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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ヘルマン・プライの「詩人の恋」(1990/サントリーホール)

2020年05月23日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
シュライアー、フィッシャー=ディースカウと共に、僕にとって外すことのできない大切な歌い手のヘルマン・プライの存在を強く認識したのは、まだ僕が恐らく高校生の頃にNHKで正月に放映された「フィガロの結婚」での武骨で人間臭いフィガロ役を観たときだった。指揮はベーム、スザンナがフレーニ、伯爵はディースカウ、伯爵夫人はテ・カナワ。これでモーツァルトのオペラにハマり、プライにホレた。その後、プライのリサイタルには随分行った。その中から3つのリサイタルの感想をアーカイブに記しておきたい。

pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1990年 11月12日(月)
ヘルマン・プライ(Bar)/レナード・ホカンソン(Pf)
サントリーホール
1.シューマン/ケルナーの詩による12の歌曲Op.35 ☆
2.シューマン/歌曲集「詩人の恋」Op.48 ㊝

(アンコール)㊝
1.シューマン/? 
2.シューマン/献呈
3.シューマン/2人のてき弾兵
4.シューマン/セレナーデ

 熟成したすばらしい名唱の数々をたっぷりと味わった。プライの声は深い年輪が刻まれ人生のあらゆる感情を歌い上げていく。そのうえまだまだ現役バリバリの輝きとつやのある強い声があればこれ以上望めない歌の表現が実現される。「詩人の恋」では低い方(バージョン)で歌っていたが訴える力は十分だ。1曲1曲やや遅めのテンポでじっくりとたっぷりと歌っていく。刃金のような強さと使い古された言葉かも知れないがいぶし銀のような渋さを持ってケルナーの、ハイネの詩の世界を作り上げて行く。深く、太く、様々な姿を孕んだ大河の流れを感じる歌だ。詩人の名と作曲家を日本語で紹介しながら歌った4曲のアンコールで会場は最高潮に盛り上がった。聞く者の心を熱くさせずにはいられない人間的な暖かさと味わいを持ったプライ。ほんとうにすばらしい。伴奏のホカンソンは詩の内容を敏感に捕え、立体感のあるピアノを弾いた。


学生時代にFMでエアチェックしたプライが歌うシューマンの作品39のリーダークライスの第1曲「異郷にて」を聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。全体を覆う寂寥感、身体の底からこみ上げる熱い郷愁… アイヒェンドルフの詩が切々と胸に沁みた。あんまり感動したので「音友」の読者のページに投書して載せてもらったことも思い出す。プライの歌の魅力はこの人間的な味わい深さだ。この日の「詩人の恋」も、他のどんな素晴らしい歌手よりも親密な包容力で僕の心に近しく温かく寄り添ってくれた。終演後、チラシにサインをもらったときのプライの優しく頼もしく包み込むような眼差しも忘れられない。
(2020.5.23)

ヘルマン・プライの「白鳥の歌」
フィッシャー=ディースカウの「シューマンの夕べ」
フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」
ペーター・シュライアーの「美しき水車屋の娘」
♪ブログ管理人の作曲♪
「金魚のお墓」~金子のみすゞの詩による歌~
(S:田村茜)

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