Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2009年5-6月号 食料配給センターに関する私の記録

2009年09月04日 | コミュニティーとカルチャー
2007年9月19日付け、私の食料配給センター記録より

プライバシーを守るため、本記事内では名前をファトゥマと変え、性別も女性とする。ファトゥマにとって、難民であることや亡命中であることの辛さは言うまでもないが、さらにHIV/AIDS犠牲者として日々の生活を送るのは過酷なものである。

難民生活に加えて、キャンプの食料状況が悪いため、ファトゥマはガリガリに痩せていて、いつも次の配給を指折り数えて待っている。 2週間生きのびるだけの配給しか受けられず、与えられたものを節約しながら食いつないでいる。基本的権利があるというのに、最低の生活必需品さえ満たしてもらえない、と彼女は思っている。 HIV患者として受け取る配給量は他の難民と同じだし、患者のための供給日は一日多くあるが、行列で待たなければならないのだから、特別の待遇とは言えない。 

キャンプの配給最終日は、「不満の日」と言われている。 配給を受け取れなかった人のために、特別に2度目の配給日がというのがある。ファトゥマもその中にいた。彼女が持っているのは家族用のカード1枚だけで、受け取れるのは6キロの小麦粉、油、レンズ豆、塩だけだ。 生き残るためには、できることなら、収入があり親切な人にすがってカードを貰いたいが、自分の力で生きていかなければならない。彼女はすっかり痩せこけて、顔色は悪く、唇は不自然なほど赤らみ、かさついている。

配給を貰うために彼女は一時間ずっと待っている。配給カードを握りしめたままだ。さらに一時間、じっと動かず並んでいる。列は少しも動かない。センター掲示板には配給される品物がリストアップされているが、ゲートを通ってそれを受け取った人はいない。最後に、じりじりと待っていた難民が抗議し、やっと配給が始まる。

人の列が配給係の方にゆっくりと動き出すと、配給の開始だ。受け取り地点にたどり着くと、そこでは何かしらもらえない事態が起こる。例えばトウモロコシは半分だけ。油はないし、ウジ(ポリッジ)もここにはない。皆が規則通りに動いているのに。 「全くどうしてこんなことが起こるの。どうして食料品がなくなるの。食物を支給するお偉いさんよ、これで何をくれたっていうの?」 ファトゥマは怒鳴り散らしている。私の配給を見て、「この人の配給も量が少ないし、待っていた品物でない!」 食料配給センターの監督はファトゥマがまるで病人のようなので、驚いている。

その時私は彼女のそばにいたが、品物がなくても彼女ほど動揺しなかった。 でも彼女は一人暮らしだから無理もない。しかもHIV陽性だ。彼女は難民達の言う、「ポスターのところ」や「交換場所」にも行ったが、ここも品切れで、何も貰えなかった。「ちょうど品切れになってしまったから、今日も不満がいっぱいでるな」と、配給デスクのスタッフが言っている。 しかし50㍍離れた近くの倉庫ではまだ配給が終わっていない。そこのトウモロコシ配給場所まで歩いていくと、トウモロコシはなく、配給係が「早く!」と言っている。配給量は、想像していた量の半分しかなかったようだ。結局、彼女が生命をながらえるために苦労して手に入れたのは小麦粉だけだった。

「私の配給は、これっぽっちなの?」と、強いて聞く者はいない。質問することを、皆恐れている。カードにパンチを入れる必要がある。カードに今日のパンチを入れてもらわないと、次の食料配給は受けられない。その場合、このキャンプでは私のような人間が、カードをすっかり削除してしまえるという別のルールがあるが、これは公平な事だろうか。ファトゥマは怒って不平を言ったが、言葉は弱々しかった。カードにパンチを入れてもらわずに、彼女が出口に着いた時、その唇は乾き切っていた。最後の石鹸も品切れで、貰えなかった。どうしてこうなの? また怒鳴りながら誰かと口論しようとしたが、誰も相手にしない。

こうれは配給係には見慣れた光景だ。配給係の中には難民仲間のスタッフもいるが、助けようにも、資格も能力もない。誰もファトゥマを気にかける者はいない。誰にも気づかれずに、彼女は広い世界のこの小さな場所で人間らしく生きようと戦っている。次の配給日まで一日、一日を必死に生き延びようとしている。


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