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第39回こどもたちへ ~28人の作曲家によるピアノコンサート~

2024年09月03日 | pocknのコンサート感想録2024
9月1日(日)第39回 こどもたちへ -JFCキッズBOXコンサート-
~ 28人の作曲家によるピアノコンサート"楽器"~
紀尾井ホール

《第1部》
♪ 木幡由美子「春風のくちぶえ」
♪ 愛澤伯友「MIYABI芝祐靖氏に」 Pf:大出悠生
♪ 渡部賢士「時を打つ鐘」 
♪ 望月たけ美「ヴィオロンチェロから聴いたおはなし」 
♪ 武野晴久「シタール」 Pf:五島大輔
♪ 都平有美「マリンバ・リンバ」 Pf:小林美結
♪ 吉田峰明「ピアノが好き」 Pf:加藤義家
♪ 山本準「秋の譜(箏によせて)」 Pf:奥貫葉
[連弾]
♪ 歳森今日子「夜空の竪琴」 primo:伴梨沙子
♪ 鈴木豊乃「ことあそび」 primo:田島寛菜
♪ 大政直人「トロピカル・フルート」 primo:樋口桜和
♪ 高橋由紀「ハープの丘で」 primo:天貝優里
♪ 喜久邦博「鈴の音とともに」 primo:鈴木祥子

《第2部》
♪ 森好美「魔法のはこ」 Pf:森綺空
♪ 森谷光代「古都の桜、琴の音」 
♪ 小森俊明「古風なリゴドン(クラヴサン弾き)」 
♪ 井元透馬「ラ・ラ・ラ!トライアングル」 Pf:松﨑風香
♪ 渡邊宏章「雨のアダージョ」 
♪ 岡本由利子「フルート姉妹とチェロくん」 Pf:西村麻央
♪ 三原安美子「ゆうれいやしきのオルガン奏者」 
♪ 木下大輔「教授のピアノ」 Pf:羽田隆音
♪ 加藤由美子「いろんな楽器でワイワイワイ」 
[連弾]
♪ 田丸彩和子「筝の調べに花びら舞う」 Pf:中田千晴、中田凪咲
♪ 松尾賢志郎「アサガオのピアノ」 primo:山田大木
♪ 竹内淳「もっきんのソラミミ」 primo:榊原莉世
♪ 可知奈尾子「街中のストリート・オルガン」 primo:堀尾ことみ
♪ 久行敏彦「オルフェウスのたてごと」 Pf:髙島由唯、佐藤百夏 

日本作曲家協議会主催のコンサート「こどもたちへ」を2年ぶりに聴いた。長年司会を務めていた朝岡聡氏に代わり山田美也子氏の司会進行で、出演者へのインタビューを交えながら27曲の子供のための新しいピアノ作品が披露された(台風の影響で出演出来なかった方の1作品がカットされた)。

毎回異なるテーマが与えられ、それに沿って小さな子どもでも弾ける平易で親しみやすいピアノ作品を募集しているこの企画、今回のテーマは「楽器」。ピアノで「楽器」を表現するというのはなかなか難しそう。それもあってか、選ばれた作品は鍵盤楽器や多弦楽器など、複数の声部を同時に演奏することが容易な楽器を題材にしたものが多かった。それでも、取り上げられた楽器の明確なイメージを曲から感じ取ることは難しかった。

一方で、それぞれの作品を純粋な音楽として捉えれば、魅力的な曲が多かった。親しみを感じ、夢があり、情景が目に浮かぶ作品はどれもポジティブなメッセージを携えていて、平易なメロディーは聴いたあとも心の中で鳴り続けている。そうした好印象は、作品自体からもたらされると同時に、作曲者に代わって、或いは連弾では作曲者と共に演奏に加わった子どもたちの演奏の成果だったとも云えよう。小学校3年生から中学3年生までの子供たちの演奏は技術的にも優れ、美しい音色と流麗なタッチを聴かせ、感性豊かで、作品への純粋な共感が伝わってきた。インタビューで作曲者が子供の演奏に一様に「大満足」とコメントしていたのも頷ける。

選ばれた作品は、どれもが明確な調性とリズムを持つ、古典的な形式に則ったものだったが、既成のものに捉われない柔軟な心を持つ子供たちであれば、中には大人にとっては奇抜だったり難解と思えるような作品があってもいいのではとも思う。小さな子供たちの描く絵のなかに、驚くような感性やものの見方を感じるものが少なくないことからも、そんな作品の出現と、それに向き合う子供たちの演奏も聴いてみたい。前回同様、特に面白いと思った作品、印象に残った作品についていくつかコメントしたい。

・ 渡部賢士さん作曲「時を打つ鐘」異国に降り立った時の清々しい気分、鳴り響く鐘の音を聴いたワクワク感が、澄んだ空気と共に伝わってきた。
・望月たけ美さん作曲「ヴィオロンチェロから聴いたおはなし」みんなで楽しく合奏しているような曲は躍動感に溢れ、歌に溢れ、夢いっぱいの物語を聴いている気分になった。
・歳森今日子さん作曲「夜空の竪琴」竪琴をつま弾いて夢やメルヘンを語り聴かせるイメージ。繰り返される反復進行がファンタジックで、タイトルの「夜空」の情景が伝わってきた。
・大政直人さん作曲「トロピカル・フルート」心地よい浮遊感に揺られながらうたた寝気分に浸れる曲。フルートの調べが、ブレスの息遣いも伝わって優しく耳に届いてきた。
・岡本由利子さん作曲「フルート姉妹とチェロくん」「フルート姉妹」と「チェロくん」の穏やかな対話のやりとりが聴こえてくる、優しく詩情に溢れた心温まる作品。
・木下大輔さん作曲「教授のピアノ」どこからか心地よい風が吹いてくるような、気まぐれでインスピレーションに富み、癒しをもたらしてくれる作品。
・松尾賢志郎さん作曲「アサガオのピアノ」劇伴のようなドラマ性があり、映画のワンシーンが目に浮かぶよう。余韻の味わい深さも印象的だった。
・竹内淳さん作曲「もっきんのソラミミ」大勢で合奏している楽しいシーンが浮かんできた。同音型の反復がそんな楽し気な気分を高めていた。
・久行敏彦さん作曲「オルフェウスのたてごと」高音域を惜しみなく使い、キラキラした華やかでメルヘンチックな音楽。流麗で鮮やかな調べを奏でた2人のピアニストにも拍手!

第37回こどもたちへ ~2022.4.3 紀尾井ホール

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