11月22日(水)トゥガン・ソヒエフ指揮 NHK交響楽団
《2017年11月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.プロコフィエフ/組曲「キージェ中尉」Op.60
2.プロコフィエフ/スキタイ組曲「アラとロリー」Op.20
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3.プロコフィエフ/交響曲 第7番 嬰ハ短調 Op.131「青春」
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昨年の1月と10月に続き、トゥガン・ソヒエフがN響B定期に登場した。これまでにソヒエフの指揮で聴いたN響の演奏は、どれもとても感銘深かった。僕が3大天才作曲家のなかの1人と崇めているプロコフィエフを特集した今夜も、ソヒエフ/N響は期待通り、実にいい演奏を聴かせてくれた。
ソヒエフがN響を振ると、N響の音が益々ギュッと艶やかな結晶を作り、一層多彩な輝きを放つ。それは表面的なものではなく、どこを切っても変わらぬ艶と輝きのある濃密なもの。無機物の鉱物の結晶とは異なり、そこには生き生きとした熱い血が通っている。純度の高い結晶を、血が通った人の温かくて大きな手が包み込んでいるような印象を与えてくれる。
プロコフィエフの音楽は高い純度や輝きが命だと思うが、N響の音はまさにこれを表現するのに相応しく、またちょっと乾いた、無機質で人を嘲笑するようなところもプロコフィエフの魅力ではあるが、ソヒエフ/N響の温かさは、そんな冷たさをもあったかい人情で包み込む包容力があり、新たなプロコフィエフの魅力に気づくことにもなった。
「キージェ中尉」では珠玉の短編小説を読むような気分を味わい、「アラとロリー」では錯綜する熱いリズムとハーモニーが鮮やかで曲芸的なパフォーマンスを繰り広げたが、そこにはいつでも熱いハートがある。
そして後半の第7シンフォニー、このデリケートで多彩の極みと言える音楽に、ソヒエフは細やかで優しい愛情と、そこにほどよいメランコリーとノスタルジーのスパイスを効かせ、晩年のプロコフィエフがこのシンフォニーにタイトルと共に託したであろう遠い若い日の切なくも甘い記憶を鮮やかに描いて見せた。笑いと涙、焦燥と憧れ、高揚と抑鬱・・・様々な感情がタペストリーのように織り込まれ、リアルで抒情味あふれた美しい音楽絵巻だ。
今夜はプロコフィエフの作品のなかでもマイナーなものが並んだが、これからも、こうした目立たない名曲を、フレッシュで実のある演奏で紹介し続けてくれると嬉しい。今からもう次の客演が待たれる。
トゥガン・ソヒエフ指揮 NHK交響楽団《2016年1月Bプロ》 2016.1.21 サントリーホール
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【曲目】
1.プロコフィエフ/組曲「キージェ中尉」Op.60
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2.プロコフィエフ/スキタイ組曲「アラとロリー」Op.20
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3.プロコフィエフ/交響曲 第7番 嬰ハ短調 Op.131「青春」
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昨年の1月と10月に続き、トゥガン・ソヒエフがN響B定期に登場した。これまでにソヒエフの指揮で聴いたN響の演奏は、どれもとても感銘深かった。僕が3大天才作曲家のなかの1人と崇めているプロコフィエフを特集した今夜も、ソヒエフ/N響は期待通り、実にいい演奏を聴かせてくれた。
ソヒエフがN響を振ると、N響の音が益々ギュッと艶やかな結晶を作り、一層多彩な輝きを放つ。それは表面的なものではなく、どこを切っても変わらぬ艶と輝きのある濃密なもの。無機物の鉱物の結晶とは異なり、そこには生き生きとした熱い血が通っている。純度の高い結晶を、血が通った人の温かくて大きな手が包み込んでいるような印象を与えてくれる。
プロコフィエフの音楽は高い純度や輝きが命だと思うが、N響の音はまさにこれを表現するのに相応しく、またちょっと乾いた、無機質で人を嘲笑するようなところもプロコフィエフの魅力ではあるが、ソヒエフ/N響の温かさは、そんな冷たさをもあったかい人情で包み込む包容力があり、新たなプロコフィエフの魅力に気づくことにもなった。
「キージェ中尉」では珠玉の短編小説を読むような気分を味わい、「アラとロリー」では錯綜する熱いリズムとハーモニーが鮮やかで曲芸的なパフォーマンスを繰り広げたが、そこにはいつでも熱いハートがある。
そして後半の第7シンフォニー、このデリケートで多彩の極みと言える音楽に、ソヒエフは細やかで優しい愛情と、そこにほどよいメランコリーとノスタルジーのスパイスを効かせ、晩年のプロコフィエフがこのシンフォニーにタイトルと共に託したであろう遠い若い日の切なくも甘い記憶を鮮やかに描いて見せた。笑いと涙、焦燥と憧れ、高揚と抑鬱・・・様々な感情がタペストリーのように織り込まれ、リアルで抒情味あふれた美しい音楽絵巻だ。
今夜はプロコフィエフの作品のなかでもマイナーなものが並んだが、これからも、こうした目立たない名曲を、フレッシュで実のある演奏で紹介し続けてくれると嬉しい。今からもう次の客演が待たれる。
トゥガン・ソヒエフ指揮 NHK交響楽団《2016年1月Bプロ》 2016.1.21 サントリーホール
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