Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
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2021年6月号 難民キャンプ閉鎖声明で難民への攻撃が激化 / KANEREニュースデスク

2021年08月07日 | 最新ニュース
【写真】ケニア政府による難民キャンプ閉鎖声明で脅威が高まり、カクマで襲撃被害者が出た。撮影:KANERE

カクマでは難民と地元住民間の確執が長年問題となっている。しかし、ケニアの難民キャンプを閉鎖するという政府の声明が出て以降、難民への攻撃が激化しているようだ。カクマの難民を受け入れている地元住人らによる攻撃で、少なくとも4名の難民に命に別状のない負傷が確認されている。


事件が起きたのは5月25日の現地時間午前8時。カクマ1ゾーン1ブロック12のタラチ川沿いで農作業をしていた難民らが、武装した複数のケニア人に襲撃された。そのため、難民たちはイバラの茂みを通ってキャンプに戻るしかなかった。

KANEREの取材によると、政府がケニア国内のカクマとダダーブの難民キャンプを閉鎖すると決定したことで、襲撃が誘発されたという。

取材に応じた女性カマは、鉈によって負傷していた。襲撃時に暴行を素手で阻止しようとして怪我をしたのだという。「私が畑で朝の水撒きをしていたとき、自転車を盗まれている男の子を見たんです。男の子は、水道のポンプを使っているお兄さんのところまで走っていきました。お兄さんは盗まれた自転車を取り戻そうと走りましたが、棍棒や鉈を持った襲撃者らに追い返されました。大勢が襲撃していました」とカマは証言している。

「農作業をしていた難民たちは皆コミュニティーへ逃げ戻り、すべてのゲートを施錠しました。でも私だけは取り残されてしまったんです。暴徒たちが私を見つけ、鉈と棍棒を持った一人が農場のゲートを壊して入ってきました。鉈を振り回し、私の手を掴みました。襲撃者たちに携帯を出せと言われましたが、持っていなかったので、暴行を加えられ出血しましたが。私は出血したことにも手を振証したことにも気付きませんでした。でも、中のひとりが温情をかけてくれたんです。私が女性で出血もしていたため、仲間に解放を促したのです。それで助かりました。神の御業がなければ、私は死んでいたでしょう」と、カマは恐ろしい瞬間を思い出していた。

マシとドニも一連の襲撃の被害者だ。トゥルカナの暴徒が襲撃してきたとき、この夫婦は自分たちの畑にいた。

「私たちは畑にいましたが、何が起きたのか目撃することも音を聞くこともありませんでした。私たちは他の難民たちが農作業している場所とは離れたところで作業をしていましたから。コミュニティーへのゲートのところで、ひとりの女性が逃げながら、私たちに危ないと叫んでくれました。コミュニティーへの道は興奮状態のトゥルカナの襲撃者たちでいっぱいでした。それで私は水無川に身を投げて逃げました。襲撃者の1人が私を追いかけ、他の人たちが夫を追いかけました。でも、夫の走るペースが私よりも速かったんですよ」マシがKANEREに説明してくれた。

「焦った私は穴に落ち、夫も私を助けられずに行ってしまいました。そのとき私は、あきらめて死ぬのではなく、とことん頑張ってから死のうと思いました。懸命に穴の中から脱出したとき、襲撃者はかなり近くまで迫っていました。私は走り続けて川岸に登りました。でも襲撃者はすぐ近くまで来ていて、暴言を吐きました。政府がキャンプを閉鎖することについて叫んでいました」

マシによると、襲撃者は政府のキャンプ閉鎖声明に従って難民たちがカクマキャンプを出ていくのか確認していたようだという。「出ていけ、お前たち難民はここから出ていけ。政府が言ったことを聞いてないのか。お前たちを殺してやるからな」と。

「私が暴行された後逃げた先にはコミュニティーに通ずる入口がなかったため、鉄柵を登って誰かの敷地の中に落ちました。逃げている間に、イバラで服が引き裂かれて裸同然になり、体じゅう傷だらけになりました。命がけで逃げたのです」

マシの夫のドニは、大勢の武装した暴徒たちに追いかけられた。男だから、女より殺される確率が高かったと、彼は言う。「妻は、暴徒の襲撃から逃げようと、河岸から水無川に飛び込みました。私は妻のあとを追う途中で1人の男にナイフを投げつけられ、『故郷へ帰らないのならお前たちを殺してやる』と怒鳴られました」とKANEREに語った。

「死ぬかと思いました。襲撃者たちは男を殺すだろうと思ったんです。それで、妻を置いて逃げました。妻は助けてと言っていましたが、彼等が殺すのは男だと思いましたから」

さらにドニは、「私たちが向かった先には逃げ場がありませんでした。襲撃者たちに周囲をすべてふさがれていたんです。彼らは、『おまえたちを殺す。政府は難民を故郷へ帰す決断を下したじゃないか』と叫んでいました」と言った。

ロメは、水汲みへ向かう途中、怒り狂った暴徒たちに自転車を奪われた。ロメは毎朝、ボレホールⅡに石油缶を運び、水を汲む。「水を汲もうと兄が働く水道ポンプに向かいました。オカッピのサッカー場に着くと、鉈を持ったトゥルカナの男に出会いました。呼び止められ、自転車から降りろと言われました。それを拒むと、鉈の端で軽くたたかれました。大勢の暴徒も近づいてきたので、自転車から飛び降り、命がけで逃げました。暴徒の1人が棍棒を投げてきて、ぼくの足にもろに当たりました。ぼくは転びましたが、立ち上がって走り続け兄の所に行きました」

「兄はその後、自転車を乗り捨てた場所に行ってみてくれましたが、自転車はありませんでした。暴徒たちは大勢で、怒り狂った男の群という感じでした。彼らは口々に、難民は母国に帰るべきだと言っていまいた。『どうしてぐずぐずしているんだ?』と言われました」

ロメの兄で、目撃者でもあるシャコは、襲撃者たちはケニア人で、トゥルカナ語を話していたと証言している。

ゾーン1のCPPTゾーン管理者であるマゲヌ・アルボは、難民が受け入れ地域の一部の住民から攻撃されたという報告を受けていると話す。彼はその報告を難民局(RAS)の安全部部長、ジョン・エセコンに伝えたという。

KANEREはジョン・エセコンに電話取材しようとしたが、ジョンは電話に出られず、追加の問い合わせはできなかった。

襲撃犯たちは棍棒や鉈、ナイフなどの武器を所持していたと言われている。この襲撃で、14歳の子ども、2人の女性、そして夫婦の計4人の難民が負傷した。キャンプの各地区で数カ月に渡り窃盗など多くの事件が起き、緊迫した状態が続いている。

3月には、ケニアの政府がダダーブとカクマの難民キャンプの閉鎖計画を2週間以内に作成するよう最終通告を出した。内務省のフレッド・マティアング氏は、UNHCRケニア代表のファティアー・アブダラ氏対し、交渉の余地は無いという政府の意向を表明した。

しかし、キャンプを閉鎖するという政府の動きはケニアの高等裁判所により一時的に止められ、ケニア政府とUNHCRが解決策を探る議論を続けている。

ダダーブとカクマのキャンプは、2022年6月30日までに閉鎖されることになっている。

*被害者の特定を防ぐため、記事中の個人名は偽名である。


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