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オーギュスタン・デュメイ ヴァイオリンリサイタル

2017年10月01日 | pocknのコンサート感想録2017
9月29日(金)オーギュスタン・デュメイ(Vn)/レミ・ジュニエ(Pf)
紀尾井ホール

【曲目】
1.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調Op.108
2. R.シュトラウス/ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
3.フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
【アンコール】
1.パラディス/シシリエンヌ
2.ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調Op.30-2~第3楽章

デュメイのリサイタル、会場は響きの美しい室内楽に最適の紀尾井ホール、同時代に書かれたそれぞれ個性豊かな傑作ソナタが3つ、これは聴かない手はないのだが、直前まで他に用事が入るかも知れなかったためチケットが買えず、結局当日券で聴くことに。客席はほぼ満席だったが、全席均一料金でよくここが空いていたと思うほど良い席(1階中央)が取れた。そして、デュメイにまたも魅せられた。

デュメイの魅力を一言で表せば「男の魅力」に尽きる!これまで何度も聴いてきて、今夜この言葉に行き着いた。包容力、壮大なロマン、色気・・・ 同性として羨ましいばかりのこうした魅力は、俳優に例えれば(映画にはめっぽう疎いが)、アラン・ドロンが真っ先に浮かぶ。2枚目を演じても3枚目的におどけても、何をやっても様になり、さりげなく、しかし強烈に女の心を、あるいは身体も鷲掴みにしてしまうような魅力。デュメイのヴァイオリンを聴いていると、大きな夢に向かって突き進んで行く者だけが持つ深くて澄んだ瞳がじっとこちらを見据えているのを感じる。それがこのスケールの大きさと深さをもたらし、熱い息吹と濃厚な色香を与えるのだろう。

最初のブラームスでは、音が少し淡白かなと思ったが、これは恐らくブラームスの古典的な様式美を重んじて、音のパレットを厳選したためだろう。終楽章での前のめりな「攻め」のアプローチで全曲を締めくくったとき、全体の引き締まったフォルムが浮かび上がった。

シュトラウスは、若書きのムンムンと発する熱気は抑え気味に、全体を見渡す懐の深さを感じさせた。第2楽章でピアノと戯れるように歌う甘いメロディーは、女を口説いているようにも聞こえたが、過度に女にすりよって気を引こうとするのではなく、自信たっぷりに相手の表情を読み取って気持ちを自分へ向かせる余裕がある。これぞ役者のなかの役者ではないか!フィナーレの余裕のある堂々とした立ち居振舞いも然り。ワンランク上の次元へと引き上げる。

そして後半のフランクこそ、上述した「男の魅力」をはっきりと認識した演奏。とにかく惚れ惚れするしかないし、名役者のパフォーマンスにひたすら引き込まれ、持ち上げられ、胸がいっぱいになった。

アンコールでは定番のシシリエンヌで聴き手の心をとろけさせたあと、今度はベートーヴェンでアグレッシブの極みといった芸当を披露し、聴き手の心を鼓舞する。最後の最後まで見事な役者を演じ通した。デュメイに益々惚れ込んでしまった。

ピアノのジュニエは、音は軽めでデュメイとはタイプは異なるが、敏感な反応、合いの手の巧さなど、デュメイの演奏をよく盛り立てる名伴奏ぶりを披露した。

Vn:オーギュスタン・デュメイ/Pf:児玉桃(2013.5.4 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)


CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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