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N響 2017年10月B定期(クリストフ・エッシェンバッハ指揮)

2017年10月31日 | pocknのコンサート感想録2017
10月26日(木)クリストフ・エッシェンバッハ指揮 NHK交響楽団
《2017年10月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ブラームス/交響曲第4番ホ短調Op.98
2.ブラームス/交響曲第1番ハ短調Op.68

N響の10月定期は、エッシェンバッハが3つのプログラム全てを担当。ピアニストとしても指揮者としても名匠と言われるほどの評価を得ているし、実演に接したこともあるかも知れないが、はっきりとした記憶はない。それだけに、今夜はしっかりと思い出に刻まれる演奏会になることを期待して出かけた。

本当なら前半でエッシェンバッハの弾き振りによるモーツァルトのコンチェルトを聴けるはずだったが、エッシェンバッハの左手関節の病気でブラームスの第4シンフォニーに変更。残念だが、今夜は、ウィーン・フィルで長年コンマスを務めたライナー・キュッヒル氏がN響のゲスト・コンマスに就任してBプロのデビューとなるので、ブラームスの大作2曲で、そのコンマス効果を確かめられるのは楽しみだ。

前半にいきなり「ブラ4」が登場。キュッヒルさんの大きな息のアクションで入ったヴァイオリンの溜め息のテーマは、いつものN響の弦の響きとの違いは感じなかった。でもN響の弦はいつだってシルクのような美しい響きを聴かせてくれるし、今夜の弦もその意味では上々の滑り出し。

エッシェンバッハ/N響から醸し出される音風景は、幾種類もの土壌が長い時間をかけて折り重なってできた地層を見るよう。アンサンブルのなかで異なるテクスチュアが美しい層を成しているのが感じられる。入りや歌いかけにはワイルドな肌触りがあり、大地をスコップで力強く掘っていく手掘り作業のよう。第4楽章では、その幾重にも重なった層を一辺に押しやるような力強さがあった。

後半の「ブラ1」でも同様のアプローチが聴かれた。時おりフレーズの終わりをぐっと溜めて踏ん張るのは、 地の底から湧き上がるエネルギーを受け止め、大地を持ち上げようとしているよう。第2楽章ではキュッヒルさんの甘美なヴァイオリン・ソロを楽しみにしていたが、弓を大きく使い、一弓ごとにアグレッシブなほど力強く訴えるヴァイオリンだった。これもエッシェンバッハの求めだろうか。

演奏は終盤に向かって盛り上がり、会場は大きな拍手とブラボーに包まれたが、個人的にはちっとも感動できなかった。第2楽章をあんなにアグレッシブにやることには違和感があったが、全体を掘り起こすように力強く攻めるやり方を悪いとは思わない。ただ、エッシェンバッハの意志がオケに完全に伝わって共鳴していたかどうかには疑問が残った。
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