6月21日(金)ピアノのアトリエ vol.14
~ピアノのアトリエ工房14回公演~
指導・監修:中村和枝
武蔵野スイングホール
【曲目】
♪ ベルク/ピアノソナタ Op.1
Pf:近藤綾子
♪ ミッコ・ヘイニオ/3つの繰り返される夢
Pf:梶村有美
♪ 近藤浩平/三段峡と八幡高原(安芸の山々~西中国山地)
Pf:佐藤浩紀
♪ 野平一郎/間奏曲第2番《イン・メモリアムT》
Pf:深澤倫子
♪ 湯浅譲二/内触覚的宇宙
Pf:和泉真弓
♪ ♪ ♪ ♪ ブーレーズ/ピアノソナタ第1番~第1楽章
Pf:阿部宏絵
♪ メシアン/幼子イエスに注ぐ20の眼差し~Ⅱ星の眼差し
♪ 三善/ピアノソナタ~第3楽章
Pf:酒井千恵子
♪ バーバー/ピクニック Op.20~第1、3、4曲
Pf:石田麻由子
♪ 平石博一/九十九折第三番
Pf:堀切洋子
♪ カーター/ピアノについての2つの考察
Pf:井口みな美
2022年に聴いた「ピアノのアトリエvol.13」がとても良かったので、vol.14を聴きに行った。前回よりも演奏作品、出演者が増え、近・現代の作曲家による11作品を10人のピアニストの演奏で聴いた。
ベルクのソナタは調性が崩壊しかける危うさと、深く根を張った頼もしさが共存するような作品だが、近藤さんは落ち着いた息遣いで端正に演奏を進め、そのなかから叙情を浮かび上がらせていた。ミッコ・ヘイニオの曲は明快で耳当たりがいい。梶村さんは、よく通る明るい音色で生き生きとした演奏を繰り広げた。3曲目で連続するトーンクラスターの上で奏でられる音楽からは、おとぎ話を聴いているような近しさやノスタルジーが感じられた。
近藤浩平の山々の自然を描いた作品を弾いた佐藤さんは、ピアノの弦の真芯を捉えたような真っ直ぐな音が心の琴線を響かせた。作品は山々の風景を表現しているそうだが、迫真の音で奏でられる風景は現世から隔絶された孤高の心象風景を描いているようだった。野平一郎の間奏曲第2番はモノローグ的な世界。深澤さんの弾くピアノの音色は一音一音が磨かれて光沢を放ち、艶やかで美しい音像を結んでいた。
前半の取りは湯浅譲二の「内触覚的宇宙」。意味深なタイトルを持つこの作品から、和泉さんは多彩で多様なテクスチュアを織り成しつつ、人間の内面にうごめく感情を浮かび上がらせた。研ぎ澄まされた感性が映え、澄んだ響きも美しく、完成度の高さが光っていた。優れた音楽だと感じたのはこの演奏あってのことだろう。
♪ ♪ ♪ 後半はブーレーズの難曲からスタート。大汗をかいて格闘するイメージの音楽を、阿部さんは緊迫感のある緻密な演奏でありながら、その俊敏なタッチには余裕すら感じられ、軽やかで伸びやかな息遣いが清々しささえ伝えていた。
阿部さんはメシアンと三善晃の2作品を演奏。メシアンでは人の温もりやウェットな情感が伝わって来た。三善のソナタでは発せられる音に確かな意思が感じられ、濃密で熱い演奏となった。作品全体から揺るぎないパワーが伝わって来て、三善晃という作曲家の非凡さも改めて感じた。
バーバーの「ピクニック」の原題はExcursions。音楽を聴いていると、ピクニックの和やかさよりももっとワイルドでワクワクする発見や冒険が感じられた。石田さんの演奏からはそんなスリリングでリアルなシーンが伝わって来た。平石博一の九十九折三番からはミニマルミュージック的な反復が聞こえて来た。堀切さんはこれを機械的ではない熱い情感を込めて、そこから生きたドラマを表現していた。
最後はエリオット・カーターの作品。刹那的な曲と絶え間なく運動する曲は対照的だが、井口さんの演奏はどちらの曲もエナジーに溢れ、今、音がどこに向かっているかが明確に伝わってきて、その場その場の意思が感じられた。
20世紀から現代までに生まれた曲だけでプログラミングされ、それぞれが個性的な魅力を放つ作品が、優れた演奏によって曲の真価をリアルに体験できるこうしたコンサートは大変貴重な存在だ。今後も斬新な企画による演奏会を期待したい。
ピアノのアトリエ vol.13 2022.11.4 杉並公会堂
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♪ バーバー/ピクニック Op.20~第1、3、4曲
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♪ 平石博一/九十九折第三番
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2022年に聴いた「ピアノのアトリエvol.13」がとても良かったので、vol.14を聴きに行った。前回よりも演奏作品、出演者が増え、近・現代の作曲家による11作品を10人のピアニストの演奏で聴いた。
ベルクのソナタは調性が崩壊しかける危うさと、深く根を張った頼もしさが共存するような作品だが、近藤さんは落ち着いた息遣いで端正に演奏を進め、そのなかから叙情を浮かび上がらせていた。ミッコ・ヘイニオの曲は明快で耳当たりがいい。梶村さんは、よく通る明るい音色で生き生きとした演奏を繰り広げた。3曲目で連続するトーンクラスターの上で奏でられる音楽からは、おとぎ話を聴いているような近しさやノスタルジーが感じられた。
近藤浩平の山々の自然を描いた作品を弾いた佐藤さんは、ピアノの弦の真芯を捉えたような真っ直ぐな音が心の琴線を響かせた。作品は山々の風景を表現しているそうだが、迫真の音で奏でられる風景は現世から隔絶された孤高の心象風景を描いているようだった。野平一郎の間奏曲第2番はモノローグ的な世界。深澤さんの弾くピアノの音色は一音一音が磨かれて光沢を放ち、艶やかで美しい音像を結んでいた。
前半の取りは湯浅譲二の「内触覚的宇宙」。意味深なタイトルを持つこの作品から、和泉さんは多彩で多様なテクスチュアを織り成しつつ、人間の内面にうごめく感情を浮かび上がらせた。研ぎ澄まされた感性が映え、澄んだ響きも美しく、完成度の高さが光っていた。優れた音楽だと感じたのはこの演奏あってのことだろう。
阿部さんはメシアンと三善晃の2作品を演奏。メシアンでは人の温もりやウェットな情感が伝わって来た。三善のソナタでは発せられる音に確かな意思が感じられ、濃密で熱い演奏となった。作品全体から揺るぎないパワーが伝わって来て、三善晃という作曲家の非凡さも改めて感じた。
バーバーの「ピクニック」の原題はExcursions。音楽を聴いていると、ピクニックの和やかさよりももっとワイルドでワクワクする発見や冒険が感じられた。石田さんの演奏からはそんなスリリングでリアルなシーンが伝わって来た。平石博一の九十九折三番からはミニマルミュージック的な反復が聞こえて来た。堀切さんはこれを機械的ではない熱い情感を込めて、そこから生きたドラマを表現していた。
最後はエリオット・カーターの作品。刹那的な曲と絶え間なく運動する曲は対照的だが、井口さんの演奏はどちらの曲もエナジーに溢れ、今、音がどこに向かっているかが明確に伝わってきて、その場その場の意思が感じられた。
20世紀から現代までに生まれた曲だけでプログラミングされ、それぞれが個性的な魅力を放つ作品が、優れた演奏によって曲の真価をリアルに体験できるこうしたコンサートは大変貴重な存在だ。今後も斬新な企画による演奏会を期待したい。
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