Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2021年6月号 トレーニングを終えた先には:自分を信じる若い難民女性への支援 / トロッサ・アスラト(KANEREボランティアライー)

2021年08月07日 | 人道支援
【写真】ウィニー・アコラは カロベイエイ難民居住区のビレッジ3の住人で、キャンプ当局による生活技能トレーニングを受けている。写真提供:トロッサ・アスラト(KANERE)

カクマとカロベイエイには20万人の難民が生活しているが、その76%が女性と子どもだ。そのうちの49%を占める女性たちは、目をそむけたくなるような悲惨な状況の中で暮らしている。

ウィニー・アコラは24歳。南スーダン出身で、故郷からの脱出を余儀なくされた何千人もの難民のひとりである。現在カロベイエイ難民居住区のビレッジ3に住んでいる。カロベイエイは、カクマ難民キャンプを拡張した居住区で、難民と地元コミュニティーを融合させようという意図のもと、さまざまな国出身の難民4万人以上を住まわせている。カロベイエイの安全性についてウィニー・アコラに聞いてみると、いくつか気になることがあるという。「ここでは、銃声や助けを求める女性の叫び声を聞かない日は一日もありません。私と娘だけで過ごす夜はとても怖いです」

アコラはカロベイエイに来てすぐ、これからの生活がどんなにストレスとトラウマに満ちたものか、およその想像がついた。「風がすごく強く、乾き切っていたのを覚えています。まるで何世紀も雨なんて降ったことがないようでした」

何の支援もチャンスもないなか、アコラは娘と共に不安とストレスにさいなまれていた。新生活を築くには多くの事にチャレンジしなければならず容易なことではなかったと言う。「こんなひどい環境に連れて来られて、夜はいつも泣いていました。心の中では何一つ満足していませんでしたが、強くなるしかありませんでした」と彼女は目に涙をためて話した。

その一方で、アコラは、何としても生き抜いて娘を育てたいと強く願っていた。そしてカロベイエイの女性にとって、貧困と性暴力が一番の問題だと思うと言う。

困窮しているのに収入を得る機会ないことは、すべての難民に共通している。例えば、オックスフォード大学がカクマとカロベイエイで最近行った自立についての調査では、キャンプと居住地に暮らす難民が自立することはないだろうと指摘している。同報告書はカロベイエイに暮らしている難民で自立していると思われる人は非常に少ないと結論づけている。

また女性は、キャンプでの生活環境が原因で、性暴力など困難な場面に晒される可能性が、男性より高いという側面もある。

アコラにとって、カロベイエイで暮らすことは特に難しかった。仕事は見つけられないし、売り物になるような技術も無い。「私はフォーム4を終えましたし、歌うことや、いろいろな人にまつわる話を伝えるのが好きです。それに明瞭な声でスピーチをすることも得意なんです」と彼女は言う。そして、少なくとも自分と娘が食べていけるだけの収入が得られる仕事を探し始めた。

彼女は当時を思い出し次のように話している。「私はシングルマザーとして、自分と娘を養うために何かやろうと決めました。そしてある日ビレッジ1の地元FMに行って、ボランティアの仕事が出来ないか聞いてみました」

幸いにも1か月後、アコラに電話があり、地元FM局でボランティアを始めることができた。しかし、彼女の家はFM局から遠く、3か月しか働くことができなかった。「私のビレッジから局まで45分も歩かなければならず、何も得られずに終わりました。ただ、私の現在の雇用主に出会うことができたのです」FM局でボランティアをしている間に、彼女の雇い主と局のチームとの会議があり、アコラはある議題の問題点について意見を言うチャンスを得た。「私は立ち上がって自分の意見をじょうずに発表しました」と、彼女は現在のチャンスに巡り合った経緯を語ってくれた。

アコラは後日、カクマキャンプの支援組織のひとりからジャーナリズムのトレーニングプログラムを紹介され、9か月後にコンテンツ制作者として雇われた。そのおかげで、難民コミュニティーと深くかかわり、彼等を鼓舞する仕事をすることになった。

アコラは、多くの問題を抱えている若い女性が何の支援も受けられず、また話し相手もいないことが気になっている。「だれも向き合ってくれる人がいなくて自殺をしてしまうケースもあります」とアコラは言う。

アコラによれば、若い女性や若者に役立つようなトレーニングの機会や雇用の支援があればいいのだが、キャンプにはそのような制度がないのだという。

「支援団体は予算を使ってもっとトレーニングや雇用の支援をしていくべきなのに、そういうことを充分にやっているとは言えません」とも言う。

すべての難民も行き場を失った女性や少女たちも、計り知れないトラウマに向き合っているのだから、カロベイエイには、こうしたスキルトレーニングセンターがもっとなければならない。切実な貧困から抜け出す道を与えていくべきだ。

母国を追われた若い女性はたくさんいる。彼女たちが生活技能のトレーニングを受けるのは当然の権利だ。そうすれば、アコラが道を見出したように、彼女たちも力を与えられチャンスを創り出せるのだ。


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