5月24日(月)ダン・タイ・ソン ピアノ・リサイタル
~都民芸術劇場音楽サークル第577回定期公演~
東京文化会館
【曲目】
1.ショパン/舟歌Op.60
2.ショパン/ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op.58
3.ショパン/24の前奏曲Op.28
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【アンコール】
ショパン/マズルカ第13番イ短調
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ダン・タイ・ソンはこれまでもリサイタルのチラシを目にする度に気になってはいたが、チケット代が高くてずっと聴いていなかった。それが今回の都民芸術劇場のリサイタルはB席5000円、しかも東京文化会館でやるオールショパンプログラムというのに引かれて出かけた。
「舟歌」の前奏が颯爽と始まり、左手のバルカローレのリズムに乗って右手で奏でられる自由な調べは音がくっきりと刻まれ、和音が明晰に浮かび上がる。メランコリックなたゆたいや、晩年の作品を思わせる沈思的な深みではなく、あくまで美しい音でスマートに進み、清々しさを感じるほど。そこにはただきれい、というのではない耽美的な世界があるようにも感じたが、やっぱりちょっと物足りない。
続くソナタも颯爽と始まり、瑞々しく流麗な演奏が繰り広げられて行く。第2楽章の天を駆け抜けるような幸福感に続き、第3楽章の夢を見るような甘美で滑らかな語り口があまりに心地良く、ウトウトしてしまった。猛スピードで駆け抜ける第4楽章は気がついたら終わっていたという感じで… 前半はあっというまに終わってしまった。
ダン・タイ・ソンの本当の魅力を感じることができたのは後半。プレリュードの第1曲ハ長調はやっぱりあっけなく過ぎ去り、またこの調子で全曲終わってしまうのかとも思ったが、第2曲イ短調では陰鬱なメロディーが孤高の独白のように深く胸に刻まれて、にわかにステージへの集中力が高まった。第3曲は駿馬をリズミカルに駆るような活き活きとした力強さを感じる演奏で、これも耳にとても新鮮。曲間の間を殆ど取らず進んで行くが、じっくりと歌ったり(第4番、第6番)、軽やかに駆け抜けたり(第5番)、優雅に踊ったり(第7番)、それぞれの曲の個性と魅力が最高に昇華された形で伝わってくる。ダン・タイ・ソンの鋭く磨かれた感性とピアニズムが発揮され、どの曲も瑞々しく、耽美的なほどに美しく閃光を放っている。
第15曲では「雨だれ」を象徴するAs音の連打がねっとりとまとわりつくように曲から離れず、音楽に深い陰影を与える。第17曲変イ長調の終盤、低いAs音が鳴り響く中で奏でられる上声部の調べは水に落とされたインクのようにだんだんと溶けて響きの中に同化して行く… 第23曲へ長調では最後の方で出てくるEsの音が残照のように曲全体を淡く照らした。そして疾風のように駆け抜けた終曲の最後の最低音のDの3連打は、死刑宣告の鐘の音のように生々しく響き渡り、身動きが取れないほどだった。
どの曲もこれといって変わったことはしなくても、どれひとつ普通に過ぎて行く感じではなく、どれもが鮮烈な印象を残して行った。これはこれまで聴いた「24の前奏曲」の演奏の中でも特段の名演だ。
アンコールで弾いてくれたマズルカは、悲しいほどに美しく、これも忘れ難い。もっとアンコールを聴きたかったが、このマズルカの次に来るものはないな、という気もした。ダン・タイ・ソン、また聴きたい!
~都民芸術劇場音楽サークル第577回定期公演~
東京文化会館
【曲目】
1.ショパン/舟歌Op.60
2.ショパン/ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op.58
3.ショパン/24の前奏曲Op.28
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【アンコール】
ショパン/マズルカ第13番イ短調
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ダン・タイ・ソンはこれまでもリサイタルのチラシを目にする度に気になってはいたが、チケット代が高くてずっと聴いていなかった。それが今回の都民芸術劇場のリサイタルはB席5000円、しかも東京文化会館でやるオールショパンプログラムというのに引かれて出かけた。
「舟歌」の前奏が颯爽と始まり、左手のバルカローレのリズムに乗って右手で奏でられる自由な調べは音がくっきりと刻まれ、和音が明晰に浮かび上がる。メランコリックなたゆたいや、晩年の作品を思わせる沈思的な深みではなく、あくまで美しい音でスマートに進み、清々しさを感じるほど。そこにはただきれい、というのではない耽美的な世界があるようにも感じたが、やっぱりちょっと物足りない。
続くソナタも颯爽と始まり、瑞々しく流麗な演奏が繰り広げられて行く。第2楽章の天を駆け抜けるような幸福感に続き、第3楽章の夢を見るような甘美で滑らかな語り口があまりに心地良く、ウトウトしてしまった。猛スピードで駆け抜ける第4楽章は気がついたら終わっていたという感じで… 前半はあっというまに終わってしまった。
ダン・タイ・ソンの本当の魅力を感じることができたのは後半。プレリュードの第1曲ハ長調はやっぱりあっけなく過ぎ去り、またこの調子で全曲終わってしまうのかとも思ったが、第2曲イ短調では陰鬱なメロディーが孤高の独白のように深く胸に刻まれて、にわかにステージへの集中力が高まった。第3曲は駿馬をリズミカルに駆るような活き活きとした力強さを感じる演奏で、これも耳にとても新鮮。曲間の間を殆ど取らず進んで行くが、じっくりと歌ったり(第4番、第6番)、軽やかに駆け抜けたり(第5番)、優雅に踊ったり(第7番)、それぞれの曲の個性と魅力が最高に昇華された形で伝わってくる。ダン・タイ・ソンの鋭く磨かれた感性とピアニズムが発揮され、どの曲も瑞々しく、耽美的なほどに美しく閃光を放っている。
第15曲では「雨だれ」を象徴するAs音の連打がねっとりとまとわりつくように曲から離れず、音楽に深い陰影を与える。第17曲変イ長調の終盤、低いAs音が鳴り響く中で奏でられる上声部の調べは水に落とされたインクのようにだんだんと溶けて響きの中に同化して行く… 第23曲へ長調では最後の方で出てくるEsの音が残照のように曲全体を淡く照らした。そして疾風のように駆け抜けた終曲の最後の最低音のDの3連打は、死刑宣告の鐘の音のように生々しく響き渡り、身動きが取れないほどだった。
どの曲もこれといって変わったことはしなくても、どれひとつ普通に過ぎて行く感じではなく、どれもが鮮烈な印象を残して行った。これはこれまで聴いた「24の前奏曲」の演奏の中でも特段の名演だ。
アンコールで弾いてくれたマズルカは、悲しいほどに美しく、これも忘れ難い。もっとアンコールを聴きたかったが、このマズルカの次に来るものはないな、という気もした。ダン・タイ・ソン、また聴きたい!
私もこの6月にダンタイソンコンサートに行きました。プログラム<A>「ショパン・ダンス」がテーマでした。
どの曲も素晴らしかったけれど、アンコールのマズルカ13番がまるでダンタイソンの即興であるかのように、心にしみわたり、興奮でその夜眠れませんでした。。。 ^^;)
ところで、お知らせしたいことがあります。
12月5日(日)午後2時より四ツ谷紀尾井ホールにて開催されるダンタイソンコンサート、1席のみですが、譲り先を探しています。
曲目はこのブログで紹介されているものと同じ「ショパンとジョルジュ・サンド」がテーマの
プログラム<B>です。
席は1階6列目左ブロック(鍵盤が少し見える位置)です。できれば定価9,000でお願いしたいのですが、ご相談も可です。
是非ダンタイソンファンの方に来ていただきたいと思い、投稿しました。もしご興味がありましたら、下記URLの掲示板を通してご連絡ください。
またダンタイソンの素晴らしい音色で、感動を分かち合えると良いですね!
「クラシックチケット掲示板」 http://park7.wakwak.com/~classic/
記事No.2770