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東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2018年定期演奏会

2018年02月21日 | pocknのコンサート感想録2018
2月18日(日)東京藝術大学バッハカンタータクラブ
東京藝術大学奏楽堂

【曲目】
1.バッハ/カンタータ 第184番「待ち望んでいた喜びの光よ」BWV184
S:森由貴、金成佳枝/A:大田茉里/T:沼田臣矢、星野文緑/B:小池優介
2. C.P.E.バッハ/12のオブリガート声部による4つの交響曲~第2番変ホ長調
♪ ♪ ♪
3.バッハ/カンタータ 第77番「汝が主なる神を愛せよ」BWV77
S:日野祐希/A:高須さやか/T:石黒達也/B:玉山彰彦
4.バッハ/カンタータ 第96番「主キリスト、神のひとり子」BWV96
S:金成佳枝/A:相澤紀恵/T:石黒達也/B:小池優介
【アンコール】
バッハ/カンタータ 第96番「主キリスト、神のひとり子」BWV96~終結コラール

【管弦楽&合唱】
沼田臣矢指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブ


数あるコンサートのなかでも特別に楽しみなのがカンタータクラブの定期演奏会。今回も至福の時間を味わった。取り上げられた3つのカンタータはどれも短めで、知っているのは最後の96番だけだったが、初めて聴く2曲も含めてどれもが珠玉のように美しい名品だと感じた。今回はどれも「喜び」や「愛」といったポジティブな内容が前面に出た作品で、僕がカンタータクラブの演奏で最も共感を覚えるタイプだけに、今日の演奏は一際美しく生えていた。

最初の第184番の冒頭で、指揮の沼田さんがくるりと客席を向いたときは、「説教でも入るのかな?」と思ったが、柔らかく美しい声でレチタティーヴォを朗唱。喜ばしいイエスの降臨を伝える歌と共に奏でられるフルートの牧歌的な調べは幸福感に溢れ、優しい光に包まれていた。歌が更に生気を得てアリオーソに転じた後、それを受けたソプラノとアルトによる何と喜びに満ちたデュエット!その歌を装飾するヴァイオリンとフルートの軽やかで小刻みな飛翔にまたホレボレ!天使たちが楽しげに天を舞っているようだった。「喜ばしく、心穏やかに死なせてください」と、美しくもしんみりとコラールが歌われた後に、 躍動感に満ちた合唱楽曲が続いたのはサプライズのプレゼントとなった。

次に指揮者なしで器楽奏者たちによってエマヌエル・バッハのシンフォニーが演奏された。気分が激しく変化する音楽で、とりわけ密度の濃い熱い部分の演奏がアクティブにグイグイと引きつけてきた。この時代のこうしたスタイルを多感様式というそうだが、「疾風怒濤」という言葉が浮かんだ。食らいついてくる前向きな演奏から、カンタータを演奏しているのとはまた違ったエナジーが伝わってきた。

演奏会後半の77番も美しく幸福感に満ちていた。それは、冒頭合唱で時おり通奏低音が途切れ、天を浮遊するようなほんわかした表現が甘美で、まさに「愛」の歌だと感じたこと、それから作品中にバンダで加わった米本さんのトランペットの柔らかく優美な調べが、明るい光となって天上から降り注ぎ、花を添えたことだ。

最後に演奏されたカンタータ96番は、ソリスト達の歌唱が深い表情を湛え、歌詞のスピリッツを明確に伝えていたという点で、とりわけ濃厚で充実した演奏に仕上がっていた。言葉の一つ一つに血が通い、自戒を込めて神の愛にすがる思いを切々と伝えた金成さんのレチタティーヴォや、自らの身を神に委ね、導きを念じる本気度が迫ってきた小池さんのアリアは圧巻だったし、言葉を吟味して味わい深く伝えた相澤さんのレチタティーヴォや、美しく通る声で滑らかに、しかししっかりとした足取りで喜びを歌う石黒さんの朗唱も素敵だった。冒頭合唱で、まさに暁の星のようにキラキラと輝く妙技を聴かせた譜久島さんのリコーダーが最後のコラールにも加わり、静かな祈りのうちに全曲を感動的に閉じた。

96番に限らず、今日登場したソリスト達は例外なく良かった。つくづく感心するのは、歌詞が伝えんとすることを自分のなかでキチンと消化して、自分の言葉で聴かせていること。そこには、常に自分の歌に、そしてバッハの音楽に対する共感と愛情がある。これは合唱団も同じだ。合唱の表情を見るのもカンタータクラブの演奏会での楽しみの一つ。「愛」や「喜び」、それに「苦しみ」や「死」という言葉が発せられるとき、それに相応しい顔の表情で言葉に魂がこめられ、丁寧に聴き手に伝えられる。オーケストラも然り。全員がバッハの音楽とその福音に共鳴し、慈しみを持ってそのメッセージを伝えようとする姿勢が、いつでも聴き手に感動と温もりを残してくれるのだ。
次に行く演奏会は藝祭か… 聴けるといいな。

下谷教会音楽賛美礼拝~2017.10.15~
2017年 東京芸術大学バッハカンタータクラブ藝祭演奏会

CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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