8月7日(水)湯浅譲二 95歳の肖像 ~室内楽作品を中心に~
豊洲シビックセンターホール
【曲目】
1.ピアノ四重奏曲「トライアル」(2012)
vn:石上真由子、va:田原綾子、vc:山澤慧、pf:大瀧拓哉
2.弦楽四重奏のためのプロジェクションII (1996)
vn:成田達輝、vn:石上真由子、va:田原綾子、vc:山澤慧
3.ホルン・ローカス(2014)
hr:庄司雄大
4.芭蕉の俳句による心象風景(2007)
vn:成田達輝、pf:大瀧拓哉
5.弦楽四重奏のためのプロジェクション(1970)
vn:成田達輝、vn:石上真由子、va:田原綾子、vc:山澤慧
6.歌曲「おやすみなさい」(詞:長田弘) (2013)
sop:松原みなみ、pf:高橋アキ
7.内触覚的宇宙Ⅱトランスフィギュレーション (1986)
pf:高橋アキ
8.領域(Territory) (1974)
fl:内山貴博、cl:東紗衣、mar:悪原至、perc:安藤巴、cb:長坂美玖、cond:石川征太郎
僕にとってとても大切な作曲家である湯浅譲二氏が7月21日に亡くなったことをつい2日前に知った。ネット検索したら、もうすぐ95歳を迎えるはずだった湯浅氏の室内楽コンサートが予定されていたのを見つけ、奇しくも追悼コンサートになってしまった演奏会に駆けつけた。会場はほぼ満席。湯浅氏の訃報を聞いて集まった人も多かったことだろう。
曲目は、40年以上に渡る期間に書かれた室内楽作品。どの曲も新しい技法を取り入れるだけでなく、それらは自分の音楽の言葉として必然性を持ち、厳しく、メッセージ性を具え、それぞれがオリジナリティを有する湯浅譲二ならではの作品であると感じた。こうした作品たちの演奏を若手中心のプレイヤーが担った今夜の演奏会は、湯浅作品が将来に渡って演奏され続け、聴かれ続けて行くための一つの布石になったのではないだろうか。
その中でも心を強く捉えた作品(演奏)は、最初にやったピアノカルテットや、後半の最初に演奏した弦楽四重奏のためのプロジェクションなど。ピアノカルテットは鮮烈で熱く厳しい音楽。4つのパートががっちりと一体感を作って同じ方向へ進んで行き、最後の田原さんのヴィオラの歌が哀切を湛えていた。「弦楽四重奏のためのプロジェクション」は、特殊奏法を駆使し、多彩なテクスチャによる様々な響きが次々と現れ、そのどれもが必然として聴こえて来た。エキサイティングで挑戦的な音楽で、4人が一丸となって火花を散らす演奏も圧巻だった。若き湯浅の気概溢れる傑作だと感じた。
大瀧さんによるピアノの内部奏法が豊かな情景を映し出した「芭蕉の俳句による心象風景」も良かった。成田さんのヴァイオリンは芯が太くて、清澄で雄弁に孤高の世界を描いていた。最後に演奏した「領域」も鮮烈な響きに満ちた音楽だった。それぞれの楽器が能動的に語り、主張し、特別な響きを作り上げていった。ただ、指揮者が指示を出さない長い中間部分はプレイヤー達に演奏が委ねられているのだろうか。この部分が少々散漫な印象を持ったのは、演奏者の自発性や互いのコミュニケーションが十分ではなかったためかも知れない。
このホールのステージの背後はご覧のようにガラス張りで、丁度東京を襲った激しい雷雨による雷光がしばしばステージを照らし、湯浅さんが天から見つめているようにも思われた。日本の作曲界の大きな一時代を築き、世界的にも注目された1920~30年代生まれの作曲家の「骨のある」音楽が好きな僕にとって、そんな音楽を書く湯浅の新作をもう聴けないのはとても寂しいが、湯浅の音楽が更に評価を高めて行くことを願っている。
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vn:成田達輝、vn:石上真由子、va:田原綾子、vc:山澤慧
3.ホルン・ローカス(2014)
hr:庄司雄大
4.芭蕉の俳句による心象風景(2007)
vn:成田達輝、pf:大瀧拓哉
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vn:成田達輝、vn:石上真由子、va:田原綾子、vc:山澤慧
6.歌曲「おやすみなさい」(詞:長田弘) (2013)
sop:松原みなみ、pf:高橋アキ
7.内触覚的宇宙Ⅱトランスフィギュレーション (1986)
pf:高橋アキ
8.領域(Territory) (1974)
fl:内山貴博、cl:東紗衣、mar:悪原至、perc:安藤巴、cb:長坂美玖、cond:石川征太郎
僕にとってとても大切な作曲家である湯浅譲二氏が7月21日に亡くなったことをつい2日前に知った。ネット検索したら、もうすぐ95歳を迎えるはずだった湯浅氏の室内楽コンサートが予定されていたのを見つけ、奇しくも追悼コンサートになってしまった演奏会に駆けつけた。会場はほぼ満席。湯浅氏の訃報を聞いて集まった人も多かったことだろう。
曲目は、40年以上に渡る期間に書かれた室内楽作品。どの曲も新しい技法を取り入れるだけでなく、それらは自分の音楽の言葉として必然性を持ち、厳しく、メッセージ性を具え、それぞれがオリジナリティを有する湯浅譲二ならではの作品であると感じた。こうした作品たちの演奏を若手中心のプレイヤーが担った今夜の演奏会は、湯浅作品が将来に渡って演奏され続け、聴かれ続けて行くための一つの布石になったのではないだろうか。
その中でも心を強く捉えた作品(演奏)は、最初にやったピアノカルテットや、後半の最初に演奏した弦楽四重奏のためのプロジェクションなど。ピアノカルテットは鮮烈で熱く厳しい音楽。4つのパートががっちりと一体感を作って同じ方向へ進んで行き、最後の田原さんのヴィオラの歌が哀切を湛えていた。「弦楽四重奏のためのプロジェクション」は、特殊奏法を駆使し、多彩なテクスチャによる様々な響きが次々と現れ、そのどれもが必然として聴こえて来た。エキサイティングで挑戦的な音楽で、4人が一丸となって火花を散らす演奏も圧巻だった。若き湯浅の気概溢れる傑作だと感じた。
大瀧さんによるピアノの内部奏法が豊かな情景を映し出した「芭蕉の俳句による心象風景」も良かった。成田さんのヴァイオリンは芯が太くて、清澄で雄弁に孤高の世界を描いていた。最後に演奏した「領域」も鮮烈な響きに満ちた音楽だった。それぞれの楽器が能動的に語り、主張し、特別な響きを作り上げていった。ただ、指揮者が指示を出さない長い中間部分はプレイヤー達に演奏が委ねられているのだろうか。この部分が少々散漫な印象を持ったのは、演奏者の自発性や互いのコミュニケーションが十分ではなかったためかも知れない。
このホールのステージの背後はご覧のようにガラス張りで、丁度東京を襲った激しい雷雨による雷光がしばしばステージを照らし、湯浅さんが天から見つめているようにも思われた。日本の作曲界の大きな一時代を築き、世界的にも注目された1920~30年代生まれの作曲家の「骨のある」音楽が好きな僕にとって、そんな音楽を書く湯浅の新作をもう聴けないのはとても寂しいが、湯浅の音楽が更に評価を高めて行くことを願っている。
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