7月27日(木)チョン・ミョンフン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団/新国立劇場合唱団
第156回東京オペラシティ定期シリーズ
【演目】
ヴェルディ/「オテロ」(演奏会形式)


東京オペラシティコンサートホール・タケミツメモリアル
【キャスト】
オテロ(T):グレゴリー・クンデ/デズデーモナ(S):小林厚子/イアーゴ(Bar):ダリボール・イェニス/ロドヴィーコ(B):相沢創/カッシオ(T):フランチェスコ・マルシーリア/エミーリア(MS):中島郁子/ロデリーゴ(T):村上敏明/モンターノ(B):青山貴/伝令(B):タン・ジュンボ
【スタッフ】
舞台監督:蒲倉潤/照明:稲葉直人/衣装・小道具:アートクリエーション、東京衣装 他
昨年、ボローニャ市立劇場で観た「アンドレア・シェニエ」で強烈な印象を受けたグレゴリー・クンデが東京でオテロを歌うと知り、チケット発売日に予約した。公演では、クンデの凄さを改めて思い知り、キャスト、ミョンフン指揮の東フィルと新国立劇場合唱団の総力を上げた最強のパフォーマンスで、抗うことが出来ない悲劇的な運命が強烈に、重々しく、熱く迫って来た。
東フィルの定期ということでまずはオケについて。ミョンフン/東フィルは、腰の座った豊潤な響きで、熱くアグレッシブな圧巻の演奏で、ドラマの様々なシーンをドラマチックに描いて行った。ズシリと腹の底に響く重量感が、このオペラの重すぎる運命をクローズアップしていただけでなく、オテロとデズデーモナが愛を語る場面などでは繊細でとろけるように美しい音色の歌がオケから聴こえてきた。
オペラ指揮者としても世界で活躍するミョンフンは、様々な人間模様が渦巻くこの作品のいくつもの聴かせどころを浮き彫りにして山場を作り、一つのドラマとしていかに聴衆に訴えるかを知り尽くしていて、東フィルはその求めに頼もしく応えた。新国立劇場合唱団もパワフル、艶やか、熱い歌唱でミョンフンの求めに応え、オケと合唱によるゴージャスな音世界が圧倒的な感銘を与えた。
そして素晴らしかったキャストたち。それにしてもグレゴリー・クンデは何という歌手だろうか。輝かしく強靭な声で、威厳、怒り、焦燥、苦悩、悲しみ、愛といったあらゆる感情を表現するパフォーマンスは神レベルで、オテロの極限まで追い詰められ、破局を迎える運命が赤裸々に迫って来た。全幕を通じて飛び抜けて多い出番と重要な歌が続くこの役を、70歳も近いクンデは驚くべきスタミナで最後の最後まで全く疲れを感じさせずに歌い切ったことも驚嘆に値する。
イアーゴ役のイェニスは、オテロを徹底的に破局へと追い詰める非道ぶりを、存在感のある太い声に不気味な声色を取り交ぜて印象付けた。デズデーモナを歌った小林厚子も大健闘。大きく深い表現でオテロと堂々と渡り合い、愛を歌い交わし、身の潔白を強く訴えた。最後の「柳の歌」ではもう少し潤いが欲しかったが、立派にオテロの相手役を務めた。エミーリア役の中島郁子は、幕切れのイアーゴに食い下がる迫真の歌唱に凄みも感じさせ、最後の場面の緊迫感をグッと高めた。その他、カッシオ役のマルシーリア、ロドヴィーコ役の相沢創、出番は多くない他の歌手も皆秀逸だった。
演奏会形式とは云っても、冒頭の嵐を描写する場面から照明が効果的に使われ、ソリスト達はオペラのステージ並みの演技をこなし(オテロとデズデーモナのキスシーンはクンデさんが手で隠して見えなかったけど…)、合唱団も立ち位置で振付を入れる場面があり、第4幕ではソファが置かれ、オテロとデズデーモナは役に合った衣装を纏い、演劇の要素も大胆に取り入れた上演が臨場感を大きく高めた。オケの譜面台には照明が灯り、ソリスト、合唱は譜面を持たずに暗譜で歌い(プロンプターはいない)、ミョンフンも暗譜で通したのも驚いた。必ずしも譜面を落とす必要がない演奏会形式でここまで徹底して暗譜にこだわり、演奏会形式としても世界のトップレベルの上演が実現した。
ボローニャ市立歌劇場「アンドレア・シェニエ」(T:グレゴリー・クンデ)~2022.10.14 ボローニャ市立劇場~
ミョンフン 指揮 東フィル(ブラームス:交響曲第3、4番)~2021.9.17 サントリーホール~
Pf:アルゲリッチ/ミョンフン指揮 桐朋学園オケ ~2018.5.16 東京オペラシティ~
新国立劇場オペラ公演「オテロ」~2017.4.12 新国立劇場~
ミョンフン指揮 N響(マーラー:交響曲第5番) ~2013.6.20 サントリーホール~
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【スタッフ】
舞台監督:蒲倉潤/照明:稲葉直人/衣装・小道具:アートクリエーション、東京衣装 他
昨年、ボローニャ市立劇場で観た「アンドレア・シェニエ」で強烈な印象を受けたグレゴリー・クンデが東京でオテロを歌うと知り、チケット発売日に予約した。公演では、クンデの凄さを改めて思い知り、キャスト、ミョンフン指揮の東フィルと新国立劇場合唱団の総力を上げた最強のパフォーマンスで、抗うことが出来ない悲劇的な運命が強烈に、重々しく、熱く迫って来た。
東フィルの定期ということでまずはオケについて。ミョンフン/東フィルは、腰の座った豊潤な響きで、熱くアグレッシブな圧巻の演奏で、ドラマの様々なシーンをドラマチックに描いて行った。ズシリと腹の底に響く重量感が、このオペラの重すぎる運命をクローズアップしていただけでなく、オテロとデズデーモナが愛を語る場面などでは繊細でとろけるように美しい音色の歌がオケから聴こえてきた。
オペラ指揮者としても世界で活躍するミョンフンは、様々な人間模様が渦巻くこの作品のいくつもの聴かせどころを浮き彫りにして山場を作り、一つのドラマとしていかに聴衆に訴えるかを知り尽くしていて、東フィルはその求めに頼もしく応えた。新国立劇場合唱団もパワフル、艶やか、熱い歌唱でミョンフンの求めに応え、オケと合唱によるゴージャスな音世界が圧倒的な感銘を与えた。
そして素晴らしかったキャストたち。それにしてもグレゴリー・クンデは何という歌手だろうか。輝かしく強靭な声で、威厳、怒り、焦燥、苦悩、悲しみ、愛といったあらゆる感情を表現するパフォーマンスは神レベルで、オテロの極限まで追い詰められ、破局を迎える運命が赤裸々に迫って来た。全幕を通じて飛び抜けて多い出番と重要な歌が続くこの役を、70歳も近いクンデは驚くべきスタミナで最後の最後まで全く疲れを感じさせずに歌い切ったことも驚嘆に値する。
イアーゴ役のイェニスは、オテロを徹底的に破局へと追い詰める非道ぶりを、存在感のある太い声に不気味な声色を取り交ぜて印象付けた。デズデーモナを歌った小林厚子も大健闘。大きく深い表現でオテロと堂々と渡り合い、愛を歌い交わし、身の潔白を強く訴えた。最後の「柳の歌」ではもう少し潤いが欲しかったが、立派にオテロの相手役を務めた。エミーリア役の中島郁子は、幕切れのイアーゴに食い下がる迫真の歌唱に凄みも感じさせ、最後の場面の緊迫感をグッと高めた。その他、カッシオ役のマルシーリア、ロドヴィーコ役の相沢創、出番は多くない他の歌手も皆秀逸だった。
演奏会形式とは云っても、冒頭の嵐を描写する場面から照明が効果的に使われ、ソリスト達はオペラのステージ並みの演技をこなし(オテロとデズデーモナのキスシーンはクンデさんが手で隠して見えなかったけど…)、合唱団も立ち位置で振付を入れる場面があり、第4幕ではソファが置かれ、オテロとデズデーモナは役に合った衣装を纏い、演劇の要素も大胆に取り入れた上演が臨場感を大きく高めた。オケの譜面台には照明が灯り、ソリスト、合唱は譜面を持たずに暗譜で歌い(プロンプターはいない)、ミョンフンも暗譜で通したのも驚いた。必ずしも譜面を落とす必要がない演奏会形式でここまで徹底して暗譜にこだわり、演奏会形式としても世界のトップレベルの上演が実現した。
ボローニャ市立歌劇場「アンドレア・シェニエ」(T:グレゴリー・クンデ)~2022.10.14 ボローニャ市立劇場~
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