キングコング対ゴジラ東宝このアイテムの詳細を見る |
東宝三十周年記念映画。
と言う訳で、アメリカより『キング・コング』映画化権を買い付け、日本の怪獣王と激突させるという、何とも豪快な企画。
ゴジラ映画としては、1955年の『ゴジラの逆襲』以来の公開となる。プロデューサー・田中友幸、監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二というトリオは、その間、『ラドン』『モスラ』や、怪獣の出て来ない宇宙もの等も製作し、また終末戦争を扱った『世界大戦争』という大作もあった。(上記トリオに音楽・伊福部昭を加えた「クインテット」と呼んでもいいが、氏の関わっていない作品も存在するので。)
なお、この映画については長年、全長版オリジナルフィルムは紛失したとされ、LDなどは短縮版フィルムをテレビ放映時の映像で補ったつぎはぎ版だったが、後に全長版が発見され、それで発売の運びとなったのがこのDVDである。
日本が「戦後」から脱し、高度経済成長を実現しつつあった時代を象徴するかのような映画。
もう「アメリカ」とだって戦えるという勢いが感じられるし、劇中でキング・コングが日本に連れて来られるのは、何事も利益優先に考える企業が、提供番組の視聴率アップを求めた為である。
世紀の大激突は場所を変えて3回行われるが、そこにはもはや1933年の観客がキング・コングに感じたプリミティブな恐怖も、1954年の観客がゴジラの上に見た、都市を破壊し、愛する人たちの命を不条理に奪う「戦争」の影も、全く見出すことはできない。
その分、肩の凝らない娯楽大作として楽しめるし、実際大ヒットもした。ゴジラ映画としてだけではなく、日本映画としての年間観客動員記録も、確か現在に到るまで破られていないのではないか?
一方でこの映画はまた、後に「怪獣プロレス」と揶揄されることになる「対決物」の基礎をなす作品ともなった。『ゴジラの逆襲』での対アンギラス戦は、まだ「生物同士の闘争」を感じさせたが、この映画によって、怪獣は「モンスター」でも「生物」でもなく「キャラクター」に変貌したと思う。
というところでそのキャラクターに触れると、ゴジラは下半身がどっしりした横顔美男でなかなかいいが、キング・コングははっきり言ってブサイク。「彼」のハンサム度は、やはりPJ版が一番だと思う。
人間側の主役は、高島忠夫&藤木悠のテレビ局職員。髑髏島ならぬファロ島にコングを求めての珍道中は、ベタとは言えなかなか楽しい。
しかし、この映画のキャラクターと言えば、有島一郎扮するパシフィック製薬(ライバル会社が「セントラル製薬」というのがまた…)の多湖(たこ)宣伝部長に尽きる!
一人で場をさらって行く強烈なキャラクターなのに、またやっていることはデナムや『モスラ』のネルソンと大差ないにも関わらず、悪役には全く見えず、品格さえ感じさせるのは、有島氏の人徳あってのものだろうか。この人を見ているだけで何となく幸せな気持ちにさえなって来るのだから不思議である。
そしてまた、知っている人にとっては何を今さらという話だが、この映画には、浜美枝に若林映子という、日本のボンドガール(『007は二度死ぬ』)が二人揃って出ているということにも、最後に触れておこう。