オコジョ、チャート・レビュー

洋楽チャートの感想や予想を長々と述べます。速報性はありません。

ジャンル別・年間平均トップ10占有率2022年度版(総まとめ)

2023-03-19 | チャート解析

 

1か月前のことだけど、

ハードロック・バンドのフォール・イン・リヴァースの新曲 "Watch The World Burn" が、バンド初となる全米総合チャート入りを達成した。

...凄まじいメタルと、ラップの曲だった。

フォール・イン・リヴァースって、名前はずっと前から知ってたけど、

こんな、こんな破壊力のあるバンドだったとは...。🔥

 


 

ためしに2019年のデータでジャンル別に年間上位平均占有率を求めてみる」「ジャンル別・年間平均トップ10占有率2017年度版」という記事の続きで、これらの最終回みたいな感じです。

また、「年間チャートを使って2022年の米音楽市場をおさらい」という記事の補足でもあります。

いずれにしても、(リンクは一応貼ったけど)これらの記事は全然読んでなくても大丈夫なので、軽い気持ちで本記事を読んで下されば幸いです。

 

今回やること→ ジャンル別に2022年の年間平均トップ10占有率を出して、過去の数字と比較する!

 

※全米シングル・チャートの話です!

 

0.ジャンル別年間平均トップ10占有率とは

 1年間は52週なので、全米チャートは52回分あるわけですが、その52回分すべてに対して、Top10を構成する楽曲のジャンル内訳を明確にして、それらをジャンルごとにそれぞれ足し合わせ、52で割ることで出せるあるジャンルの1年間のTop10における平均シェアです。ジャンルごとに、平均してTop10のどれぐらいを占めれていたかをはかります。個人が勝手に長ったらしい「ジャンル別年間~...」という言葉を作ってやっていることなので当然出た数値に関する公式の基準とかはないのですが、1を超えたら、そのジャンルはその年は人気ジャンルだった、といってもいいと思っています。Top10に平均で(そのジャンルの曲が)1曲以上がランクインしていた、ということなので、平均シェアは10%~ですね。「ジャンル別年間~...」は長いし読みづらいのですが、うまく略せないのでそのまま使いまくることをご容赦ください。😅

 

1.これまでのジャンル別年間平均トップ10占有率

 では、2022年のジャンル別年間平均トップ10占有率を出していきますが、その前に、これまでの結果を確認します。2018,2020,2021年度分も導出して、こうなりました。

 

(※小数第3位を四捨五入) 

 

 上表に関して、1を超えているか否かの論をすると、ポップとヒップホップは安定して超えているのに対して、ロックやカントリーはこれまで(過去5年間で)1度も超えていません。また、R&Bはだんだんシェアを伸ばしていって2020年に1を超えましたが、EDMは逆に縮小していきました。ジャンルごとの折れ線グラフ的な話はあとでするとして、過去5年間の全米チャート上位におけるジャンル人気をざっくりいうと、こんな感じで十分だと思います。

 

2.2022年のジャンル別年間平均トップ10占有率

2-1. ポップ

 安定して人気ジャンルを保ち続けている、ポップ・ミュージックです。52週についてTop10内のポップ・ソング数をそれぞれカウントしたところ、下図のようになりました。横軸は左から、2022年第1週、第2週...です。

 

 

 特に序盤、ポップ・ソングのTop10占有率が高いですね。エド・シーラン、エルトン・ジョン、デュア・リパ、アデルとUKシンガー勢がすごく調子が良かった時期だったと記憶しています。そこにハリー・スタイルズも加わって、UK出身勢は最強でした。ところが、だんだん占有率は下がっていって、5~6月頃にはTop10にランクインしたポップ・ソングがハリー・スタイルズ "As It Was" のみという週も。序盤のUK勢が勢いを落としてTop10からどんどん抜けていくのは自然なことなので別にいいのですが、それらに代わって新たにTop10入りするポップ・ソングがなかったというのはこの指標上かなりマイナスかなと思います。第21週あたりで一気に増えていますが、これはすべてハリー・スタイルズの曲で、かつ7月からのランクイン数回復にも彼の "Late Night Talking" が貢献しているので、2022年中盤はほぼ彼のみの大活躍です。そして終盤、少し回復したとはいえ序盤の勢いには戻れず、30%ぐらいのシェアにとどまりました。なお、飛びぬけている第43週はテイラー・スウィフトの新アルバム『ミッドナイツ』収録曲10曲が初登場でTop10を独占した週です。

 ポップの年間平均トップ10占有率は2.81でした!序盤のシェアは高かったものの、やはり中盤の停滞が効いたと思われます。平均でTop10の25%を占めていた、という解釈ですね。過去5年間と比べると、まあまあ...といった数字。前年よりは低いけど、2017、2018、2020年よりは高いから、全体的にはだんだんポップのジャンル人気は上がっていっている...といっていいのかな?本当に少しずつだし、アップダウンがあるから分かりにくいけど。ともかく、2022年もポップ・ミュージックは強いジャンルで、人気はやはり安定していることが分かりました!

 ...ちなみに、テイラー・スウィフトの独占週を除いて計算したら、2.67になりました。ギリ上の段落で主張したことが通せる数字でしたが、いやはや、これが飛び値か...。🐇

 

2-2.ロック

 続いて、ロック・ミュージック。個人的には一番好きな音楽なのですが、ジャンル人気はどんどん落ちてしまっていて、まさに瀕死状態のジャンルです。Top10から遠いジャンルと言っても過言ではないのでこの分析は適していないかもしれませんが、とりあえず2022年のデータを見てみます。

 

 

 "Heat Waves" という曲がありました!英オルタナティヴ・ロック・バンドのグラス・アニマルズによる2021~2022年の大ヒット曲で、全米チャート史上最もロング・ヒットした曲としても有名になっています。なので、グラフ前半の1曲はすべてこれで、本当に長く、粘り強く上位を維持してくれていました。中盤で増えたのは、英ロック・シンガーのケイト・ブッシュによる "Running Up That Hill ( A Deal With God )"(邦題:「神秘の丘」)の37年振りのリバイバル・ヒット。Netflix の人気ドラマ・シリーズで1985年リリースの同曲が大胆に使用され、再ブームが起きました。「神秘の丘」がTop10圏外になってからはそれに代わるロック・ソングはもはや入ってきませんでしたが、1年に2曲ロックが大ヒットしただけでもすごいことです。

 そして年間平均トップ10占有率は0.85!惜しい!!もしかしたら平均で1いくかな、と期待していたのですが、この年もダメでした。とはいえ、過去6年間では最高水準。2021年に続いて上がり調子です。年間で1、2曲しか大ヒットしないようなジャンルで、細かい数字に意味があるのか、ジャンル人気がどうとか全体的なことをいっていいのか、と問われれば言い返すのが苦手ですが、"Heat Waves" や「神秘の丘」のロングヒットも、ロックがある程度人気があったから実現したのではないでしょうか。人気がまったくないジャンルだったら、一曲ブレイクしそうになっても、それは一時的で長続きしないかもしれません。

 

2-3.カントリー

 カントリー・ミュージックもロックと同様、昔は大人気だったけど現代ではメジャーではないジャンルで、チャートの中くらいから下位までにはたくさんランクインできるのですが、なかなかその年を代表する大ヒットといったところにまでは上がってこれません。ただ、最近は数名のアーティストを中心に現代の音楽市場に合わせたカントリー・ミュージックがいくつかヒットしていて、それらを通してカントリーは年々ジャンル人気が上昇している感じがします。去年のデータです↓。

 

 

 うーん...思ったより良くなかったですが、でも、決してゼロではありませんでした。カントリーの人気上昇は、Top10レベルではまだ確認できなかったといえます。後半期にTop10入りした2曲はモーガン・ウォーレンの "You Proof" とルーク・コムズの "The Kind Of Love We Make" で、どちらも大ヒットしましたが、前者は特にロングヒットにもなっている一方で、後者はカントリーが売れにくいイギリスでも珍しくチャートインしてヒットしています。なお、2022年はもう一曲、モーガン・ウォーレンの "Don't Think Jesus" がTop10入りしたので全3曲が新しくTop10入りしました。

 

 年間平均トップ10占有率は0.23!過去5年間と比べて、並み、といった感じの数値ですね。しかしながら、2017~2019年と比べると2020~2022年は確かに数字が向上していて、先ほど述べた「1年間に新しくTop10入りしたカントリー・ソング数」も2017、2019年は1、2018年は0曲なのに対して2020~2022年はいずれも3曲です。少しずつですが、ジャンル人気は上がっていると解釈しても間違いではないでしょう。

 

(※再掲)

 

2-4.R&B

 アメリカがメインというイメージはあるけど、ヒット曲に限っては遠い国でもしっかりヒットするR&B音楽。最初の方で述べたようにR&Bのシェアは上昇中でしたが、2022年もその軌道に乗れていたのでしょうか。

 

 

 グラフが上下していて、安定的に大ヒットしていた曲が少なかったかのような印象を受けます。前半期はシェアが弱かったみたいですね...、思い出してみると、年頭の1がドージャ・キャット "Need To Know"(前年の大ヒットの続き)で、第11週ごろからの1もドージャ・キャットの "Woman" でした。少しシェアが伸びた後半期はより多くのアーティストが活躍しています。日本出身R&BシンガーのJojiと、再始動した歌姫ビヨンセ、そしてジ・インターネットのスティーヴ・レイシーですね。スティーヴ・レイシーの "Bad Habit" は全米1位のモンスター・ヒットかつ安定的なヒットで、よく考えたらジグザグしている第43週と第45週はテイラー・スウィフトとドレイク & 21サヴェージがそれぞれTop10を独占した週でした。

 年間平均トップ10占有率は0.79に!残念ながら前年から大幅下落です。2019年からの継続的なシェア上昇には具体的にザ・ウィークエンドとドージャ・キャットの大成功が大きく寄与していて、2022年もこの2人の積極的な音楽プロモーション活動が確かにあったのですが、にもかかわらず去年はR&Bシーンがあまり盛り上がりませんでした。...というと語弊がありますね。比較的、です。すみません。ともかく、ここ数年でどんどん拡大してきていたR&B音楽の全米Top10におけるシェアは、ここで一旦落ち着くことになったようです。🍵

 

(※ドージャ・キャットはR&B?ラッパーではなく?...と思われる方がいらっしゃると思います。あくまで個人的な判断です。ご了承願います。)

 

2-5.ヒップホップ

 自分は知らなかったのですが、今年でヒップホップ誕生から50年だそうです。ヒップホップは誕生期に大きな盛り上がりを見せた後、その盛り上がりを決して大きく崩さずに2010年代まで人気を維持し続け、10年代後半に再びバーンと大爆発したような印象です。特に2018年の5.55という数字は恐ろしいもので、この年はTop10の半分が常にヒップホップに占められていた...というふうに解釈できます。...事実、ほとんどそんな感じでした、10曲中9曲が平気で占められていて、しかも9曲全部異なるアーティスト(ラッパー)の曲だったりして。2019年以降はさすがに少し落ち着きましたが、2022年はどうだったのでしょうか。

 

 

 めっちゃジグザグしてる...。過去の記事で2017年と2019年のジャンル別年間平均トップ10占有率を調べたときもヒップホップのグラフは不安定でしたが、これほどではありませんでした。おかげで少し見にくいですが、ざっと、やや高水準からスタートして中盤にかけてさらに占有率を上げていったものの、第26週ごろの6曲をピークにそれ以降はシェアは減少に転じ、年末に向けてどんどん減っていった、とまとめられます。活躍したのは、ポスト・マローン、ドレイク、フューチャーといった常連ヒット・メイカーや、ラトー、リル・ナズ・X、リゾといった旬のアーティストたち。後半期には、ニッキー・ミナージュも久々に大ヒットを飛ばしましたね。第20週の8曲はその半分をケンドリック・ラマーの新曲が占めた現象で、第45週の飛び値はドレイク & 21サヴェージが新アルバム『Her Loss』のリリースで起こしたTop10中8曲独占現象です。ヒップホップはこういうのが多いから、グラフがジグザグするんでしょうね。

 年間平均トップ10占有率は3.58で、意外と大きかった!2021年の前年からのシェア大幅下落による減少傾向は2022年にも続いたように感じていたのですが、見当違いでした。減少するどころか、かなり高い水準にまで回復していますね。Top10に平均で3.5曲がランクインしていたということになると、2022年もシェアは他ジャンルを出し抜いて1位です。ポップ・ミュージックとは対照的に、継続的に多くの楽曲がTop10入りして高シェアを守ったようなイメージ。ヒップホップは相変わらず大人気のジャンルであることが、今回の指標から分かりました。ただ、「年間チャートを使って2022年の米音楽市場をおさらい」の記事ではちょっと違ったことも書いているので、面倒くさいですがよかったら一読してみてください。📖

 ...現象が起きた第18週、第20週、第25週、第42週、第45週を除いた補正値は、3.21。...特に言うことはありません。

 

2-6.EDM

 最後に、ダンス・ミュージックの占有率を調べます。傾向的には、2017年から下げ調子で存在感がどんどん薄くなってしまっているEDMですが、復活の兆しは見えるのでしょうか。

 

 

 うー...、どうやら今年もダメだったみたいですね。少なくともTop10レベルでは、ですが。ビヨンセやドレイクといった大物が自身の音楽にダンス・ミュージックを取り入れたりして注目を浴びましたが、この指標ではビヨンセ→R&B、ドレイク→ヒップホップとアーティストごとにジャンルを固定してしまっているのでなかなか柔軟にそういった事象を反映させられません。曲ごとにジャンルを考えていいことにすると、それもそれで個人の判断が大きく出てしまって客観的な分析からさらに遠ざかってしまいそうなので、固定的な設定は大目に見てください。

 年間平均トップ10占有率は、0.04。ほぼゼロですね。2週間だけ、2023年現在大ヒットしているデヴィッド・ゲッタの "I'm Good ( Blue ) feat. ビービー・レクサ" がTop10入りしましたが、第48週からはクリスマス・ソングの猛攻に負けて11位以下でした。結論として、2022年もEDMは(この指標上は)再興の兆しが見えなかったといえます。😔

 

3.まとめ

 疲れたので、雑に...。まとめこそ、しっかりやるべきではあるのですが...、つい。

 

ポップ・・・Top10シェア維持!&微妙に年々シェア拡大中!

ロック・・・人気ジャンルの基準「1」惜しくも上回れず...。しかし、シェアは伸びていて、2022年は過去6年間で最高!

カントリー・・・Top10レベルの躍進は見られず...。でも、確実に人気は上がってきている!

R&B・・・前年から一気にシェア落胆!近年の急速な勢力拡大に歯止めがかかった...!

ヒップホップ・・・いろんな人がヒットを飛ばしている望ましい状態で、相変わらずシェアNo.1!

EDM・・・再興の兆し未だ見えず...。Top10レベルではもはや衰退の危機!?

 

 以上です。たぶん途中で飽きてしまったと思うのですが、それでもここまで読んでくださった親切な方に、心よりお礼申し上げます。



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