
9月9日(日)
On va danser? ~バロックダンス部~

~第1ホール~
マレ/組曲第2番ト短調
カンプラ/フォルラーナ
クープラン/プレリュード―パッサカーユ
アントワーヌ・フォルクレ/ジャン=バティスト・フォルクレ/摂政《第3組曲》ビュイッォン《第5組曲》
リュリ/冥界の神々
ダングルベール/サラバンド
リュリ/ロワイヤル
ルベル/舞踏の様々
ルベル/コントルダンス
おなじみの藝祭公演で毎回楽しみにしているもののひとつがこのバロックダンス部の公演。演奏だけでなく、当時の舞踏譜に基づいて踊られるバロック時代の様々な踊りを観ることができるのは貴重だし、何より楽しい。このサークルは演奏も素晴らしくて、演奏が優雅なダンスを思わせ、それに合わせて軽やかなステップを踏んで披露されるダンスを観ていると、殺風景な大学の練習ホールで、昔のヨーロッパの貴族の館に居るような気分になれる。
今回の公演も、素敵な演奏と、お人形の踊りのような独特の動きで舞われるメヌエットやサラバント、ブレといったダンスに心が踊ったが、いつもよりダンスの出番が少なかったような気が… プログラムに「振り付けが素晴らしく、作品の人気を高め…」と紹介されているルベルの「舞踏の様々」という曲が演奏だけで踊りがなかったのも残念だった。音楽はいろいろな踊りの要素が次々と現れ、演奏もとても楽しめただけになお更… それに女性の衣装が今まではもっと本格的だったのが、今日はちょっとシンプルだったのはなぜ?
川口兄弟×ピアノデュオ
~藝祭!!スペシャル・ライヴ!!~


~第6ホール~
ピアソラ/ミケランジェロ70
星に願いを
伊藤康英/琉球幻想曲
ラフマニノフ/第2組曲Op.17~タランテラ
虹と雪のバラード
葉加瀬太郎/情熱大陸
ピアソラ/ヴィオレンタンゴ
ピアソラ/リベルタンゴ
川口晃祐さん/川口智輝さんの兄弟のピアノデュオは既に全国で活躍しているそうで、CDやDVDも市販されている人気アーティスト。「藝祭に相応しい曲を選んだ」ということで、元気のいいショートピースが選ばれた。
このデュオはとにかくスピード感があり勢いがよくて胸のすく演奏をする。本格的にデュオとして演奏活動しているだけあって2人のやり取りは実によく決まっている。お互いの役割分担が明確で、鮮やかなコントラストを生み、また瞬時の入れ替わりなどもわけなくこなす。心踊るリズムの刻みに乗って自由自在に鍵盤の上を駆け巡ったり、スリリングな応酬をみせたり、その場に相応しいノリとテンションで聴衆の目とハートを釘付けにした。あっという間の30分、もう少し聴きたかった。
藝祭パイプオルガン教室コンサート
~2-2-8教室~
バッハ/トッカータとフーガ ニ短調BWV565
エルガー/愛のあいさつ
サン=サーンス/ギルマン編/英雄的行進曲
(↑ここまで聴いて次の公演へ移動…)
整理券を持っている次の公演までオルガン部屋での演奏を聴いた。これも整理券が必要で、持っていない僕は1時間近く並んだ。オルガン部屋は残響が殆どないのでゴマカシがきかず、些細なことが耳についてしまうが、練習にはこういう環境がいいのだろうか。
配られたプログラムに「トッカータとフーガが偽作の可能性あり」と書いてあったのはちょっと驚き。偽作と言われる曲はバッハには多いが、 バッハのトレードマークのようなこの曲が偽作とは!? サン=サーンスの英雄的行進曲は大規模な曲でレジストレーションの多彩さが楽しめた。
【藝祭】×【現代音楽】演奏会
~第1ホール~
ケージ/4分33秒
ホリガー/独奏オーボエの為のソナタ

ヌッシオ/ペルゴレージの主題による変奏曲
マントヴァニ/BUG
クラーク/ズーム・チューブ

ショッカー/2本のフルートとピアノの為の3つのダンス

新実徳英/2つのアルト・サクソフォーンの為のサクソフォーン・スパイラル


著名な現代の作曲家のソロやアンサンブル作品を集めたこの演奏会は、様々なタイプの曲をハイレベルの演奏で楽しめた。
ホリガーの作品は意外にマトモだったのは、ホリガーが自分で演奏したい曲として仕上げた為だろうか。阿部友妃さんの演奏からは流麗な「歌」が聴こえてきた。ヌッシオの作品は現代音楽という感じは全くないオーソドックスな曲。柿沼麻美さんのコントロールの行き届いた妙技で、様々なタイプの変奏がファゴットの楽器の持ち味を楽しめた。マントヴァニのBUG、「演奏でバグっても温かく見守って」という前置きにもかかわらず、クラリネットの須東裕基さんはバグることなくこの難曲をこなした。
クラークのフルートのソロ曲は特殊奏法を多用し、複雑なパッセージが続く難曲のはずなのに、有田紘平さんはとてもノリノリで楽しそうに吹いている。そのせいか、小難しい音楽には全然聴こえず、次はどんな奏法が登場するするか、どんな音楽になるのか、ワクワクして飽きることがなかった。声を出しながら吹き始めたかと思ったら、最後の方では奇声をあげる始末で期待を裏切らない。パンフレットには武満をやると書いてあって実際はやらなかったが、もしかして当初は武満のVOICEをやるつもりだったのを、もっと受けそうなこの曲に変更したのでは、なんて思ってしまった。確かにこれはウケル。
有田さんは司会と、最初の4分33秒の「演奏」も担当したが、ポーカーフェイスで人を笑わせるタレントも持ち合わせている。その有田さんにもう一人フルートの石田彩子さんが加わり、山中惇さんのビアノで演奏したショッカーの曲は、変化に富み、楽想も豊かでノリがよく、気の利いた娯楽音楽。3人のアンサンブルもキマッた。
最後の曲の前にタイムオーバーになってしまったが、満員の聴衆の熱い求めに藝祭委員も猶予をくれ、無事最後まで聴くことができた。上野耕平さんと松下洋さんのサックスデュオによる新実の作品は、演奏会の最後を飾るに相応しい見事な演奏で場を大いに盛り上げた。2本のサックスが語り合ったり、叫び合ったりしながら進むこの曲、サックス同士が漫才をやっているようにも、本気で取っ組み合いのケンカをしているようにも聴こえる。とにかくいつもスリリングで、何が起こるか予想がつかず、手に汗握りながら聴き進む。2人は高いテンションを保ち、熱く激しくタックルを組み、抜群のパフォーマンスを聴かせ、見せてくれた。曲そのものも面白いが、これで聴衆にアピールできるかどうかは演奏次第という感じもする。その点でこの2人の演奏は言うことなし。
現代音楽の様々な顔を堪能した。
藝大バッハ・コレギウム・ムジクム
~第2ホール~
バッハ/カンタータ第211番「おしゃべりはやめて、お静かに」(コーヒーカンタータ)BWV211

バッハ/管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
【アンコール】
コーヒーカンタータ~終曲(三重唱)の後半

今日の藝祭公演で一番楽しみにしていたのがコレ。だけど1時からの整理券配付の1時間前から並んだが、D年ガラに続いて整理券は早々と配付終了になってしまった。仕方なく開演の75分前から並んでギリギリで入ることができた。
今藝祭で聴く最後の公演は、苦労して入った甲斐のある素晴らしいものだった。1曲目はコーヒーカンタータ。歌手だけでなくオケの団員も華やかな衣装を身に付け、ステージには小道具が置かれた。演技も交えたホールオペラ的な上演は臨場感に溢れ、活き活きとした動きを伴ってこの他愛ないストーリーに観る者を引き込んでいった。
中でも目と耳を射止めたのが、娘役の久保田絵美さん。瑞々しく艶のある声で若さ溢れ、闊達なリースヒェンを歌い、演じた。役作りの巧さが光っていた。お父さん役の川田直樹さんの演技もなかなかのもの。ヤキモキした気持ちを歌にぶつけ、同情と笑いを誘った。張りのある美声も聴き映えした。語り手、吉田志門さんの溌剌とした口上がステージに更に生気を与えた。
歌にも増して感銘を受けたのが、伊藤優里さんのフルートソロ。アリアでは、リースヒェンのコーヒーへのひたむきで健気な想いを描き、最後の3重唱では、喜びはしゃいで踊り回る、嬉々としたリースヒェンの姿を生き生きと描写していた。まさにアンサンブルに咲く一輪の花!オケ全体も、陽気に軽やかなステップを踏んで楽しそう。音楽の喜びを胸一杯に吸い込んだ。
続いて演奏された管弦楽組曲、ほどよいテンポでしっとり感もある品のいい演奏に、安心して心を委ねることができた。ここでも主役のフルートが清々しい風を運んできた。アンコールでの楽しそうな様子を見て、自分もこんなアンサンブルに加わりたいな、と叶わぬ思いが沸いてきた。
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