facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

パウル・パドゥラ=スコダ ピアノリサイタル

2007年10月31日 | pocknのコンサート感想録2007
10月31日(水)パウル・パドゥラ=スコダ(Pf)
~80歳記念世界ツアー~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. バルトーク/組曲Op.14
2.バッハ/イタリア協奏曲ヘ長調BWV971
3.ペートーヴェン/ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
4.シューベルト/ピアノ・ソナタ第20番イ長調D.959

【アンコール】
シューベルト/即興曲変ト長調Op.90-3

「ウィーン三羽烏」なんて呼ばれていたピアニストのうち、グルダは一度も聴くことはなかったが、3年前にデームスを初めて聴いてその神々しいほどの深遠さにいたく感動したものだから、もう1人のスコダも聴いておかなければ!と、初めてスコダのリサイタルに出かけた。

穏やかな老紳士という風貌でゆっくりとステージに現れたスコダがまず弾いたバルトーク。音に熱がこもり、異様なほどの緊張感を醸し出す。「中国の不思議な役人」のもつような息苦しいほどの焦燥感や熱気と同質のものがピアノから伝わってきて、これはなかなかすごい演奏。続くバッハは、ヨーロッパの磨かれた高級な家具調度類を思わせるようなつやと温かさを感じる、いかにも大家が奏でる音楽。

続くベートーヴェンが大いに楽しみだったが、第1楽章の半ばでろれつが回らなくなってしまったように演奏が乱れ、気がついたら同じところに戻って弾きなおすというハプニング(演奏は止まらなかったが…)。こうなるともう聴いている方として演奏が破綻してしまわずになんとか進むかどうか、なんてことが心配になってしまい、演奏内容への集中力がなくなってしまう。「第3楽章のフーガの前のアダージョって、あんな音楽だったっけ?」なんて思ってしまったのもそのせいか?とにかくその後は無事に最後まで行ってくれてよかった。

後半では持ち直して、心憎い職人的味を出した人間的なシューベルトを聴かせてくれた。でも、去年の春に伊藤恵のピアノで同じ曲を聴いたときのような感動には遠い。スコダにしか出せないような良さが出た演奏だとは思ったが、傷の多さ、フォルムのいびつさが、この行きつ戻りつしつつも築き上げられて行く壮大な音楽の全体像を霞ませてしまったせいだろうか。或いは、職人的な熟練した巧みさだけでは、この陰影に富んだ情感豊かな音楽を描ききることは難しいのか。アンコールのアンプロンプチュもストレートな演奏だった。

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