次の日、
退職届を出した。
民法では、
退職する14日前までに
意思表示をすればよいとされているが
通常は1ヶ月前までとされていたので、
1ヶ月後に、退職する意向で届けでた。
こんな若造経営者のために、
これ以上、オレの時間を奪われたくはなかったし、
大きな、取り返しのつかない事故の現場に、
立ち会いたくもなかった。
無責任かもしれないが、
これが、オレの精一杯のこと、だった。
その後に、
ハローワークで、この会社の求人を見つけた時には、
窓口に、会社の事情は説明したし、
ハローワークの窓口の応えは、
求人を、控えるか、
求人欄の備考に、その旨を記載する、と言う、
頼りないものだった。
しかし、確かに、
会社環境が改善されていれば問題ないから。
以前、お世話になった、
ひとりで、参加できる、組合にも、相談したが、
すみやかに、距離をおくことが、
いちばん、だと、アドバイスされた。
それでも、
残された1ヶ月間は、毎日がつらかった。
14日間で、届けでればよかった、と後悔もした。
律儀にしないで、民法なんて無視して
すぐにでも辞めればよかった。
そもそも、違法な環境なんだから。
そんな中でも、
まったく商品知識や、やり方の分からないオレに、
イチから教えてくれた先輩たちもいた。
カタチだけの所長を含めて、
8人で、大きな倉庫の冷蔵庫の中で、作業をしていた。
彼らに、お礼と感謝のしるしとして、
休憩をちゃんと取り、
寒い冷蔵庫の作業の暖を取るようにと、
電気ポットと、紅茶、ココア、コーヒー、と、
砂糖、ミルク、紙カップに、マドラーを、
プレゼントした。
しかし、
その感謝のオレの気持ちを、踏みにじるように、
本部長は、オレに、ひと言の断りもなく、
とっと、と、一切合切を本社に持ち帰って、
自分たちで、使用してると、聞いた。
本社、といっても、
事務員3人、本部長を含む営業3人、
ついでに、社長がいる、
小さな事務所に。
納得いかないオレは、直属の上司に、連絡をして、
どういうつもりか問いただした。
回答は、間借りしている作業倉庫で、
ポットとか余計な電気代は使えない、だと。
深夜の煌々(こうこう)と照らす電灯と
商品の出し入れのたびの扉の開閉、その維持の冷蔵代。
ポットは、作業に関わらないから
許せないということだ。
スリランカ人のバイトの1人が、
国から妻と子どもを呼んだと聞いたので、
彼のアパートに、
電気ポットと、未開封のものすべてを、
送るようにお願いをした。
お前らの為に、自腹で、買ったんじゃねぇよ。
どこまでも、馬鹿にすれば、気がすむのか。
馬鹿を、馬鹿にしても、馬鹿馬鹿しい、だけだと、
そんなことも、わからねぇのかよぉ、
という思いだった。
どうなんだろう、わかんないから、
どうせ、社長も本部長も、送んなくていいよ、で、
終わってしまった気がする。
その上司は、
本部長が、電気代を理由に持って来ちゃったから、
しょうがないと、
オレに、言い訳をしてたから。
誠実さや、良心という、
コトバは、理解できないだろうし、
なんせ、社長や、本部長には、従順なポチだから、ね。
人の気持ちを、大切にしない、我利我利亡者、
そんな会社が、繁栄するわけは、ないと思うんだが。
ブラックな会社、いや、違法会社が、はびこり、
そこで、泣く労働者たちがいて、
国も、会社をなのか、労働者をなのか、
どちらを、大切にしようとしてるのか、
馬鹿なオレには、理解に、苦しむ。
辞めた翌日、
生活が昼夜逆転だったので寝てるオレの携帯へ、
そう、真っ昼間に、社長からの着信があった。
留守電にメッセージが何も無かったので、
スルーしていた。
そしたら、社長からのメールが来た。
「お疲れさま、ありがとう」と。
気味が悪い。裏を勘繰らざるをえない。
週刊誌とか、ネットで、
リークされるのを、怖れたんだろう、か。
そんな程度の、鼻っ柱だけの、
偽装建築の、若年経営者、だったのか。
素直に感謝の言葉として受け入れないほど、
馬鹿なオレは、捻(ねじ)れてしまったのか、
捻れすぎて真っ直ぐになっているのか。
オレが、辞めてから、
臨時所長は、今回の事故の責任を取らされ、
クビとなった。
もうひとつあった都近郊の会社の別の作業所から、
本来の、60近い、ベテランの所長が戻り、
一緒に、そこから、
所長のアシスタントが、ひとり、補充され、
休憩も10分だけだが、取れるようになったそうだ。
ピッキングの社員の2便は、
本社の営業が手伝える時は、手伝う事になったが、
ピッキング現場の彼らのサービス残業は続き、
給料からの、ぶつけて壊した修理代の天引きは、
継続されているという。
馬鹿なオレの、経営者と本部長に、
送ったメールと、退社が、
効力があったのか、どうかは、定かではないけれども、
大きな事故は、少しは、回避でき、
会社の、事故後の対応は、ちょっと遅かったけれども、
物語としては、
対面を保つことが出来たんじゃないだろうか。
犠牲者は、臨時所長の彼か、と思っていたが、
彼は、下請けの加工業者で、雇われて、
満足して、そこに、再就職をし、
自分は意識していないが、
本部長の監視下に、常に置かれているそうだ。
なんとも暢気(のんき)な話だ。
ウンザリだが、ウンザリは、くりかえす。
ホントは、
オレって柄じゃないんだけどね。
そして、
違法な労働はつづく、
しかし、リヤカーの八百屋も、この違法会社も、
テレビに取材され誇らしげに経営者が出演して、
放送されている。
表面的な面白さだけで、内情を取材しないで
いや、知ってか知らずか、
放送するマスコミには、内情を知る社員からは、
苦笑させられる、だけだ。
お前らマスコミも共犯なんだぞと。
ジャニーズ帝国のタレント、
ビックモーターのCM、などを観れば、
実情がわからないまま放送していた。
いや、知ってか知らずか
マスコミ、広告代理店がいるのはわかるでしょう。
広告代理店においては、
自ら、経営者が
犯罪に手を染めて逮捕者
が出ている。
馬鹿なオレも手を汚し、
部下に指示していたことも、パワハラ上司だった訳だ。
こんなことの、繰り返し。
お粗末。
黒い暗幕が、降りてきて、終幕。
初出 17/10/04 04:32 再掲載 一部改訂
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