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ジュリアード弦楽四重奏団&上海クァルテット

2009年11月24日 | pocknのコンサート感想録2009
11月24日(火)ジュリアード弦楽四重奏団&上海クァルテット
メンデルスゾーン生誕200年記念特別演奏会
紀尾井ホール
【曲目】
1.バルトーク/弦楽四重奏曲第2番Op.17
ジュリアード弦楽四重奏団
2. ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番ハ長調 Op.59-3 「ラズモフスキー第3番」
上海クァルテット
3. メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲変ホ長調 Op.20
ジュリアード弦楽四重奏団&上海クァルテット
【アンコール】
メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲~第3楽章スケルツォ


メンデルスゾーンのオクテットは今年演奏会でもう2回聴いているが、カルテット界の大御所ジュリアードと、そのジュリアードの薫陶を受けた気鋭のカルテットということでずっと気になっていた上海クァルテットの共演で聴けると知って今年3度目のオクテット体験をすることにした。2つのカルテットの単独ステージも楽しみな曲が並んだ。

まずは評判高いジュリアードによるバルトークは、以前このカルテットを聴いて抱いたイメージがさらに高まる内面性と熱気を備えた秀演となった。大袈裟な感情表現という手段を用いず、落ち着きのある柔かな息遣いで丁寧に曲の細部まで描き、美しい響きを作り上げて行く。外から煽り立てられるのではなく自発的に中から徐々に熱が高まり、ついには炎を発しメラメラと燃えるような高まりへと静かに導かれて行くシーンは感動的。最後のヴィオラとチェロのピッチカートの一撃が胸にぐさりと突き刺さってきた。品格と熱気、集中力のある見事なこうしたバルトーク演奏は長い年月、世界のトップで活躍してきたカルテットのみが達し得る境地だろう。新入りというファーストヴァイオリンのニック・エーネットも繊細な感性と確かな技で完全にメンバーの一員としてこの演奏に貢献していた。

替わって登場した上海クァルテット、最初の序奏から既にリアルで外向きの音がしてジュリアードとの違いがくっきり現れていたのは面白かった。上海クァルテットのベートーヴェンは勢いがあり力に満ち、果敢に立ち向かって来る。要所でテンポを溜めたり、情熱的にルバートをかけたり、とてもドラマチックな演奏で訴えて来る。第1楽章の展開部の集中力と気迫は圧倒的だった。第2楽章も各パートがとても能動的に訴えてきたが、個人的にはこの楽章はチェロのピッチカートのモノローグを他のパートが影のように浮かび上がらせて欲しい。第4楽章ももちろん熱演ではあったがちょっと頑張り過ぎ。緊張と弛緩の「弛緩」ではもっと軽く柔らかくふわりとやってくれるとコントラストが余計に引き立つと思う。

そんなタイプの違う2つのカルテットが共演したメンデルスゾーンのオクテット、2つのカルテットのメンバーが殆ど向かい合うように逆V字型に並ぶという珍しい並び方。ジュリアードが第1パート。このアンサンブルでリードヴァイオリンの役ともいえる第1パートの第1ヴァイオリンをエーネットはとても柔軟で伸びやかに、美しい音色で歌い魅了し続けた。ジュリアードのチェロ、ジョエル・クロスニックも絶妙なテンポのタイミングを与えてアンサンブルをまとめていた。

2つのカルテットの個性が対立するのではなく、上海クァルテットのエネルギッシュな魅力とジュリアードの自然な息遣いによる質の高いアンサンブルが合わさり、とても充実した活き活きとした、しなやかで感性豊かな演奏となり、常に楽しませてくれた。欲を言えばお互いがもっと笑顔でリラックスして見つめ合いながら演奏を進める余裕が欲しかったが、これもアンコールで実現した。アンコールで演奏されたスケルツォはとても軽やかな息遣いとステップで踊っているような雰囲気が出ていて本割りよりも更に魅力的だった。お互いとても楽しそうに演奏していたのも印象的だった。

ライプツィヒ弦楽四重奏団+紀尾井シンフォニエッタのオクテット (2009.7.24)
アーティストサロンに集う仲間達 (2009.7.24)

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