1月16日(日)小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
~第344回名曲コンサート~
サントリーホール
【曲目】
1.ヨハン・シュトラウスⅡ/美しく青きドナウ
2.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
3.ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
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【アンコール】
ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
久々のコバケン/日フィルを夫婦で聴いた。コバケン節はやや大人しめだったが、やはり濃厚で熱い演奏を届けてくれた。最初の「美しく青きドナウ」は極端に粘ったり、情熱的になることなく、明るく、柔らかなニュアンスで終始し、オープニングにふさわしい清々しい演奏だった。音楽が盛り上がった最後のほう、まだ続くと思っていたところが、いきなり聴いたことのない終結部につながって曲を閉じたが、こんな版があるのは知らなかった。オープニングということで簡潔に閉じたかったのだろうか。
続く「運命」、冒頭の弦が少々不鮮明に聴こえたが、演奏を聴き進むと、これは「粘り」を大切にするアプローチの現れという感じもした。コバケンはこの曲に、切れ味の良さや烈しいコントラストよりも、重厚感や粘り、濃密な歌を求めているように感じた。しかしその粘りや濃密さは全開!というほどではない。また、フォルテで聴き慣れているところを弱音でやったり、いつもは聞こえてこないパートの動きが浮かび上がったりするのも、もうひとつその意図がわからないところもあり、この曲でコバケンに期待していた直球勝負の演奏は聴けなかった。
けれどオケは特に管楽器がよく、なかでもオーボエはピカイチ!第1楽章の再現部の後に出てくるカデンツァ風のフレーズは、引き延ばされた1小節で深遠な世界観を表すほど。その後はオーボエが普段よりずっと気になって耳を傾けていたが、繊細さと豊かさを備え、音色も美しい。プログラムにメンバー表が出ていなかったが、日フィルのサイトのメンバー表、オーボエの最初に出ている杉原由希子さんだろうか。
「運命」では不完全燃焼の観があったコバケン/日フィルだが、後半の「新世界」では、じっくりと熟成した熱い音楽を奏でた。「運命」と同様、濃密で歌を大切にしたアプローチが、音楽としてもエスプレッシーヴォが似合う歌に溢れた「新世界」で、より効果を発揮したようだ。節度のある豊かな表情づけで、奥行きと色彩感、華やかさを醸し出し、エネルギーにも満ちた充実した響きをホールいっぱいに満たした。なかでもよかったのが第2楽章。コールアングレがしみじみとした音色で、細やかなニュアンスを出していたのもよかったし、切々と訴えかけてくる中間部が深く熟成した、香り高さを湛えていて惹き付けられた。
コールアングレ、オーボエ、ホルン、トランペット等々管楽器の演奏に「名手」を感じるシーンも多々あり、弦の豊かな響きもこの音楽にとても似合っていた。コバケンは日フィルから、自分の求める音を聴くことができたに違いない。終演後の挨拶で、「白眉の演奏」と称賛していた。
それにしても、コバケンさんという人はどこまでもステージマナーが謙虚な指揮者だ。演奏するとき以外には絶対に指揮台に上がらないのはいつものスタイルだが、前半も後半も、コンマスと一緒にステージに出てくるのは新たな謙虚さの表現。演奏が終わるとそれぞれのプレイヤーのところまで歩み寄り、握手して、パート毎に立たせ、自らも拍手を送る。ヴァイオリンをファーストとセカンド別々に立たせる念の入れようは、学生オケの演奏会のような内輪のシーンにも感じ、ちょっとやり過ぎでは、とも思うが、実際に称賛に値する演奏を聴けたことは確か。コバケンの「熟成」を感じる演奏会でもあった。
~第344回名曲コンサート~
サントリーホール
【曲目】
1.ヨハン・シュトラウスⅡ/美しく青きドナウ
2.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
3.ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
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【アンコール】
ブラームス/ハンガリー舞曲第5番
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久々のコバケン/日フィルを夫婦で聴いた。コバケン節はやや大人しめだったが、やはり濃厚で熱い演奏を届けてくれた。最初の「美しく青きドナウ」は極端に粘ったり、情熱的になることなく、明るく、柔らかなニュアンスで終始し、オープニングにふさわしい清々しい演奏だった。音楽が盛り上がった最後のほう、まだ続くと思っていたところが、いきなり聴いたことのない終結部につながって曲を閉じたが、こんな版があるのは知らなかった。オープニングということで簡潔に閉じたかったのだろうか。
続く「運命」、冒頭の弦が少々不鮮明に聴こえたが、演奏を聴き進むと、これは「粘り」を大切にするアプローチの現れという感じもした。コバケンはこの曲に、切れ味の良さや烈しいコントラストよりも、重厚感や粘り、濃密な歌を求めているように感じた。しかしその粘りや濃密さは全開!というほどではない。また、フォルテで聴き慣れているところを弱音でやったり、いつもは聞こえてこないパートの動きが浮かび上がったりするのも、もうひとつその意図がわからないところもあり、この曲でコバケンに期待していた直球勝負の演奏は聴けなかった。
けれどオケは特に管楽器がよく、なかでもオーボエはピカイチ!第1楽章の再現部の後に出てくるカデンツァ風のフレーズは、引き延ばされた1小節で深遠な世界観を表すほど。その後はオーボエが普段よりずっと気になって耳を傾けていたが、繊細さと豊かさを備え、音色も美しい。プログラムにメンバー表が出ていなかったが、日フィルのサイトのメンバー表、オーボエの最初に出ている杉原由希子さんだろうか。
「運命」では不完全燃焼の観があったコバケン/日フィルだが、後半の「新世界」では、じっくりと熟成した熱い音楽を奏でた。「運命」と同様、濃密で歌を大切にしたアプローチが、音楽としてもエスプレッシーヴォが似合う歌に溢れた「新世界」で、より効果を発揮したようだ。節度のある豊かな表情づけで、奥行きと色彩感、華やかさを醸し出し、エネルギーにも満ちた充実した響きをホールいっぱいに満たした。なかでもよかったのが第2楽章。コールアングレがしみじみとした音色で、細やかなニュアンスを出していたのもよかったし、切々と訴えかけてくる中間部が深く熟成した、香り高さを湛えていて惹き付けられた。
コールアングレ、オーボエ、ホルン、トランペット等々管楽器の演奏に「名手」を感じるシーンも多々あり、弦の豊かな響きもこの音楽にとても似合っていた。コバケンは日フィルから、自分の求める音を聴くことができたに違いない。終演後の挨拶で、「白眉の演奏」と称賛していた。
それにしても、コバケンさんという人はどこまでもステージマナーが謙虚な指揮者だ。演奏するとき以外には絶対に指揮台に上がらないのはいつものスタイルだが、前半も後半も、コンマスと一緒にステージに出てくるのは新たな謙虚さの表現。演奏が終わるとそれぞれのプレイヤーのところまで歩み寄り、握手して、パート毎に立たせ、自らも拍手を送る。ヴァイオリンをファーストとセカンド別々に立たせる念の入れようは、学生オケの演奏会のような内輪のシーンにも感じ、ちょっとやり過ぎでは、とも思うが、実際に称賛に値する演奏を聴けたことは確か。コバケンの「熟成」を感じる演奏会でもあった。