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検証「日本の常識」 ~マスク~

2010年01月10日 | ウィーン&ベルリン 音楽の旅 2009
マスクは日本人にとって生活必需品とも言えるが、ドイツやオーストリアのみならず欧米諸国でマスクを着用している人を日常みかけることはまずない。ドイツ人にマスクをすることはあるかと尋ねたことがあるが、「マスクをするのは手術室の医者と銀行強盗だけだ」という返事が返ってきた。

新型インフルエンザが世界に広まり始めた頃、日本では水際の空港での徹底したチェックが行われ、「豚インフルエンザが日本で広まるのも時間の問題」と言われながらも、どこかでウィルスの上陸を防げるのではと本気で思っていた節もあった我々日本人は、過剰にウィルスを警戒し、普段にも増して誰もがマスクを着用した。

僕がウィーンへ出発したのは丁度その頃、神戸を中心に豚インフルが広まる直前で、成田空港では検問官も案内の人も、売店の人もみんな揃ってマスクをしていた。空港まではノーマスクで来た僕も楽しい旅行が台無しになってはとマスクをかけた。機内でも日本人はみんなマスクをしていたが、このマスク姿もウィーンの空港に着くと途端に見かけなくなった。

町中でマスクをしている人はやっぱり全然いない。オーストリアでもドイツでも豚インフルの感染者数は日々増えていた頃だが、それでマスクをするということはないようだ。ウィーンのオペラ座(シュターツオーパー)に行ったとき、セーラー服を着た日本の女子高生の団体が揃ってみんなマスクを着けて客席に座っているのを見かけたが、現地の人達の目にはさぞ異様な光景に映っていたことだろう。

現地では新聞を毎日チェックするようにしていたが、10日間の滞在中に「豚インフルエンザ(Schweinegrippe)」の文字を見出しで見かけたのは2回だけ。連日連夜豚インフルのニュースを流し続ける日本の報道の嵐とのあまりの温度差に戸惑いすら覚えた。

旅行中に見つけた豚インフルについてのその2つの記事の1つでは、「インフルエンザワクチン争奪戦」という大見出しと共に日本についての状況を大きな写真付きで伝えていた。記事では豚インフルが世界中に広まりつつある状況を伝えたあと、
「日本では豚インフルの拡散予防のために4000以上の学校や幼稚園が閉鎖された。神戸や大阪などの大都市で患者から豚インフルのウィルスが確認されたあと、人々はマスクを着用している。日本の豚インフル患者数は178人で、専門家は首都東京にも病気は広まるだろうと予測している。人口3600万人の首都圏は世界最大。」
と報じている。

"DIE WELTは"ドイツで代表的な全国紙の1つ
不安な日本
日本では4000の学校や幼稚園が閉鎖され、みんなどこでもマスクをしている

と書いてある。(09.5.21)
 [クリックで記事を拡大]

見出しと関連したワクチン争奪戦の話はこの後に出てきて日本の話題とは特に関係がないのだが、日本でのマスク姿の写真が詳しいコメントと共に掲載されているのは興味深い。ドイツ人にとってインパクトが強烈なマスク姿の写真を掲載することで、日本でこの疫病がいかに深刻に受け止められているかを伝えようとしているようだ。国が違うと同じマスクでもそれが人々に与える印象がいかに大きく異なるかの好例だろう。

でも欧米諸国ではなぜマスクをしないのだろうか。マスクが顔の広い部分を隠してしまうことが犯罪の温床になるという懸念があるから?フランスの公立学校でイスラムの女子生徒が宗教色が強いという理由でへジャブを着用することが禁じらて議論になっているが、これも顔を隠すことが問題なのではという気がする。顔を隠していいのは年に一度の無礼講が許されるカーニバルの時だけ、という不文律のような意識があるのかも知れない。

ところで日本でマスク姿を一番多く見かける季節は何と言っても花粉の頃だろう。ドイツにも花粉症で苦しむ人はたくさんいて、花粉が飛ぶ季節になると花粉飛散情報や花粉対策のニュースが流れる。

ドイツの花粉対策を見てみると、「窓を開けない」「外出から帰ったら家の外で花粉を払い落とす」「洗顔する」など日本と同じような対策が並んでいるが、唯一の大きな違いは「マスクをする」という最も有効なはずの対策がどこにも見当たらないこと。花粉症の僕がドイツを訪れた5月はいろんな花粉の飛散がピークを迎える時期だが、幸いそれらの花粉には反応しなかったので助かった。もしドイツでスギやヒノキの花粉飛散時期に当たってしまったらさぞや辛いだろうな…

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