅の魅力を味わい尽くしたコンサートだったが、ひとつだけ… バッハはどんなことをやっても、「バッハ」としての魅力が失われることはない普遍的な存在、というのが僕の持論ではあるが、今夜演奏した、偽作も含めれば3曲のバッハは、あそこまで「小林沙羅」を前面に出さなくても良かったかな。曲目によって表現方法を変えた鈴木優人さんのピアノは、バッハでは端正に綴っていて、そこでは沙羅さんもそれに合った端正な歌を聴かせて欲しかったが、これも含めて今夜は「小林沙羅の世界」を堪能することとなった。
バッハ・コレギウム・ジャパン:歌劇「ポッペアの戴冠」 ~2017.11.23 東京オペラシティコンサートホール~
CDリリースのお知らせ
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♪ プフィッツナー/5つの歌Op.11~「母なるウェヌス」
♪ 山田耕筰/風に寄せてうたへる春のうた
♪ シェーンベルク/8つの歌曲Op.6~「誘惑」
♪ ライター/私は歌
♪ 中村裕美/りんごへの固執
♪ シュテルツェル(バッハ伝)/御身がともにあるならば BWV508
♪ ベートーヴェン/うずらの鳴き声 WoO.129
♪ ヨーゼフ・マルクス/マリアの歌
♪ ヨーゼフ・マルクス/森の幸せ
♪ ヨーゼフ・マルクス/ノクターン
♪ 池辺晋一郎/歌
♪ 藤倉 大/ラヴ エキサープト
♪ 藤倉 大/夜明けのパッサカリア(委嘱初演)
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ第120番「神よ、我らは静かにあなたを讃え」~「救いと祝福が」
♪ 小林沙羅/えがおの花
【演奏】
S:小林沙羅/Vn:川久保賜紀/Pf:鈴木優人
人気も実力も兼ね備えたソプラノ歌手、小林沙羅が、オペラシティの「B→C」シリーズに登場した。チケットは完売。一緒に来た奥さんが会場に入るなり「男性率おお!」。見回すと、確かに8割がた男で、おじさんが多い。小林沙羅はおじさんキラーかな。
ステージに独り登場した沙羅さんは、真っ赤な口紅をつけてメイクばっちり。ヘアスタイルやコスチュームも個性的で、舞台女優みたい。ステージに登場するや、口元に指を立てて注目を集め、「きいてきいて」と聴衆にささやきかけ、その声は次第に大きく、アグレッシブに膨らんで行った。勿論これは最初の曲、藤倉大の「きいて」の初演のわけだが、この曲に限らず、小林沙羅が「私の声を聞いて!私の歌を聞いて!」と常に聴き手に語りかけ、魅了したリサイタルとなった。
今夜の沙羅さんは、これまでコンサートやオペラで何度か接したときの印象とはビックリするほど異なる面を見せた。これまでは、磨かれた美声で、端正で伸びやかに、瑞々しい歌を上品に聴かせる歌手という印象だった。それが今夜は、濃厚でアグレッシブに語りかけ、歌いかけてきた。
「B→C」のコンサートシリーズは「バッハからコンテンポラリーへ」というコンセプトでプログラミングされるので、アーティストは、バッハから現代作品まで、それぞれの様式感を重んじたアプローチで臨んでくることが多い。ところが沙羅さんは、バッハの宗教曲であろうと、現代詩に付曲した最新の委嘱作であろうと、作品の様式よりも「小林沙羅」を前面に出す。主人公は常に小林沙羅で、歌いまわしと持ち前の美声を自由自在にコントロールして、オペラのプリマ・ドンナのように、お芝居のヒロインのように「私の歌を聴いて!」と迫ってハートを捕まえる。
その声の魅力をどう言い表せばいいだろうか。食べごろの真っ赤に熟した瑞々しい大きなイチゴ!甘~くて、ほんのり酸っぱくて、芳香をふりまいてセクシー。最前列のおじさんたちがかぶりつきになるのもよくわかるなぁ。それでいて、締めるところはしっかり締め、言葉だって日本語でもドイツ語でもきっちりと聴こえてくる。これぞ名女優!という感じ。
そのなかでも最も印象に残ったのは、小林さんが活動しているVOICE SPACEというグループで発表したという谷川俊太郎の詩に中村裕美が作曲した「りんごへの固執」。これは歌とヴァイオリンのパフォーマンスで、川久保さんの本気とも冗談とも取れないヴァイオリンと、あらゆる表現を試みつつ軽妙なやり取りを繰り広げ、熱くて不思議な世界に引き込んだ。
小林沙羅の魅力を味わい尽くしたコンサートだったが、ひとつだけ… バッハはどんなことをやっても、「バッハ」としての魅力が失われることはない普遍的な存在、というのが僕の持論ではあるが、今夜演奏した、偽作も含めれば3曲のバッハは、あそこまで「小林沙羅」を前面に出さなくても良かったかな。曲目によって表現方法を変えた鈴木優人さんのピアノは、バッハでは端正に綴っていて、そこでは沙羅さんもそれに合った端正な歌を聴かせて欲しかったが、これも含めて今夜は「小林沙羅の世界」を堪能することとなった。
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