コトありで考えたこと

残らない記憶、消えていく記憶

認知症の母のサポートをするようになって、もう5年ほど経つ。
今は何年何月何日の何曜日なのかもわからなくて、
自分の年齢すらはっきりわからなくなっている。

毎日「今日は何日?」「今日は何曜日?」と繰り返し聞いてくる。

毎日が休日のような母の生活では、その日が何曜日であっても、
あるいは何曜日か把握していなくても、なんの支障もないわけだが、
それでも一日に何十回と同じことを聞いてくるので、
そのたびに「今日は12月8日の金曜日よ」というふうに答える。

でも1分後にはもう私にその質問をしたことすら忘れてしまうので、
ひどい時には5分に1回、同じ質問を繰り返している。
要するに一番近い過去に起こったこと、
話したことが記憶に残らないのだ。

 

 

他にも自分が今何をしていたのか、どういう状況にいるのかが
突然わからなくなり、パニックになって電話してくる。

特に父の姿が見えないと、
父が出かける時はきちんとメモにどこへ出かけて
何時に帰ってくるか書いていても、
母はそのメモを読んだ10秒後にはメモの存在すら忘れてしまうので、
パニックになる。

父は何時に帰ってくるから、
父が帰ってくるまで私が一緒にいるからね、と
言って、すぐに実家に駆けつける。

誰かそばにいて、あれこれ話していると安心する。

ただその会話も、会話にならないような堂々巡りになるので、
こちらは同じ質問に同じ答えをすることにだんだん疲れてくる。

新しい出来事はもう母の記憶には全く残らない。

それなら、
母がまだ覚えている母が子どもだった頃の話をすればいい、と思い、
故意に昔の話題を出すようにしているが、
その過去のことも近い順から、記憶から消えていきつつある。

60年前までのことなら鮮明に記憶に残っているらしい。

だが、5~50年前の記憶がだんだん薄れていっている。

自分が何者であるかは、記憶によって認識できるものなのに、
今それが薄れて壊れつつあるのが、そばで見ていて悲しい。

そのうち、私が誰なのかもわからなくなる時が来るのかもしれない。
それでも一番近い存在として、母に寄り添っていきたいと思っている。

(12月11日 紫乃記)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「紫乃」カテゴリーもっと見る