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芸大ハイドンシリーズ オーケストラ演奏会(ボッセ指揮)

2009年11月07日 | pocknのコンサート感想録2009
11月7日(土)ゲルハルト・ボッセ指揮 東京藝大チェンバーオーケストラ
~藝大プロジェクト2009 ハイドン没後200年特別企画~
東京芸術大学奏楽堂
【曲目】
1.ハイドン/ミサ曲変ロ長調Hob.XXⅡ:14「ハーモニー・ミサ」
 S:澤江衣里/A:梁取 里/T:伊藤達人/Bar:加耒 徹/合唱:東京芸術大学声楽科有志合唱団
2.ハイドン/ピアノ協奏曲ヘ長調Hob.XⅦ:3
 Pf:アヴォ・クユムジャン
3.ハイドン/交響曲第104番ニ長調Hob.I:104「ロンドン」

芸大のハイドン・シリーズは99年から11年も続いている長期的なプロジェクト。これまで室内楽の演奏会を何度か聴いたがオーケストラコンサートは初めて。

前半に置かれたのはハイドンの最後のミサであるハーモニーミサ。芸大生の精鋭で構成されたオーケストラと合唱団から87歳になる老匠ボッセは明るく生き生きとした瑞々しい音楽を引き出した。軽やかなテンポ、躍動感溢れるリズム、そして自然に湧き出るような歌がとても清々しい。合唱の艶やかで濃い響きの歌声が、神様を明るく高らかに讚美していた。

4人のソリスト達もいい。中でもソプラノの澤江さんがクレドの「精霊によって、処女マリアより体を受け・・・」で聴かせてくれた清澄で気高い歌と、テノールの伊藤さんの輝きのある極めつきの美声が印象に残った。バランスのとれた四重唱のアンサンブルも良かった。終曲「アニュス・デイ」での喜びに溢れた"dona nobis pacem"でハイドンの音楽の持つ明るく活き活きとした魅力を改めてかみしめた。

次に演奏されたピアノコンチェルト、ソロのクユムジャンはとても豊潤な響きで歌い、躍動感のあるピアノでアピールしたが、ボッセがオケから引き出す音楽との毛色の違いにちぐはぐさを感じた。第2楽章でもピアノはよく歌っていたがオケと比べると音が大きすぎてピアノの独り舞台という感じ。小編成のオケ伴に対してスタインウェイのフルコンがオケのトゥッティの部分まで併奏するのも変に目立ってしまう。オケの方も前のミサに比べ萎縮してしまっているようにも見えた。

しかし次のロンドンシンフォニー、弦を10型に増強したオケがまた息を吹き還した。ボッセの指揮から生まれる音楽は本当に活き活きとしていて若々しい。2月に聴いたブリュッヘンのような年寄り臭さは全く感じられず、テンポといい息遣いといい、そこには生命力がみなぎっている。伸び伸びと歌う弦、歯切れ良く響きに薬味を効かせる管楽器、アンサンブルが脈々と息づいている。第3楽章メヌエットは小躍りするような軽快なテンポだ。

一方で第1楽章の序奏に続く弦の語り掛けや、第2楽章での絶妙な対話などから伝わる深い味わいは老匠ならではの語り口。第3楽章のトリオやフィナーレの第2主題で聴かせる柔らく香り高いニュアンスも深い年輪を感じる。

力むことなく自然体で楽しげに演奏しながら活力が溢れ、ニュアンスにも富んだ実に魅力的なハイドン。ボッセの指揮にここまで応えた芸大チェンバーオーケストラの力量もさすがだ。ボッセと芸大生オケによるハイドンのシンフォニー、もっともっと聴きたくなった。

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