【写真】 コミュニティーで自宅の前に立つ高齢者
カクマ難民キャンプでは、コミュニティーの支援体制が不十分な場合、高齢者は生き残るために日々ますます大きな問題に直面するようになっている。
カクマ難民キャンプには、経済的、社会的、精神的な福祉の面で高齢者ならではの困難を抱えている難民が何千人もいる。高齢者は難民キャンプで特に弱い立場に置かれているにもかかわらず、カクマでは高齢者に対する支援はほとんどみられない。
一般的な地域社会に比べると、難民キャンプで高齢者が直面する困難は大きい。一般的な地域社会では通常、社会支援体制のなかで高齢者に対するセーフティネットが構築されているからだ。難民キャンプには、こうしたネットワークを可能にするコミュニティー間の結束や援助がない。
キャンプでは、大部分の高齢者はひとりで加齢の問題に直面している。難民は皆、自分が抱えている生活上の問題で精一杯であることが多く、他者のために何かをする元気はほとんど残っていない。このようにセーフティネットが機能していないため、キャンプでは高齢者がますます弱い立場に置かれるようになっている。
世界保健機構では60歳以上を「高齢者」としているが、文化や習慣、宗教によって、国ごとに「高齢者」の定義はさまざまだ。
〈高齢者向けの組織的な支援の欠如〉
難民キャンプでは高齢者が特に弱い立場に置かれているため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や他の実施機関には高齢者特有のニーズに応える責任がある。しかし実際には、カクマ・キャンプでは高齢者に対する組織的な支援の例はほとんどみられない。
ソマリアのバジュン(訳注:海岸地域の地名)の71歳の老女は、「キャンプでの生活は、特に私のような年寄りにはとても大変です」とキャンプでの苦境について語る。
しかし彼女は、キャンプで子供たちと共に生活できることに感謝している。また、子供や孫の顔を見られるだけ恵まれていると言う。「子供たちが私の世話をしてくれます」。
UNHCRのサービスについては、「私がUNHCRから受けるサービスは他の難民と全く同じものです」。彼女は子供たちを見ながら、「子供たちが一緒にいてくれなかったら、私の運命はどうなっていたでしょう。UNHCRが私たち老人のことを考えたり見舞ったりしてくれないのはとても不愉快です」と言う。
〈コミュニティーに欠かせない役割〉
伝統的に、高齢者はコミュニティーの所有者かつ指導者だ。カクマ・キャンプのコミュニティーでも、高齢者はいまだに重要な役割を担っている。
高齢者は、若い世代に対し責任を負っていると考えられている。若者は高齢者に助言を求め、自分の属する社会の文化や習慣について高齢者から指導を受ける。高齢者が持っている十分な知識や経験は、世代から世代へと受け継いでいくことができる。
このため、高齢者は紛争の解決や平和の促進に貢献し、コミュニティーのメンバーに助言することが可能だ。
しかし、高齢者にはこうした独自の強みと同時に、弱い面もある。人間は年を経るとともに弱くなる。家族やコミュニティーからの配慮や支援が少なくなれば、高齢者は自信を失い、相互交流の機会も減りかねない。そうなると、高齢者は孤立し落ち込んでしまうこともある。
病を患っているエチオピア・コミュニティーの58歳の男性は、 「年をとり、しかも病気だったら、人は寄りつかない」と言う。この男性はカクマ・キャンプに16年以上も滞在している。
「病気の痛みよりも、友人からの配慮が少なくなることのほうが苦痛だ」と孤独感を表現する。
〈日常生活や健康面での困難〉
カクマ・キャンプで日々生き残っていくことは簡単なことではない。泥れんが造りのシェルターはメンテナンスが必要だし、それを支える木製の柱はシロアリから守らなくてはならない。誰もが定期的に食糧配給や水、薪を受け取り、新鮮な果物や野菜を得るように努め、料理をしなければならない。すべきことは他にもたくさんある。こうした日々の作業を自分でできない高齢者にとっては、これは非常に大きな課題だ。
難民たちによれば、さまざまなNGOを通じてUNHCRから届く支援は、コミュニティーの大部分の高齢者や弱者にとっては十分ではない。
多くの高齢者が、今よりも自立するための機会があれば嬉しいと答えているが、そのような機会はほとんどない。職を得るにしても、高齢者は若者と競争することはできない。また、多くのNGOの仕事に必要とされるような職務についても、身体的要件を満たせなかったり、キャンプ周辺での作業を行えなかったりすることが多い。
コミュニティーの組織、Hope for the Vulnerable Voluntary Services (HVVS)の理事、ネガシュ・メンギストゥ氏は、キャンプで困難に直面する多くの高齢者を見てきた。メンギストゥ氏は、高齢者が自分の問題を解決できない場合、支援を試みる。
メンギストゥ氏によれば、キャンプでは高齢者に対する「支援のネットワークがない。働くことはできなくても、高齢者には可能性がある。しかし、人には構ってもらえず、能力を発揮するよう勧められることもなかった。実際に、多くの高齢者は、平和や紛争解決などの能力を発揮してコミュニティーで働くことができる」。
高齢者が必要としているのは身体的・物質的な支援だけではない。精神的に健康な状態を維持するため、交友関係や人間関係上の支援も必要としている。カクマに住む高齢者の多くは、15年以上も難民キャンプに滞在している。過去の迫害と逃亡の経験が難民キャンプでの苦境とあいまって、精神的なトラウマや苦痛に苦しむ高齢者もいる。
家族を残して自国を脱出してきた高齢者のなかには、キャンプで一人きりで暮らす者もいる。もはや家族と連絡もとっていないが、明けても暮れても大切な人のことを考えている。こうした悲しい思いをすることが、高齢者の抱える精神的な問題の最大の原因となっている。コミュニティーのメンバーに無視されてしまうと、高齢者は寂しさを感じ落ち込んでしまうこともある。
しかし、イエズス会難民サービス(JRS)にカウンセラーとして勤務する、訓練を受けた心理学者のアベベ・フェイサ氏は、心理的苦悩に悩まされている人の割合が高齢者に偏っているわけではないと語る。フェイサ氏が行った、難民の心の健全状態に関する2つの研究調査によれば、若い男性は高齢の男性よりも多くの精神的問題を抱えている。これは若者は人生で最も生産的なときを過ごしているというのに、キャンプで絶望感に打ちひしがれ将来の夢を奪われているからかもしれない。フェイサ氏は、一般的に女性のほうが男性よりもうまく問題に対処できていると述べている。
〈コミュニティーの支援ネットワークの強化〉
コミュニティーの支援ネットワークは、高齢者のニーズに応える自然な方法だ。難民キャンプでは、高齢者が近隣者から継続した支援を得られるように、コミュニティーの家族の能力を高めることが急務となっている。
HVVSのメンギストゥ氏は、高齢者は難民キャンプになくてはならない存在であり、UNHCRや他の人道支援組織もそう認識するべきだと考えている。メンギストゥ氏は、「この問題に関しては、UNHCRはまず、キャンプの高齢者全員について明確に把握しなければならない」と言う。その後、「問題解決に向け適切な計画をたてる」ための多部門にわたる立案プロセスで、高齢者のことも考慮する必要がある。
カクマ難民キャンプでは、コミュニティーの支援体制が不十分な場合、高齢者は生き残るために日々ますます大きな問題に直面するようになっている。
カクマ難民キャンプには、経済的、社会的、精神的な福祉の面で高齢者ならではの困難を抱えている難民が何千人もいる。高齢者は難民キャンプで特に弱い立場に置かれているにもかかわらず、カクマでは高齢者に対する支援はほとんどみられない。
一般的な地域社会に比べると、難民キャンプで高齢者が直面する困難は大きい。一般的な地域社会では通常、社会支援体制のなかで高齢者に対するセーフティネットが構築されているからだ。難民キャンプには、こうしたネットワークを可能にするコミュニティー間の結束や援助がない。
キャンプでは、大部分の高齢者はひとりで加齢の問題に直面している。難民は皆、自分が抱えている生活上の問題で精一杯であることが多く、他者のために何かをする元気はほとんど残っていない。このようにセーフティネットが機能していないため、キャンプでは高齢者がますます弱い立場に置かれるようになっている。
世界保健機構では60歳以上を「高齢者」としているが、文化や習慣、宗教によって、国ごとに「高齢者」の定義はさまざまだ。
〈高齢者向けの組織的な支援の欠如〉
難民キャンプでは高齢者が特に弱い立場に置かれているため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や他の実施機関には高齢者特有のニーズに応える責任がある。しかし実際には、カクマ・キャンプでは高齢者に対する組織的な支援の例はほとんどみられない。
ソマリアのバジュン(訳注:海岸地域の地名)の71歳の老女は、「キャンプでの生活は、特に私のような年寄りにはとても大変です」とキャンプでの苦境について語る。
しかし彼女は、キャンプで子供たちと共に生活できることに感謝している。また、子供や孫の顔を見られるだけ恵まれていると言う。「子供たちが私の世話をしてくれます」。
UNHCRのサービスについては、「私がUNHCRから受けるサービスは他の難民と全く同じものです」。彼女は子供たちを見ながら、「子供たちが一緒にいてくれなかったら、私の運命はどうなっていたでしょう。UNHCRが私たち老人のことを考えたり見舞ったりしてくれないのはとても不愉快です」と言う。
〈コミュニティーに欠かせない役割〉
伝統的に、高齢者はコミュニティーの所有者かつ指導者だ。カクマ・キャンプのコミュニティーでも、高齢者はいまだに重要な役割を担っている。
高齢者は、若い世代に対し責任を負っていると考えられている。若者は高齢者に助言を求め、自分の属する社会の文化や習慣について高齢者から指導を受ける。高齢者が持っている十分な知識や経験は、世代から世代へと受け継いでいくことができる。
このため、高齢者は紛争の解決や平和の促進に貢献し、コミュニティーのメンバーに助言することが可能だ。
しかし、高齢者にはこうした独自の強みと同時に、弱い面もある。人間は年を経るとともに弱くなる。家族やコミュニティーからの配慮や支援が少なくなれば、高齢者は自信を失い、相互交流の機会も減りかねない。そうなると、高齢者は孤立し落ち込んでしまうこともある。
病を患っているエチオピア・コミュニティーの58歳の男性は、 「年をとり、しかも病気だったら、人は寄りつかない」と言う。この男性はカクマ・キャンプに16年以上も滞在している。
「病気の痛みよりも、友人からの配慮が少なくなることのほうが苦痛だ」と孤独感を表現する。
〈日常生活や健康面での困難〉
カクマ・キャンプで日々生き残っていくことは簡単なことではない。泥れんが造りのシェルターはメンテナンスが必要だし、それを支える木製の柱はシロアリから守らなくてはならない。誰もが定期的に食糧配給や水、薪を受け取り、新鮮な果物や野菜を得るように努め、料理をしなければならない。すべきことは他にもたくさんある。こうした日々の作業を自分でできない高齢者にとっては、これは非常に大きな課題だ。
難民たちによれば、さまざまなNGOを通じてUNHCRから届く支援は、コミュニティーの大部分の高齢者や弱者にとっては十分ではない。
多くの高齢者が、今よりも自立するための機会があれば嬉しいと答えているが、そのような機会はほとんどない。職を得るにしても、高齢者は若者と競争することはできない。また、多くのNGOの仕事に必要とされるような職務についても、身体的要件を満たせなかったり、キャンプ周辺での作業を行えなかったりすることが多い。
コミュニティーの組織、Hope for the Vulnerable Voluntary Services (HVVS)の理事、ネガシュ・メンギストゥ氏は、キャンプで困難に直面する多くの高齢者を見てきた。メンギストゥ氏は、高齢者が自分の問題を解決できない場合、支援を試みる。
メンギストゥ氏によれば、キャンプでは高齢者に対する「支援のネットワークがない。働くことはできなくても、高齢者には可能性がある。しかし、人には構ってもらえず、能力を発揮するよう勧められることもなかった。実際に、多くの高齢者は、平和や紛争解決などの能力を発揮してコミュニティーで働くことができる」。
高齢者が必要としているのは身体的・物質的な支援だけではない。精神的に健康な状態を維持するため、交友関係や人間関係上の支援も必要としている。カクマに住む高齢者の多くは、15年以上も難民キャンプに滞在している。過去の迫害と逃亡の経験が難民キャンプでの苦境とあいまって、精神的なトラウマや苦痛に苦しむ高齢者もいる。
家族を残して自国を脱出してきた高齢者のなかには、キャンプで一人きりで暮らす者もいる。もはや家族と連絡もとっていないが、明けても暮れても大切な人のことを考えている。こうした悲しい思いをすることが、高齢者の抱える精神的な問題の最大の原因となっている。コミュニティーのメンバーに無視されてしまうと、高齢者は寂しさを感じ落ち込んでしまうこともある。
しかし、イエズス会難民サービス(JRS)にカウンセラーとして勤務する、訓練を受けた心理学者のアベベ・フェイサ氏は、心理的苦悩に悩まされている人の割合が高齢者に偏っているわけではないと語る。フェイサ氏が行った、難民の心の健全状態に関する2つの研究調査によれば、若い男性は高齢の男性よりも多くの精神的問題を抱えている。これは若者は人生で最も生産的なときを過ごしているというのに、キャンプで絶望感に打ちひしがれ将来の夢を奪われているからかもしれない。フェイサ氏は、一般的に女性のほうが男性よりもうまく問題に対処できていると述べている。
〈コミュニティーの支援ネットワークの強化〉
コミュニティーの支援ネットワークは、高齢者のニーズに応える自然な方法だ。難民キャンプでは、高齢者が近隣者から継続した支援を得られるように、コミュニティーの家族の能力を高めることが急務となっている。
HVVSのメンギストゥ氏は、高齢者は難民キャンプになくてはならない存在であり、UNHCRや他の人道支援組織もそう認識するべきだと考えている。メンギストゥ氏は、「この問題に関しては、UNHCRはまず、キャンプの高齢者全員について明確に把握しなければならない」と言う。その後、「問題解決に向け適切な計画をたてる」ための多部門にわたる立案プロセスで、高齢者のことも考慮する必要がある。
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