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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

上野学園中学校・高等学校 第113回桜鏡祭より

2017年10月03日 | pocknのコンサート感想録2017
9月23日(土)・24日(日)
上野学園中学校・高等学校
第113回 より


昨年、短時間だったが訪れた上野学園中高の学園祭「桜鏡祭」での生徒達の演奏がとても良かったので、今年はもっと時間をかけてじっくり聴こうと、2日間に渡って訪れた。演奏のほか、クラスや部活動の生徒達の工夫を凝らして一生懸命取り組んだ展示、体育館では全国大会で好成績を収めたトランポリン部やバトン部の演技など多岐にわたって楽しめ、感心・感動を味わったが、ここでは石橋メモリアルホールで行われた音楽系サークルの発表と、音楽科専攻の生徒による演奏会について感想を記す。
コーラス部・オーケストラ部・古楽同好会 演奏会
【古楽同好会】
上野学園にはオルガンが備わった石橋メモリアルホールに加え、古楽器などのためのエオリアンホールや、充実した古楽器のコレクションもあるなど、古楽に取り組んできた伝統がある。そんな学校の古楽同好会ということで楽しみに聴きにきた。それが、メンバーは中高合わせて6人と少なく、使われた楽器はヴィオラ・ダ・ガンバだけ。様々なサイズのガンバを使っていたのは珍しかったが、演奏したのはダウランドの短い一曲だけというのは寂しかった。柔らかく雅ないい響きだっただけにもっと聴きたかった。

次にオーケストラ同好会のメンバーも加わって演奏したバッハのアリア(管弦楽組曲第3番から)は、ピリオドとモダンの弦楽器による合同演奏。それ自体はともかく、両者の間でヴィブラートの処理が異なった。この辺り、打ち合わせがあったのだろうか。演奏も譜面を追っているような印象を受け、不完全燃焼の観あり。

【コーラス部】
コーラス部は松下耕の「信じる」など、日本語の比較的新しい歌を3曲披露。13名と少人数ではあるが、キレイなハーモニーを響かせ、言葉を伝えようという姿勢がうかがえた。女子は澄んだ美しい声が、男子の方からもとても真っ直ぐに届いてくるいい声が聞こえ、コーラスのクオリティーを高めていた。演奏からは誠実さやひたむきさも伝わってきた。なかには歌っていて泣いてしまう生徒もいて、曲への思い入れの強さが感じられたが、ここは涙をこらえ、その感動も「歌」にして聴き手に伝えてほしい。

【オーケストラ同好会】
オーケストラ同好会のメンバーは弦楽器、打楽器だけの10人編成というさびしい状況のなか、クラリネットの賛助にピアノが加わり、元気の出る曲(カルメン前奏曲とラデツキー行進曲)を聴かせた。音楽科のメンバーも多いのだろうが、弦楽合奏は艶のある響きが届いてきた。
この他、コーラス部との合同で1曲、更に古楽同好会も加わって、バッハのカンタータ147番から有名なコラール「イエスは我が喜び」を演奏した。
吹奏楽部

ブラスバンドもメンバーは21名と多いとは言えないが、コーラスやオーケストラに比べれば格段に多く、パートもほぼ揃い、クラシックからミスチルのHANABIやドラマの主題曲、ディズニーメドレーやブラバンの定番曲オーメンズ・オブ・ラブなど、幅広いレパートリーで元気のいい熱い演奏を聴かせてくれた。「ホルストの組曲」と紹介があって演奏した吹奏楽のための第1組曲は、最初の曲のみ演奏。もう1つ、マーチぐらいは聴きたかった。

ポップスステージでは、耳を付けたりマーチングバンドのポーズを決めるなど「見せる」演出もあり、また部員が2人1組で交替しながら元気いっぱいにMCを入れるなど、熱心にアクティブに演奏に取り組んでいて、楽しく聴くことができた。
上野学園高等学校音楽科生徒による演奏会より

23日は高校1年生の器楽・声楽コースの後半と演奏家コースの発表、24日は高校3年生の器楽・声楽コースの一部を聴いた。去年聴いた発表がレベルも高くて楽しめたので、今年は去年より時間をかけて聴いた。率直な感想は、譜面をキチンとさらって暗譜したあと、そこから何をどう表現するかがいかに大切で、大変なことかということ。

かなり明確に何をやりたいかが伝わり、実際にそれを表現できている演奏もあれば、まだそこへは相当な譜面の読み込み、或いはそれ以前に、音楽を表現するとは、個々人にとってどんな意味があるか、音楽に限らず幅広いフィールドで勉強する余地があると感じる演奏もあった。

そんな中、最も印象に残った、輝きを放っていた演奏があった。演奏家コースでプロコフィエフのソナタ(3番)を弾いた小崎彩音さんだ。音の一つ一つ、フレーズの一つ一つから明確な意思が伝わってきた。その音は研ぎ澄まされ、迷いがなく、音楽の構造と、どこへ向かうかをはっきりと示し、プロコフィエフの鬼気迫るリアリティーを伝えていた。まだ1年生で、今後が楽しみだ。

他にも光る演奏はあったし、まだ高校生という若さ。みんながみんな演奏家を目指しているわけではないにしても、音楽をする喜びを持つことで豊かな心が育まれるし、それを人に何らかの形で伝えられるようになるのは素晴らしいこと。これまで研鑽を積んできたことを更に開花できるよう、喜びを持って音楽と向き合って行ってもらいたい。

上野学園中学校・高等学校 第112回桜鏡祭より(2016.9.25)
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さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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