2月19日(木)下野竜也 指揮 NHK交響楽団
《2月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/序曲「献堂式」Op.124
2.ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番ハ短調Op.35
Pf:スティーヴン・オズボーン/Tp:関山幸弘
3.フランク/交響曲ニ短調
昨日は都響の演奏会とダブルブッキングしてしまったため2日目に振り替えたN響B定期。下野竜也の指揮で聴くのは2007年12月の定期以来2度目だが、「とても良い音を鳴らす」という前回の印象を改めて認識した。
最初のベートーベンの序曲は滅多に演奏されないし、プログラムの解説には「やっつけ仕事の駄作」みたいに書かれてしまっていたが、そんな曲を下野が敢えて選んだ理由が納得できてしまう素晴らしい出来だった。響きの美しさ、整った音楽の佇まい、各声部は優雅に滑らかに、そして朗々と歌い、聴いていると幸せな気分になる。後半、ボリフォニックに畳み掛けながら築かれるクライマックスも周到に準備された設計図通りに運んで行く感じがして頼もしい。
響きの良いサントリーホールが更に熟成した音を聞かせるヨーロッパの歴史ある世界的名ホールの仲間入りしたように感じるほどにN響のサウンドが柔らかく、また艶やかに聴こえた。音の毛羽立ちやザラつきを丹念に削って磨き、最上の条件でブレンドした時に生まれるような滑らかな感触の極上の響きだ。
次のショスタコでは主役はもちろんスティーヴン・オズボーンとN響の名トランペット奏者・関山幸弘さん。オズボーンは洗練され、透明感のあるタッチでスマートに、そして鮮やかに活き活きと音を繋いで行く。そこへ入る関山さんのトランペットは、どちらかと言えばクールなピアノに対して熱いハートを感じる音で語りかけてくる。その対比が演奏に幅と奥行きと温かみを加えていた。中でも心に響いたのは、繊細で雄弁なN響の弦楽合奏に乗って演奏された第2楽章。終楽章終盤のショスタコらしい盛り上がりもバッチリ決まって喝采を浴びた。関山さん、お見事!
後半はフランクのシンフォニー。この手の音楽には下野はとりわけ力を発揮するのでは、と期待して臨んだ。実際、期待通りにN響は名サウンドを鳴らし、泰然自若とした大きな呼吸で滑らかに歌い、輝かしい盛り上がりを見せた。しかし、これは適切な表現ではないのだろうが、この演奏からは「出来過ぎた完成品」というイメージが浮かんでしまった。出来過ぎていて、完成されていれば悪いはずはないのだが、ライブならではのスリリングな要素や高揚感がもっと欲しい。
N響はこの若い指揮者が表現しようと求めるものに真摯に向き合い、素晴らしいサウンドと歌で応えていたが、更に前のめりの高揚が引き出されればもっとすごい演奏になる、という余地が残る。何だか贅沢な注文かも知れないが、これだけのセンスと実力を持つ下野さんなら、更なる感動的な演奏をN響から引き出すことができるはず、と期待したい。
今夜は定期2日目ということで、恒例の花束セレモニーで下野さんが女性の楽員から花束を受けていたが、もう一人、ホルンの樋口さんにも花束が渡された。恐らくこの演奏会が最後のステージとなったのだろう。このところN響を長年支えてきたプレイヤー達が次々と引退して行くのは寂しいが、伝統を受け継いで確実に世代交代を成功させて欲しい。一旦鳴り止んだ拍手が、樋口さんがステージを去るときにまた沸き起こった。2日目の定期はこうしたセレモニーに立ち会えるのがいいし、何だか雰囲気も1日目より温かい気がする。
《2月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/序曲「献堂式」Op.124

2.ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番ハ短調Op.35

Pf:スティーヴン・オズボーン/Tp:関山幸弘
3.フランク/交響曲ニ短調
昨日は都響の演奏会とダブルブッキングしてしまったため2日目に振り替えたN響B定期。下野竜也の指揮で聴くのは2007年12月の定期以来2度目だが、「とても良い音を鳴らす」という前回の印象を改めて認識した。
最初のベートーベンの序曲は滅多に演奏されないし、プログラムの解説には「やっつけ仕事の駄作」みたいに書かれてしまっていたが、そんな曲を下野が敢えて選んだ理由が納得できてしまう素晴らしい出来だった。響きの美しさ、整った音楽の佇まい、各声部は優雅に滑らかに、そして朗々と歌い、聴いていると幸せな気分になる。後半、ボリフォニックに畳み掛けながら築かれるクライマックスも周到に準備された設計図通りに運んで行く感じがして頼もしい。
響きの良いサントリーホールが更に熟成した音を聞かせるヨーロッパの歴史ある世界的名ホールの仲間入りしたように感じるほどにN響のサウンドが柔らかく、また艶やかに聴こえた。音の毛羽立ちやザラつきを丹念に削って磨き、最上の条件でブレンドした時に生まれるような滑らかな感触の極上の響きだ。
次のショスタコでは主役はもちろんスティーヴン・オズボーンとN響の名トランペット奏者・関山幸弘さん。オズボーンは洗練され、透明感のあるタッチでスマートに、そして鮮やかに活き活きと音を繋いで行く。そこへ入る関山さんのトランペットは、どちらかと言えばクールなピアノに対して熱いハートを感じる音で語りかけてくる。その対比が演奏に幅と奥行きと温かみを加えていた。中でも心に響いたのは、繊細で雄弁なN響の弦楽合奏に乗って演奏された第2楽章。終楽章終盤のショスタコらしい盛り上がりもバッチリ決まって喝采を浴びた。関山さん、お見事!
後半はフランクのシンフォニー。この手の音楽には下野はとりわけ力を発揮するのでは、と期待して臨んだ。実際、期待通りにN響は名サウンドを鳴らし、泰然自若とした大きな呼吸で滑らかに歌い、輝かしい盛り上がりを見せた。しかし、これは適切な表現ではないのだろうが、この演奏からは「出来過ぎた完成品」というイメージが浮かんでしまった。出来過ぎていて、完成されていれば悪いはずはないのだが、ライブならではのスリリングな要素や高揚感がもっと欲しい。
N響はこの若い指揮者が表現しようと求めるものに真摯に向き合い、素晴らしいサウンドと歌で応えていたが、更に前のめりの高揚が引き出されればもっとすごい演奏になる、という余地が残る。何だか贅沢な注文かも知れないが、これだけのセンスと実力を持つ下野さんなら、更なる感動的な演奏をN響から引き出すことができるはず、と期待したい。
今夜は定期2日目ということで、恒例の花束セレモニーで下野さんが女性の楽員から花束を受けていたが、もう一人、ホルンの樋口さんにも花束が渡された。恐らくこの演奏会が最後のステージとなったのだろう。このところN響を長年支えてきたプレイヤー達が次々と引退して行くのは寂しいが、伝統を受け継いで確実に世代交代を成功させて欲しい。一旦鳴り止んだ拍手が、樋口さんがステージを去るときにまた沸き起こった。2日目の定期はこうしたセレモニーに立ち会えるのがいいし、何だか雰囲気も1日目より温かい気がする。
ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲は、ゾクゾクするような魅力ある演奏で感極まりましたが、フランクがすごいと思いながらも、どことなく物足りなかったような気がしたのを、pocknさんの記事を読ませていただいて納得致しました。
樋口さんもご卒業でいらっしゃるのですね。