森鴎外と親交のあった福岡県豊前市出身の発明家矢頭(やず)良一(1878~1908)の親族が18日、矢頭が1902年に作った「自働算盤(じどうそろばん)」や鴎外直筆の掛け軸など47点を鴎外が軍医時代に赴任した北九州市に寄贈した。自働算盤は現存する国産機械式計算機では最古という。
自働算盤は鉄製で重さ約20キロ。当時の海外製計算機より優れた性能を持っていたとされ、日本機械学会が機械遺産として認定している。矢頭の妹の孫で、豊前市出身の梅田利行さん(79)=千葉県市原市在住=が2004年に市に寄託し、今回正式に寄贈された。
矢頭は航空機エンジンの開発資金を得るため、計算機の発明に取り組んだ。鴎外の支援を受けて上京し、計算機を量産。
1台250円という価格は現在に換算すると600万円を超える高額だったが、陸軍省や内務省などに約200台が売れた。現存しているのはこの1台だけで、時価約1億円という。
梅田さんは「小さい頃はおもちゃ代わりにして遊んで祖母にしかられた。鴎外が暮らした北九州市で後世に残してほしい」と話していた。