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ヴェンツェル・フックスを迎えて ~室内楽とクラリネットアンサンブル~

2015年07月09日 | pocknのコンサート感想録2015
7月9日(木)ベルリン・フィル首席クラリネット奏者 ヴェンツェル・フックスを迎えて
文部科学省国立大学機能強化事業「 国際共同プロジェクト」
東京芸術大学奏楽堂


【曲目】
1.ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第4番 変ロ長調 Op.11「街の歌」
2.シューマン/クラリネットとヴィオラとピアノのための「4つのおとぎ話」Op.132 
3.プーランク/クラリネット・ソナタ
Cl:ヴェンツェル・フックス(1,3)、山本正治(2)/Vla:川和憲/Vc:河野文昭/Pf:伊藤恵
♪ ♪ ♪

4.ヴェルディ/稲垣征夫編曲/歌劇「運命の力」序曲
5.coba/30人のクラリネット達人のための~英雄の嘆き
6.メンデルスゾーン/ルッケッタ 編/コンツェルトシュテュック第2番 ニ短調 Op.114
【アンコール】
モンティ/チャールダッシュ

Cl:ヴェンツェル・フックス、バセットホルン:十亀正司
三界秀実 指揮 東京藝大クラリネットアンサンブル


ベルリンフィルの首席クラリネット奏者、ヴェンツェル・フックスを交えて行われる藝大奏楽堂でのコンサートは、毎年この時期のおなじみの催しになった。室内楽に加え、今回は後半でクラリネットを専攻する学生たちの大編成のクラリネットアンサンブルにフックスも加わるプログラムが興味を引いた。

前半最初のベートーヴェンの「街の歌」。これはフックス、河野、伊藤の感性が鮮やかに共鳴し、スピード感溢れる生き生きとしたアンサンブルを奏でた。フックスのクラは機転の利いた歌い回しや息づかいの妙が冴え、河野のチェロは明瞭な発音から奏でられる彫りが深く明快なチェロのラインを描く。伊藤のピアノは水を得た魚のように瑞々しく楽しげに泳いで跳ねる。 3 人が当意即妙に交感し合って作り上げる三重奏からはライブ演奏の醍醐味が伝わってきた。続くシューマンでは、山本の淀みのない滑らかでキレイなクラリネットの音色に耳を引かれたが、アンサンブルとしては「おとぎ話」を思わせるファンタジーがもっと欲しがった。

プーランクはフックスの変幻自在のクラリネットに魅了された。フックスはこのソナタの目まぐるしく変わる表情のエッセンスを感覚的に瞬時に捉え、パントマイムの演技のように、その場面に最も相応しい形を作って宙に放つ。「無」から立ち上がる最弱音の、綿毛のような柔らかな軽さにも息を呑んだ。
恵さんのピアノも実に柔軟で、フックスと多彩な球を投げ合うキャッチボールを楽しんでいるよう。第3楽章は更に興に乗り、スリリングでエキサイティングに疾走して大きな拍手とブラボー。

後半は藝大の学生を中心に編成されたクラリネット族ばかり30人のアンサンブルにフックスも加わって大規模な曲目が演奏された。クラリネットの音色が合わさることで特徴のある響きが生み出されていたが、なかでもインパクトがあったのはアコーディオン奏者のcopaが作曲した「英雄の嘆き」。クラリネットの音域による音色の違いの特質を生かし、自由自在に曲想を変化させて聴き手の心をくすぐり、揺さぶり、焚き付けるアグレッシブで刺激的な音楽。クラスター書法による高音域の「叫び」で、一緒に演奏しているフックスが「騒音」に耐えかねたかのように顔を歪めている姿もおかしかった。

学生達の演奏はスピーディーで鮮やか。軽快でノリが良く、急速なパッセージも難なくこなし、ワクワクの臨場感を満喫させてくれた。藝大生にこんなこと言ったら反って失礼かも知れないが、これだけのテクニックを要する曲でもリードミスが1つも聞こえてこなかったのはさすが!

アンコールでは、またまたフックスの名人芸を楽しめた。ヴァイオリンならハーモニックスで演奏するパッセージでフックスはどんな音を聴かせてくれるか期待したが、ここは普通の低音域での演奏だった。

フックスは毎年この時期に藝大に来て、学生達のソロやアンサンブルのレッスンを行ってくれるということだが、世界を代表する名プレイヤーのレッスンを受けられるだけでなく、こうして同じステージで共演できる今年の企画は素敵だった。学生たちの目が輝いていた。

藝大 管打楽器シリーズ2013 ヴェンツェル・フックスを迎えて 2013.7.17 藝大奏楽堂

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